「いやー、すまないね!まさか間違えて、あんまりこの世界のことを知らない人を引き抜いてきてしまうとは。近頃老眼やばいからなぁ、そろそろ私も後継者を探すべきか…。」
神と名乗る人物が、目の前で自分自身の老いを嘆きながら謝っている。
こいつの話によると私は「『悪役令嬢』の☆転生復讐ふぇすてぃばる!」という馬鹿げたタイトルのマンガの世界に転生することになったらしい。何度も濡れ衣を着せられ悪女と呼ばれていた令嬢が、処刑されて気づいたら時を遡っており、裏切り者達や黒幕のヒロインに復讐をしていくという物語である。まあまあ多い設定内容だ。
しかし、大きな問題がある。それは、私はこの作品をちゃんと履修していないということ…!!前の世界にいた時はあまりマンガやゲーム、アニメなどに割く時間がなく、この作品に関してはだいたいのあらすじと主要キャラの顔しか分からないのである(かなりぼんやりだし、名前までは知らないけど)。しょっちゅうSNSに作品についての書き込みや広告が流れてくるからそれだけでも知れて良かった…。
「あの、私はどうすればいいんですか?まさかこのまま私を放り出して天界に帰るんじゃありませんよね?」
「それはしない。ただし元の世界に戻してやることはできん。それは絶対的なルールじゃからの。フォッフォッフォッ」
は???笑いながら言うことじゃねえだろ。
そんな怒りを私の雰囲気から感じとったのか、神は慌てて笑うのをやめた。
「魂を無理やり他の次元に飛ばすのは1回しかダメなんじゃ…!2回もやったら魂は砕けて消滅してしまう可能性が極めて高い。だから往復はできない。ただでさえ1回分の負荷に耐えられる魂を探せたことだけでも貴重なんじゃよ。」
「でも人を間違えたんですよね?どう責任とっていただけるんですか?」
「コホン、お詫びに、な、な、なんと!!!『エリート悪女軍団によるフラグ対策講座・集中コース』をタダで受けさせてあげよう!!!」
ババーン!!!って感じで何やら派手なパンフレットを取り出した。
「あの馬鹿にしてます??まじで誠意感じられないんですけど。」
「いやっ、あの、これはワシより全然位の高い上司の神様からの命令で、言えって言われてるんで…。すみません…。」
めちゃくちゃ涙目だ。天国も大変なんだな……。
それから神から説明をいろいろと受けた。
簡単にまとめると、
[・神から原作についてのネタバレや大きなヒントを出すことは固く禁じられている。試験前に本番の問題を教えられないのと同じ。]
[・そのため、悪女のエキスパート達が教師としてあらゆる場面の対応方法や、とっておきの復讐の仕方を週3回夢の中で教えてくれる。]
[・転生するのは物語開始から1年半前の夏。物語は令嬢の悪行(全て濡れ衣だが)が裏切り者達とヒロインによって公の場で暴かれるところから始まる。]
という感じだ。
「…だいたい分かったんですけd」
「理解してくれたのなら何より!!小さいヒントはそれとなく示せるかもしれんから注意深く生活してくれい!ではまた今度じゃ〜!」
一面真っ白だった視界が光の粒になって消えてしまい、いつの間にか何やらものすごい豪華な部屋の椅子に腰掛けていた。
(あいつ…全然話聞いてくれなかった。質問言いかけてたのに。)
神は神でも、無駄に年をとっている失礼なやつもいるんだな。
「……そもそも、なんで別の次元からわざわざ魂持ってきて転生させるんだろ…。」
そんなことを考えながら部屋の中をウロウロしていたら、ふと大きな鏡に目が止まる。
美しい銀髪、吸い込まれるような碧眼、長い手足、ものすごく整った顔。鏡の中にいる18歳の女性に見惚れていると、コンコンとノックの音がした。
「イザベラお嬢様、お目覚めでしたか。そろそろ朝食のお時間です。」
一瞬思考が止まって、ああそうだったと思い出す。
(名前はイザベラ・フィルナーレだったよね。ちゃんと慣れないとなぁ…。絶対今後大変だし。でも26歳の多忙OLから18歳の美女になれたのはちょっと嬉しいかも。)
ちょっとウキウキしながら、大きい衣装部屋から落ち着いた色味のドレスを選んで着替え始める。
「お嬢様?!それは喪に服す時に着ていたものですよね?!そんなものは置いてください。」
いやだって、他のめっちゃ派手なんだよな…。見た目は18歳になってても、心は陰キャの26歳だ。派手なものに挑戦するにはどうしても少し勇気がいる。
結局メイドに服を着替えさせられて朝食を食べに向かう。対策講座は今日の夜から。それまでは手探りで最低限の情報を元に何とかするしかない。高いヒールのせいか、不安のせいか、はたまた両方のせいで少しヨタヨタしながら廊下を歩く。
(こうなったら1年半徹底的に対策して、物語開始5分で復讐完了してみせる!!)
そんな決意をして自分を無理やり奮い立たせた。
いくら回帰するといえども、処刑されるのなんてまっぴらごめんですからね。
神と名乗る人物が、目の前で自分自身の老いを嘆きながら謝っている。
こいつの話によると私は「『悪役令嬢』の☆転生復讐ふぇすてぃばる!」という馬鹿げたタイトルのマンガの世界に転生することになったらしい。何度も濡れ衣を着せられ悪女と呼ばれていた令嬢が、処刑されて気づいたら時を遡っており、裏切り者達や黒幕のヒロインに復讐をしていくという物語である。まあまあ多い設定内容だ。
しかし、大きな問題がある。それは、私はこの作品をちゃんと履修していないということ…!!前の世界にいた時はあまりマンガやゲーム、アニメなどに割く時間がなく、この作品に関してはだいたいのあらすじと主要キャラの顔しか分からないのである(かなりぼんやりだし、名前までは知らないけど)。しょっちゅうSNSに作品についての書き込みや広告が流れてくるからそれだけでも知れて良かった…。
「あの、私はどうすればいいんですか?まさかこのまま私を放り出して天界に帰るんじゃありませんよね?」
「それはしない。ただし元の世界に戻してやることはできん。それは絶対的なルールじゃからの。フォッフォッフォッ」
は???笑いながら言うことじゃねえだろ。
そんな怒りを私の雰囲気から感じとったのか、神は慌てて笑うのをやめた。
「魂を無理やり他の次元に飛ばすのは1回しかダメなんじゃ…!2回もやったら魂は砕けて消滅してしまう可能性が極めて高い。だから往復はできない。ただでさえ1回分の負荷に耐えられる魂を探せたことだけでも貴重なんじゃよ。」
「でも人を間違えたんですよね?どう責任とっていただけるんですか?」
「コホン、お詫びに、な、な、なんと!!!『エリート悪女軍団によるフラグ対策講座・集中コース』をタダで受けさせてあげよう!!!」
ババーン!!!って感じで何やら派手なパンフレットを取り出した。
「あの馬鹿にしてます??まじで誠意感じられないんですけど。」
「いやっ、あの、これはワシより全然位の高い上司の神様からの命令で、言えって言われてるんで…。すみません…。」
めちゃくちゃ涙目だ。天国も大変なんだな……。
それから神から説明をいろいろと受けた。
簡単にまとめると、
[・神から原作についてのネタバレや大きなヒントを出すことは固く禁じられている。試験前に本番の問題を教えられないのと同じ。]
[・そのため、悪女のエキスパート達が教師としてあらゆる場面の対応方法や、とっておきの復讐の仕方を週3回夢の中で教えてくれる。]
[・転生するのは物語開始から1年半前の夏。物語は令嬢の悪行(全て濡れ衣だが)が裏切り者達とヒロインによって公の場で暴かれるところから始まる。]
という感じだ。
「…だいたい分かったんですけd」
「理解してくれたのなら何より!!小さいヒントはそれとなく示せるかもしれんから注意深く生活してくれい!ではまた今度じゃ〜!」
一面真っ白だった視界が光の粒になって消えてしまい、いつの間にか何やらものすごい豪華な部屋の椅子に腰掛けていた。
(あいつ…全然話聞いてくれなかった。質問言いかけてたのに。)
神は神でも、無駄に年をとっている失礼なやつもいるんだな。
「……そもそも、なんで別の次元からわざわざ魂持ってきて転生させるんだろ…。」
そんなことを考えながら部屋の中をウロウロしていたら、ふと大きな鏡に目が止まる。
美しい銀髪、吸い込まれるような碧眼、長い手足、ものすごく整った顔。鏡の中にいる18歳の女性に見惚れていると、コンコンとノックの音がした。
「イザベラお嬢様、お目覚めでしたか。そろそろ朝食のお時間です。」
一瞬思考が止まって、ああそうだったと思い出す。
(名前はイザベラ・フィルナーレだったよね。ちゃんと慣れないとなぁ…。絶対今後大変だし。でも26歳の多忙OLから18歳の美女になれたのはちょっと嬉しいかも。)
ちょっとウキウキしながら、大きい衣装部屋から落ち着いた色味のドレスを選んで着替え始める。
「お嬢様?!それは喪に服す時に着ていたものですよね?!そんなものは置いてください。」
いやだって、他のめっちゃ派手なんだよな…。見た目は18歳になってても、心は陰キャの26歳だ。派手なものに挑戦するにはどうしても少し勇気がいる。
結局メイドに服を着替えさせられて朝食を食べに向かう。対策講座は今日の夜から。それまでは手探りで最低限の情報を元に何とかするしかない。高いヒールのせいか、不安のせいか、はたまた両方のせいで少しヨタヨタしながら廊下を歩く。
(こうなったら1年半徹底的に対策して、物語開始5分で復讐完了してみせる!!)
そんな決意をして自分を無理やり奮い立たせた。
いくら回帰するといえども、処刑されるのなんてまっぴらごめんですからね。