「さあ、間もなく終点だ。最後の問題といこうか」
犯人は、立ち上がった。
「これが、最後?」
「そうだ」
私の質問に犯人は答えた。
これを乗り越えたら、帰れるの?
「覚悟はいいな。最終問題。奥岡は自殺し、警察も自殺だと判定して、捜査は終わったが、実はこれは自殺ではなく、殺人だった」
犯人は信じられないことを言う。
「何を言ってんの? そんな訳ないよ」
「残念ながら、殺人だ。その犯人はここにいる」
「え?」
私は拓磨先輩と建松くんの顔を見た。
二人とも怯えている。
殺したの? 何で?
「というか、犯人は、拓磨か建松のどちらかだ。さて、ど〜っちだ? 今回は真帆だけが答えろ」
「私だけ?」
「そうだ。殺した奴をお前が当てたら、その殺人者だけを殺して、お前と殺していない奴の二人は解放してやる。ただし」
「ただし、何?」
「お前が殺人者を間違ったら、殺人者だけを解放して、お前ともう一人は殺す」
「そんな」
「シンキングタイムだ。制限時間は終点に着くまで。だいたい、あと3分くらいか」
私たちは3人で顔を見合わせた。
「私、選べないよ」
「悔しいが、選ぶしかない。もう、好きにしてくれ」
拓磨先輩は、静かに語りかける。
「ごめん、僕は生き延びたい。真帆さん、拓磨先輩を選んでよ」
え?
ということは、建松くんは殺人をしていないってこと?
「殺したのはきっと、拓磨先輩だ。だって僕は奥岡先輩のことを知らないもん。真帆さん、一緒にここから出よう」
殺したのは、拓磨先輩?
でも、……。
「おい! いい加減にしろ。オレは殺してなんかいない。第一、殺す動機もない」
拓磨先輩が、建松くんを睨む。
「あれ? 噂で聞いたんですけど、拓磨先輩のお父さんって、昔、奥岡先輩のお父さんが経営する会社の従業員だったけど、首になったそうですね」
「くっ。何で知ってるんだ」
「地域で有名ですよ。そりゃ、奥岡先輩のこと、憎いですよね」
「だからって、オレは奥岡を殺したりしたりしない。あいつは大切な仲間だった。オレは殺していないから、もう、殺したのは建松しかいないじゃないか!」
「だから、僕は知りませんもん、奥岡先輩のこと」
無情にも、電車は終点の藤原岳登山口駅についてしまった。
静かに電車が止まる。
「さあ、答えを出す時間だ。奥岡を殺したのは誰か、指を差せ」
犯人は、私に銃を突きつける。
いよいよ、私たちの運命が決まる。
「せーの!」
犯人に合図で、極限状態の私は、ほぼ無意識に指を差していた。
「ほう、選んだのは、建松か」
犯人が嬉しそうな声を出す。
私は、いつも誠実な部長の、拓磨先輩を信じる。
どんな事情があろうと、この人の近くにいたい。
「どういうことだよ、真帆さん?」
建松は膝から崩れ落ちた。
「ごめん」
すると、ドアが開いた。
「正解だ!」
犯人はそう言うと、私と拓磨先輩を列車から追い出す。
「すぐに遠くへ逃げろ!」
犯人はそういうと、ドアを閉めて建松と一緒に列車内に閉じ込められた。
私たちは全力で走った。駅から遠くへ、死に物狂いで。
「奥岡が憎かった。あいつ、僕の彼女を無理矢理、……許せない。その上、真帆さんまで狙いやがって」
遠くで建松の叫びが聞こえる。
次の瞬間、列車は大きな炎をあげて、爆発した。(了)
犯人は、立ち上がった。
「これが、最後?」
「そうだ」
私の質問に犯人は答えた。
これを乗り越えたら、帰れるの?
「覚悟はいいな。最終問題。奥岡は自殺し、警察も自殺だと判定して、捜査は終わったが、実はこれは自殺ではなく、殺人だった」
犯人は信じられないことを言う。
「何を言ってんの? そんな訳ないよ」
「残念ながら、殺人だ。その犯人はここにいる」
「え?」
私は拓磨先輩と建松くんの顔を見た。
二人とも怯えている。
殺したの? 何で?
「というか、犯人は、拓磨か建松のどちらかだ。さて、ど〜っちだ? 今回は真帆だけが答えろ」
「私だけ?」
「そうだ。殺した奴をお前が当てたら、その殺人者だけを殺して、お前と殺していない奴の二人は解放してやる。ただし」
「ただし、何?」
「お前が殺人者を間違ったら、殺人者だけを解放して、お前ともう一人は殺す」
「そんな」
「シンキングタイムだ。制限時間は終点に着くまで。だいたい、あと3分くらいか」
私たちは3人で顔を見合わせた。
「私、選べないよ」
「悔しいが、選ぶしかない。もう、好きにしてくれ」
拓磨先輩は、静かに語りかける。
「ごめん、僕は生き延びたい。真帆さん、拓磨先輩を選んでよ」
え?
ということは、建松くんは殺人をしていないってこと?
「殺したのはきっと、拓磨先輩だ。だって僕は奥岡先輩のことを知らないもん。真帆さん、一緒にここから出よう」
殺したのは、拓磨先輩?
でも、……。
「おい! いい加減にしろ。オレは殺してなんかいない。第一、殺す動機もない」
拓磨先輩が、建松くんを睨む。
「あれ? 噂で聞いたんですけど、拓磨先輩のお父さんって、昔、奥岡先輩のお父さんが経営する会社の従業員だったけど、首になったそうですね」
「くっ。何で知ってるんだ」
「地域で有名ですよ。そりゃ、奥岡先輩のこと、憎いですよね」
「だからって、オレは奥岡を殺したりしたりしない。あいつは大切な仲間だった。オレは殺していないから、もう、殺したのは建松しかいないじゃないか!」
「だから、僕は知りませんもん、奥岡先輩のこと」
無情にも、電車は終点の藤原岳登山口駅についてしまった。
静かに電車が止まる。
「さあ、答えを出す時間だ。奥岡を殺したのは誰か、指を差せ」
犯人は、私に銃を突きつける。
いよいよ、私たちの運命が決まる。
「せーの!」
犯人に合図で、極限状態の私は、ほぼ無意識に指を差していた。
「ほう、選んだのは、建松か」
犯人が嬉しそうな声を出す。
私は、いつも誠実な部長の、拓磨先輩を信じる。
どんな事情があろうと、この人の近くにいたい。
「どういうことだよ、真帆さん?」
建松は膝から崩れ落ちた。
「ごめん」
すると、ドアが開いた。
「正解だ!」
犯人はそう言うと、私と拓磨先輩を列車から追い出す。
「すぐに遠くへ逃げろ!」
犯人はそういうと、ドアを閉めて建松と一緒に列車内に閉じ込められた。
私たちは全力で走った。駅から遠くへ、死に物狂いで。
「奥岡が憎かった。あいつ、僕の彼女を無理矢理、……許せない。その上、真帆さんまで狙いやがって」
遠くで建松の叫びが聞こえる。
次の瞬間、列車は大きな炎をあげて、爆発した。(了)