十二年前のこと。
「おーいリアン、冒険に行くよー!」
少女が遠くから手を振って駆けてくる。気づいた少年は弾かれたように飛び上がり、顔を赤らめて喜びをあらわにする。
「ママ、今日は龍の卵を探しに行くんだ。最後の発見からちょうど百年だから、奇跡が起きるかもしれないんだって!」
「あらあら、素敵な冒険ね。でも本物の龍の姿を見かけたら、必ずその場を離れること。いいわね?」
「うん、もちろんだよ!」
息を切らせた少女が母に会釈をした。母はサンドイッチを詰めたバスケットを少年に手渡し、同時に愛息を少女に託す。
「リアンをよろしくね、ニーナ」
「はいっ、任せてください!」
駆けだしてゆくふたりの背中を見て母は思う。あの子が将来、リアンと結ばれれば嬉しいのだけれど、と。
だからささやかな願いを込めておいた。
魔法でできた祝福の花を一輪、空腹のふたりを待つバスケットの中に。
Fin
「おーいリアン、冒険に行くよー!」
少女が遠くから手を振って駆けてくる。気づいた少年は弾かれたように飛び上がり、顔を赤らめて喜びをあらわにする。
「ママ、今日は龍の卵を探しに行くんだ。最後の発見からちょうど百年だから、奇跡が起きるかもしれないんだって!」
「あらあら、素敵な冒険ね。でも本物の龍の姿を見かけたら、必ずその場を離れること。いいわね?」
「うん、もちろんだよ!」
息を切らせた少女が母に会釈をした。母はサンドイッチを詰めたバスケットを少年に手渡し、同時に愛息を少女に託す。
「リアンをよろしくね、ニーナ」
「はいっ、任せてください!」
駆けだしてゆくふたりの背中を見て母は思う。あの子が将来、リアンと結ばれれば嬉しいのだけれど、と。
だからささやかな願いを込めておいた。
魔法でできた祝福の花を一輪、空腹のふたりを待つバスケットの中に。
Fin