ーーー世の中には、中学受験というものがある。
たくさんの人が高校受験をするのだが、その人たちよりも一段と速い頃に受験をするーーー
ーーーいわゆる'お受験組'が彼らである。
そして、お受験組の中からさらに生き残って、見事入学許可証を手に入れた人間が“成功者”。
ここ、国立シエル学園中等部においても、首都圏全体の中から受験を経て皆入ってくる。
…まぁ、皆、親に溺愛されてお金かけてもらって入ってるだけあって、ワガママ。
これは、そんな学園に入った私が、今余裕のある中で、振り返ってみた回想。
今だからこそ語れることを、愚痴るだけだ。
そこのあなたも、暇つぶしに少し、覗いてみない?
ーーー関東の中でも、小さい町。
緑が多くきれいなそこに、一つの国立の一貫校があった。
私はバスから一歩降り立つと、空気をめいっぱい吸う。
「んーーーーーーーーーーーー!春だー!」
いや、もう5月だから初夏か?自分で自分の言ったことに秒で突っ込みを入れたくなった。
……それにしても、空気がおいしい!
とても首都圏とは思えないほどの空気の澄みようだ。
「…ここじゃ私の喘息、出ようがないんじゃないかな…」
誰に言うともしれず私はつぶやくと、足を踏み出した。
ここは、今日から私が通う学校だ。
小学校・中学校・高等学校の一貫校で、首都圏全体から人が来る国立。
私は中学生なので、ここの中等部に通う。
一応、インターホンを押す前に、基本情報を整理しておこう。
私は神崎 美鈴。13歳、誕生日は7月23日。しし座。
身長は155㎝、体重は言えません。重すぎる。
次は前情報の整理。
ここ、国立シエル学園中等部は、小学校からのエスカレーター入学が2割。
残りは中学受験を経て入ってくる。途中入学は絶対にできない。
……私は親がアレだから…。例外です。一応、学力はそこそこあるしね。
………………………。
「なんか頭おかしくなったかも…」
いやいやいやおかしいでしょ私!基本情報を整理しておこう、って!
一人でしゃべりだして一人で完結させちゃったよ!
やらかしたぁ~~~…
一人でゴンゴン壁に頭を打ち付けていた、その時。
ーーーーーヒュゥッ、ゴツン!
「いじゃい?!」
目の前でひよこと星がフォークダンスを踊り始めた。
「またボール飛んだな、わりわり!取ってくるわ…って、はぁ?!」
あまりの痛さに頭を押さえながらうずくまっている私を見たらしく、誰かが大声を上げたよう。
痛みにかすむ目をうっすら開けると。
「…お前、誰?」
私を睨みつけるようにしながら聞く男の人の影が見える。
ーー'男の'人?
「いやっ…!来ないで…!!」
「はぁ…?」
何を言っているかわからない、と言いたげなその人。
私に向かって、一歩、近づいてきた。
「来ないで…いやぁ…!」
かつての記憶が掘り起こされる。胸が、胸が…!
痛い…!
「…おい、お前ら!ちょっとこーい!」
「なんだよおせーぞヒカル罰として今日飯おごれ…って、えぇえええ?!」
誰か友達を呼んだらしく、違う男子の声がする。
そんな彼も、きれいなテノールが台無しなほどの大声を上げた。
「えと…なんで…そんなっ、近づいて…怖、い…な、んで…?」
声を出すことを忘れた喉から、それでも息を絞り出す。怖い、怖い。
ーーー男子が、怖い。
かたかたと震えているであろう私の肩に、声が降りかかる。
「…こっちを、向けるか?」
「え…?」
少し、顔を上げる。
彼は、先ほどの場所でじっと、私を見ていた。
「誰…?」
幾分落ち着いた私は聞く。
「俺か??俺はホシノヒカル!星に、野原の野に、月光の光で、星野光だ。」
彼はそう答える。
彼を照らすかのように、夏の光はきらきらと、彼に金粉をかけた。
「星野、光…」
私は知ったばかりの彼の名前をつぶやく。
ーーーなぜだろう。
初めて会ったはずなのに。
もうずっと前から、知ってーーーーーーー………
「お、おい?!」
私の視界はそこで急速に白くなっていき、ぷつりと消えた。
「ん……」
柔らかな光を身近に感じ、私は目が覚める。
「おー起きたかー?」
「ほしの……さん…?」
西日を背景にした影からの言葉に、先ほどの男子を思い出す。
「ん、そうだけど。……お前、栄養失調だってさ。ここに運ぶまでの間も、お前軽かったしな」
まー無理もねーか、そう続ける彼の声を聞いて、今自分がどこにいるか分かった。
殺伐とした、柔らかな狂気がその部屋には満ちていた。
「保健室…?」
「あぁ。転校生だなんて知らずに、悪かったなさっきは。まさか俺と同じ2Cの奴だとは思わんかっ…って、おい!」
強い口調の言葉の切れ端が宙に漂う。起き上がりかけていた私の上体は、再びベッドに倒されていた。彼、星野さんが肩を押し倒したからだ。
「お前、馬鹿をするな!今言ったろ、栄養失調だって!こんなガリガリに痩せて……無理のしすぎだ…!」
「うるさい。…へぇ、貴方、代表委員なの。じゃあ、私についてある程度聞いているはずよね?」
冷たさを乗せて、私は彼の目を覗き込む。
うっ と彼は息を呑んで、私の肩から手を離した。
と同時に、私の寝ているベッドに青い稲妻が散る。
「……逃げやしないわよ」
稲妻の一つ一つにそれ相応の“チカラ”があると分かった私は、彼を少し視界に入れて言う。
「……なぜ、俺が代表委員だと分かった……?」
じっ、と私を見ている彼。その視線に少なくとも敵意はない。
分かりやすすぎる反応に思わず嘆息したが、彼の質問に答えてあげようと思えた。
「貴方がここにいるのはなぜか?」
私の声が部屋の中に満ちる。
「…そう考えると、私を運んだ、つまりここまでの移動をさせた、以外に理由があるはず。じゃあ、なぜ?」
問いかけと同時に、私は指を運ぶ。彼の手元へと。
「左手のプリントの束。貴方が、先生の持ってきたプリントを整理してくれただけかもしれない。でもあなたのプリントではない。リュックサックから見えるノートと、扱いがずいぶんと違うからね」
で、とここで息継ぎをした私。木のうろのように乾いた身体に、春とはいえどまだ冷え込む空気が染みた。
「さっき、私の上に覆いかぶさったときに見えた、襟のバッジ。何を意味するのか、すぐは分からないけれど、私の持っているものではないから、一部生徒しかつけていないはず。以上からの総合判断」
次はあなたの番。そういうと彼は、口をゆっくりと開いた。
何を言うか考えているのか、再びゆっくりと閉じる。
開いた。
閉じた、が今度はすぐ開く。
「……知ってることは、そんなに多くはない」
私は、目で続きを促す。
窓の外の木々が、静謐さを破るかのように、強風に身を鳴らした。
彼は、視線を私から右へと向ける。人差し指と中指とで、何かを手繰りながら。
「…転校生が、一人来ると。そいつは、頭は良いが、家庭環境が悪く、本来ならすぐ保護されているはずだ、って。でも…その一人娘は誇り高く、保護など受けるかと、周囲を一蹴している。だから、その子が来たら、あわれむな。武家の出は彼女も私たちも同じなのだから…だけ」
・・・・・・。
「一つ、聞いてもいい?」
ある大きな疑問を持って、私は聞く。
「守秘義務って、先生方、守ってらっしゃる…?」
ぶっちゃけ、そこまで知っているとは思っていなかった。
だって!機密事項まで、今彼に言われたのよ⁈え、はっず!
多分だけど私の顔、今、西日がなければ色が明白なほど、血行が良好!
「あ~、親が、教員で…」
う・か・つ!流石に、生徒の親についてまで調べてないっ!
わなわなと震える私と、気まずそうな彼。
そして、窓の外でうるさいカラス……。
「……しかし、なんだっておめー、ここに来たんだ?」
プチン、プチンと、服のボタンをはずす音が、かすかに部屋にこだまする。
「…っ…多様性を重んじる……この学校なら……ぁっ……目立たずにっ…いられると思ったんだ……!」
「へぇ?……はい、お前の負け!」
その声と同時に、手元のゲーム機に表示される『 貴方は2着です ーYOU LOSEー 』に、私は悲鳴を上げてしまった。
あはははははっ、と笑顔の彼の声がとおる。
「き~~~さ~~~~ま~~~~~~」
「悪く思うなよ!“チカラ”での干渉はそこまでしてないぜ!」
それに、お前だって何かの“チカラ”を使いながらやってただろーが!予知か?そう笑う彼の横顔は、普通の人と同じようなあどけなさを残していた。
ゲーム中に緩めていた袖口のボタンを再び付け直しながら、彼はヒラヒラと左手を振った。
……器用だなぁ……。右手で左袖口のボタン止めながら左手振るか普通?
できるんじゃね?と思ったそこの諸君。やってみるといい。割ときついから。
「ぉ、最終下校時刻が近いぜ!帰るか!」
誰に対してなのか分からないようなことを考えていると、彼が声を上げた。
思わず時計を見ると、もう17時19分。
ほへぇ、と間抜けな声を出してしまったが、私はベッドを立った。
「……そういえば、まだ言ってなかったな」
立ち上がった私の手を引いた彼は、ドアに手をかけて言った。
開かれたドアの向こうにいる、よくわからない光る玉や、肉団子三兄弟のような生物(?)が、一斉にこちらを見る。
「国立シエル学園、この、人と異界の生物が共存する学校へ、ようこそ!」
窓から吹く風が柔らかに、私の頬と制服とを撫でて言った。
たくさんの人が高校受験をするのだが、その人たちよりも一段と速い頃に受験をするーーー
ーーーいわゆる'お受験組'が彼らである。
そして、お受験組の中からさらに生き残って、見事入学許可証を手に入れた人間が“成功者”。
ここ、国立シエル学園中等部においても、首都圏全体の中から受験を経て皆入ってくる。
…まぁ、皆、親に溺愛されてお金かけてもらって入ってるだけあって、ワガママ。
これは、そんな学園に入った私が、今余裕のある中で、振り返ってみた回想。
今だからこそ語れることを、愚痴るだけだ。
そこのあなたも、暇つぶしに少し、覗いてみない?
ーーー関東の中でも、小さい町。
緑が多くきれいなそこに、一つの国立の一貫校があった。
私はバスから一歩降り立つと、空気をめいっぱい吸う。
「んーーーーーーーーーーーー!春だー!」
いや、もう5月だから初夏か?自分で自分の言ったことに秒で突っ込みを入れたくなった。
……それにしても、空気がおいしい!
とても首都圏とは思えないほどの空気の澄みようだ。
「…ここじゃ私の喘息、出ようがないんじゃないかな…」
誰に言うともしれず私はつぶやくと、足を踏み出した。
ここは、今日から私が通う学校だ。
小学校・中学校・高等学校の一貫校で、首都圏全体から人が来る国立。
私は中学生なので、ここの中等部に通う。
一応、インターホンを押す前に、基本情報を整理しておこう。
私は神崎 美鈴。13歳、誕生日は7月23日。しし座。
身長は155㎝、体重は言えません。重すぎる。
次は前情報の整理。
ここ、国立シエル学園中等部は、小学校からのエスカレーター入学が2割。
残りは中学受験を経て入ってくる。途中入学は絶対にできない。
……私は親がアレだから…。例外です。一応、学力はそこそこあるしね。
………………………。
「なんか頭おかしくなったかも…」
いやいやいやおかしいでしょ私!基本情報を整理しておこう、って!
一人でしゃべりだして一人で完結させちゃったよ!
やらかしたぁ~~~…
一人でゴンゴン壁に頭を打ち付けていた、その時。
ーーーーーヒュゥッ、ゴツン!
「いじゃい?!」
目の前でひよこと星がフォークダンスを踊り始めた。
「またボール飛んだな、わりわり!取ってくるわ…って、はぁ?!」
あまりの痛さに頭を押さえながらうずくまっている私を見たらしく、誰かが大声を上げたよう。
痛みにかすむ目をうっすら開けると。
「…お前、誰?」
私を睨みつけるようにしながら聞く男の人の影が見える。
ーー'男の'人?
「いやっ…!来ないで…!!」
「はぁ…?」
何を言っているかわからない、と言いたげなその人。
私に向かって、一歩、近づいてきた。
「来ないで…いやぁ…!」
かつての記憶が掘り起こされる。胸が、胸が…!
痛い…!
「…おい、お前ら!ちょっとこーい!」
「なんだよおせーぞヒカル罰として今日飯おごれ…って、えぇえええ?!」
誰か友達を呼んだらしく、違う男子の声がする。
そんな彼も、きれいなテノールが台無しなほどの大声を上げた。
「えと…なんで…そんなっ、近づいて…怖、い…な、んで…?」
声を出すことを忘れた喉から、それでも息を絞り出す。怖い、怖い。
ーーー男子が、怖い。
かたかたと震えているであろう私の肩に、声が降りかかる。
「…こっちを、向けるか?」
「え…?」
少し、顔を上げる。
彼は、先ほどの場所でじっと、私を見ていた。
「誰…?」
幾分落ち着いた私は聞く。
「俺か??俺はホシノヒカル!星に、野原の野に、月光の光で、星野光だ。」
彼はそう答える。
彼を照らすかのように、夏の光はきらきらと、彼に金粉をかけた。
「星野、光…」
私は知ったばかりの彼の名前をつぶやく。
ーーーなぜだろう。
初めて会ったはずなのに。
もうずっと前から、知ってーーーーーーー………
「お、おい?!」
私の視界はそこで急速に白くなっていき、ぷつりと消えた。
「ん……」
柔らかな光を身近に感じ、私は目が覚める。
「おー起きたかー?」
「ほしの……さん…?」
西日を背景にした影からの言葉に、先ほどの男子を思い出す。
「ん、そうだけど。……お前、栄養失調だってさ。ここに運ぶまでの間も、お前軽かったしな」
まー無理もねーか、そう続ける彼の声を聞いて、今自分がどこにいるか分かった。
殺伐とした、柔らかな狂気がその部屋には満ちていた。
「保健室…?」
「あぁ。転校生だなんて知らずに、悪かったなさっきは。まさか俺と同じ2Cの奴だとは思わんかっ…って、おい!」
強い口調の言葉の切れ端が宙に漂う。起き上がりかけていた私の上体は、再びベッドに倒されていた。彼、星野さんが肩を押し倒したからだ。
「お前、馬鹿をするな!今言ったろ、栄養失調だって!こんなガリガリに痩せて……無理のしすぎだ…!」
「うるさい。…へぇ、貴方、代表委員なの。じゃあ、私についてある程度聞いているはずよね?」
冷たさを乗せて、私は彼の目を覗き込む。
うっ と彼は息を呑んで、私の肩から手を離した。
と同時に、私の寝ているベッドに青い稲妻が散る。
「……逃げやしないわよ」
稲妻の一つ一つにそれ相応の“チカラ”があると分かった私は、彼を少し視界に入れて言う。
「……なぜ、俺が代表委員だと分かった……?」
じっ、と私を見ている彼。その視線に少なくとも敵意はない。
分かりやすすぎる反応に思わず嘆息したが、彼の質問に答えてあげようと思えた。
「貴方がここにいるのはなぜか?」
私の声が部屋の中に満ちる。
「…そう考えると、私を運んだ、つまりここまでの移動をさせた、以外に理由があるはず。じゃあ、なぜ?」
問いかけと同時に、私は指を運ぶ。彼の手元へと。
「左手のプリントの束。貴方が、先生の持ってきたプリントを整理してくれただけかもしれない。でもあなたのプリントではない。リュックサックから見えるノートと、扱いがずいぶんと違うからね」
で、とここで息継ぎをした私。木のうろのように乾いた身体に、春とはいえどまだ冷え込む空気が染みた。
「さっき、私の上に覆いかぶさったときに見えた、襟のバッジ。何を意味するのか、すぐは分からないけれど、私の持っているものではないから、一部生徒しかつけていないはず。以上からの総合判断」
次はあなたの番。そういうと彼は、口をゆっくりと開いた。
何を言うか考えているのか、再びゆっくりと閉じる。
開いた。
閉じた、が今度はすぐ開く。
「……知ってることは、そんなに多くはない」
私は、目で続きを促す。
窓の外の木々が、静謐さを破るかのように、強風に身を鳴らした。
彼は、視線を私から右へと向ける。人差し指と中指とで、何かを手繰りながら。
「…転校生が、一人来ると。そいつは、頭は良いが、家庭環境が悪く、本来ならすぐ保護されているはずだ、って。でも…その一人娘は誇り高く、保護など受けるかと、周囲を一蹴している。だから、その子が来たら、あわれむな。武家の出は彼女も私たちも同じなのだから…だけ」
・・・・・・。
「一つ、聞いてもいい?」
ある大きな疑問を持って、私は聞く。
「守秘義務って、先生方、守ってらっしゃる…?」
ぶっちゃけ、そこまで知っているとは思っていなかった。
だって!機密事項まで、今彼に言われたのよ⁈え、はっず!
多分だけど私の顔、今、西日がなければ色が明白なほど、血行が良好!
「あ~、親が、教員で…」
う・か・つ!流石に、生徒の親についてまで調べてないっ!
わなわなと震える私と、気まずそうな彼。
そして、窓の外でうるさいカラス……。
「……しかし、なんだっておめー、ここに来たんだ?」
プチン、プチンと、服のボタンをはずす音が、かすかに部屋にこだまする。
「…っ…多様性を重んじる……この学校なら……ぁっ……目立たずにっ…いられると思ったんだ……!」
「へぇ?……はい、お前の負け!」
その声と同時に、手元のゲーム機に表示される『 貴方は2着です ーYOU LOSEー 』に、私は悲鳴を上げてしまった。
あはははははっ、と笑顔の彼の声がとおる。
「き~~~さ~~~~ま~~~~~~」
「悪く思うなよ!“チカラ”での干渉はそこまでしてないぜ!」
それに、お前だって何かの“チカラ”を使いながらやってただろーが!予知か?そう笑う彼の横顔は、普通の人と同じようなあどけなさを残していた。
ゲーム中に緩めていた袖口のボタンを再び付け直しながら、彼はヒラヒラと左手を振った。
……器用だなぁ……。右手で左袖口のボタン止めながら左手振るか普通?
できるんじゃね?と思ったそこの諸君。やってみるといい。割ときついから。
「ぉ、最終下校時刻が近いぜ!帰るか!」
誰に対してなのか分からないようなことを考えていると、彼が声を上げた。
思わず時計を見ると、もう17時19分。
ほへぇ、と間抜けな声を出してしまったが、私はベッドを立った。
「……そういえば、まだ言ってなかったな」
立ち上がった私の手を引いた彼は、ドアに手をかけて言った。
開かれたドアの向こうにいる、よくわからない光る玉や、肉団子三兄弟のような生物(?)が、一斉にこちらを見る。
「国立シエル学園、この、人と異界の生物が共存する学校へ、ようこそ!」
窓から吹く風が柔らかに、私の頬と制服とを撫でて言った。
