1月1日。俺、小島 鳴(こじまなる)は同じクラスで親友……、のリキヤと初詣に行こうとしていた。リキヤの家は俺の家から自転車で30分。リキヤの家で待ち合わせ。
リキヤの家の前に着く。「ついた!!!!!!」ってLIMEを送ったら眠そうな顔のリキヤが出てきてくれた。
「リキヤ~~~~~! あけおめ~~~~~~~! 今年もよろしく~~~~~!」
俺はリキヤに抱きついた。身長差のせいで、抱きついた、というよりしがみつく、みたいになってる。リキヤはもうすぐ190らしい。俺よりも25センチくらい高い。親友、というよりは親戚の子どもに会ったような身長差。
「ああ」
リキヤは眠そうな動きと返事で俺の腰のあたりに手を回す。眠そうだけどちょっと楽しそうなのが分かる。
リキヤ、こと。窪 里樹也(くぼ りきや)。俺の親友で……そして、俺の好きな人。初めて出会った入学式の日から、俺の頭はリキヤのことでいっぱいになってしまっていた。出会った時からリキヤに「アタック」し続けて、「親友」のポジションを手に入れることが出来たのは去年の一番のラッキーかもしれない。そこから先に進みたい気持ちは勿論あるけど、タイミングを伺い中。
二人で神社までの道を歩く。顔もめっちゃイケメンで、人通りの多いところを歩いていればスカウトからも女の子からもひたすらに声を掛けられるくらいのイケメン。「声がデカくてうるさい以外は全部平均値」と言われた俺とはスペックが違う。
「今年もよろしくな! おんなじクラスになれるといいな!」
「ああ」
「初詣の後、ちょっと公園で遊んでかない?」
「寒い」
「じゃあ、俺が家帰ったらゲームやんない! 久しぶりにアイクラやろうぜ!」
「うん」
リキヤはそこまでいっぱい喋るタイプじゃない。会話の中では俺が目いっぱい喋ってリキヤがあいづちみたいな単語で返すことがほとんど。たまに文で返してくれる。それが4月からずっと続いている。ニコイチって感じで、「にぎやかナルとしずかなクボ」という絵本みたいなあだ名をつけられている。俺が喋りすぎて、「俺、しゃべりすぎじゃない? リキヤ喋りたいことある? キツくない?」って訊いたら「楽しいからいい」って言われた。
「手袋」
しゃべっているうちに、リキヤが、突拍子もなくそんな単語を口にした。
「え?」
視線をリキヤの方に向ける。穴でもあいたのか、と思ったけど、リキヤの目線は俺の方に向けられている。
「……あ、そーいや手袋忘れたな」
リキヤに会えるのが嬉しすぎて、そっちに気を取られて、手袋を忘れたことに気がついてなかった。手が冷たくなってるのを今更感じる。戻るにも戻れないから、自分のコートのポケットに手を入れてやり過ごそうと思った瞬間だった。
リキヤに柔らかく手首を掴まれて、片方の手が、リキヤのコートのポケットに突っ込まれた。
「え?」
「カイロ」
ぽかぽかのカイロの感触。「ポケットにカイロが入ってるから使っていいよ」という意味なんだと思う。
手首を掴まれた手が離されて、そのままぎゅ、と手を握られた。手袋越しに。リキヤの大きい手の感触が伝わる。もう、カイロも手袋もいらないくらいに全身が熱くなってる。
……今年の運、結構使ったかもしれない。
リキヤのコートのポケットに片手を入れながらしばらく歩いて、俺達二人は神社に着いた。
「ありがとな。あったかかった」
「……帰りも」
帰りも入れていっていい、っていう意味だと思う。
「ああ、ありがとう」
二人、同じタイミングでお賽銭を入れて、手を合わせる。
(リキヤと同じクラスになれて隣の席になれますように、リキヤと一緒にいっぱい出かけられますように、リキヤのサッカー部が優勝できますように。リキヤが元気で過ごせますように。修学旅行リキヤと同じ班で行けますように。リキヤと両思いになれますように!)
願い事もリキヤだらけ。せめてどれか一つは叶って欲しいな、と思いながら目を開ける。すぐそばで、リキヤが待っていた。とっくにお願いごとをし終えた、という感じだった。
その後、二人でお揃いのお守りを買って、おみくじを引いた。二人とも大吉。恋愛運に関しては「想いは叶う」だった。おみくじ、とか占い、とか、そこまで妄信してるわけじゃないけどちょっと嬉しい。
リキヤのコートのポケットの中、カイロのあたたかさと、手袋越しのリキヤの手の感触を感じながらリキヤの家まで戻っていた。
「……じゃ、俺が言え帰った後にゲームしよっか!」
「ああ」
「あと、明日、一緒に初売りいこうぜ」
「うん」
「やった! 何買おうかな!」
また、二人、楽しい一年が始まる気がする。
「そういえば、リキヤは何お願いしたんだ?」
「内緒」
「え~!」
「言うと叶わない」
「そっか」
リキヤのお願いごと、なんだろうな。叶ってほしいな。
リキヤの家の前に着く。「ついた!!!!!!」ってLIMEを送ったら眠そうな顔のリキヤが出てきてくれた。
「リキヤ~~~~~! あけおめ~~~~~~~! 今年もよろしく~~~~~!」
俺はリキヤに抱きついた。身長差のせいで、抱きついた、というよりしがみつく、みたいになってる。リキヤはもうすぐ190らしい。俺よりも25センチくらい高い。親友、というよりは親戚の子どもに会ったような身長差。
「ああ」
リキヤは眠そうな動きと返事で俺の腰のあたりに手を回す。眠そうだけどちょっと楽しそうなのが分かる。
リキヤ、こと。窪 里樹也(くぼ りきや)。俺の親友で……そして、俺の好きな人。初めて出会った入学式の日から、俺の頭はリキヤのことでいっぱいになってしまっていた。出会った時からリキヤに「アタック」し続けて、「親友」のポジションを手に入れることが出来たのは去年の一番のラッキーかもしれない。そこから先に進みたい気持ちは勿論あるけど、タイミングを伺い中。
二人で神社までの道を歩く。顔もめっちゃイケメンで、人通りの多いところを歩いていればスカウトからも女の子からもひたすらに声を掛けられるくらいのイケメン。「声がデカくてうるさい以外は全部平均値」と言われた俺とはスペックが違う。
「今年もよろしくな! おんなじクラスになれるといいな!」
「ああ」
「初詣の後、ちょっと公園で遊んでかない?」
「寒い」
「じゃあ、俺が家帰ったらゲームやんない! 久しぶりにアイクラやろうぜ!」
「うん」
リキヤはそこまでいっぱい喋るタイプじゃない。会話の中では俺が目いっぱい喋ってリキヤがあいづちみたいな単語で返すことがほとんど。たまに文で返してくれる。それが4月からずっと続いている。ニコイチって感じで、「にぎやかナルとしずかなクボ」という絵本みたいなあだ名をつけられている。俺が喋りすぎて、「俺、しゃべりすぎじゃない? リキヤ喋りたいことある? キツくない?」って訊いたら「楽しいからいい」って言われた。
「手袋」
しゃべっているうちに、リキヤが、突拍子もなくそんな単語を口にした。
「え?」
視線をリキヤの方に向ける。穴でもあいたのか、と思ったけど、リキヤの目線は俺の方に向けられている。
「……あ、そーいや手袋忘れたな」
リキヤに会えるのが嬉しすぎて、そっちに気を取られて、手袋を忘れたことに気がついてなかった。手が冷たくなってるのを今更感じる。戻るにも戻れないから、自分のコートのポケットに手を入れてやり過ごそうと思った瞬間だった。
リキヤに柔らかく手首を掴まれて、片方の手が、リキヤのコートのポケットに突っ込まれた。
「え?」
「カイロ」
ぽかぽかのカイロの感触。「ポケットにカイロが入ってるから使っていいよ」という意味なんだと思う。
手首を掴まれた手が離されて、そのままぎゅ、と手を握られた。手袋越しに。リキヤの大きい手の感触が伝わる。もう、カイロも手袋もいらないくらいに全身が熱くなってる。
……今年の運、結構使ったかもしれない。
リキヤのコートのポケットに片手を入れながらしばらく歩いて、俺達二人は神社に着いた。
「ありがとな。あったかかった」
「……帰りも」
帰りも入れていっていい、っていう意味だと思う。
「ああ、ありがとう」
二人、同じタイミングでお賽銭を入れて、手を合わせる。
(リキヤと同じクラスになれて隣の席になれますように、リキヤと一緒にいっぱい出かけられますように、リキヤのサッカー部が優勝できますように。リキヤが元気で過ごせますように。修学旅行リキヤと同じ班で行けますように。リキヤと両思いになれますように!)
願い事もリキヤだらけ。せめてどれか一つは叶って欲しいな、と思いながら目を開ける。すぐそばで、リキヤが待っていた。とっくにお願いごとをし終えた、という感じだった。
その後、二人でお揃いのお守りを買って、おみくじを引いた。二人とも大吉。恋愛運に関しては「想いは叶う」だった。おみくじ、とか占い、とか、そこまで妄信してるわけじゃないけどちょっと嬉しい。
リキヤのコートのポケットの中、カイロのあたたかさと、手袋越しのリキヤの手の感触を感じながらリキヤの家まで戻っていた。
「……じゃ、俺が言え帰った後にゲームしよっか!」
「ああ」
「あと、明日、一緒に初売りいこうぜ」
「うん」
「やった! 何買おうかな!」
また、二人、楽しい一年が始まる気がする。
「そういえば、リキヤは何お願いしたんだ?」
「内緒」
「え~!」
「言うと叶わない」
「そっか」
リキヤのお願いごと、なんだろうな。叶ってほしいな。