side.笑美
本投票の結果を見て、ホッとしたのもつかの間。
聞こえてきた爆発音は二人分だった。
慌てて、音の聞こえた方向を向くと、二人分の焦げた死体。
私の夫、誠は、スマホ型投票機を手放してはいけない、というルールを破り、自ら死んだ。
誠はずっと優しい人だった。私は誠さんを愛していた。
私は誠さんのために死ねる。誠さんがいない世界は嫌だった。
どうせ、誰かが死ななきゃいけない。なら、私も誠さんと同じように不満をぶちまけて死のう。
『ソレデハ、5回戦ヲ開始シマス』
キボウの声が聞こえる。
「それじゃ、仮投票する?」
唯一残っている、男の大人の人、横田正一が言った。
みんなは、スマホ型投票機を取り出し、仮投票を行う。
私は迷わず【横田正一】を選択する。
横田正一は私が働いている会社の上司だ。
テレビ画面に、仮投票の結果が表示された。
仮投票の結果
横田正一…1
坂井秀……1
「誰だよ、俺に投票したやつは」
まさか、投票されるとは思っていなかっうたんだろう、横田正一が声を荒げる。
「まさか、自覚ないんですか、横田さん」
「お前か、俺に投票したのは!」
「そうですよ」
私は、余裕の笑みを浮かべる。
「俺が何をしたって言うんだ!」
「私を、たくさん罵倒したじゃないですか。不条理に怒鳴って、暴言を吐いた。馬鹿にした」
私が入社したてで研修のころ、直接教えていただいたのが横田正一だった。
入社当時から印象はそんなに良くなかった。
入社前は、親戚の集まりで会うので知り合い程度だった。だって、私の夫の姉の旦那。
ほとんど関わりがなかった。
入社して、初めてちゃんとしゃべった。
その一言目が
「親戚だからって優しくはしないからね」
だった。
横田さんは勤めて長く、多くの人が逆らえない存在だった。
「この資料、作っといて」
急に言われることが多かった。
「え、でも教わってないです」
「考えるんだよ、そんなこともわかんないわけ。ここじゃなくても、働いたことはあるだろ」
確かに、働いたことはある。でもこの会社は初めてで、どう考えても分からないことだらけだ。
過去の資料を参考に、時間をかけて作った。
横田正一に提出すると、
「全然だめだ」
そう一言言われた。
「すみません。どこがダメですか?」
「そんなの、自分で考えろ。すぐ人にきくから成長しないんだ」
令和の時代に昭和の指導。
ムカついたけど、上司で親戚。なにか問題を起こして気まずくなるのだけは避けたかった。
私の直した資料で、打ち合わせを行った。
「おい、お茶を用意しろよ。女なのに気利かねえな」
「すみません」
別に男女は関係ないだろ、と心底思うが、グッと我慢し、部屋を出てお茶を用意する。
部屋からは「すいませんね、気が利かなくて」なんて言ってる声が聞こえる。
打ち合わせが終わり、相手に言われた。
「この資料、素晴らしいですね。作られたのは横田さんですか?」
「はい」
平然と嘘をついた。
「さすがですね。僕も参考にしたい」
「いえいえ、ありがとうございます」
横田正一は謙遜した様子で言うが、まんざらでもない笑顔を浮かべている。
私の手柄を自分のものにされた。ムカつく。
他にも「バカ」「アホ」「女なのに、」という言葉を多用した罵倒をされた。
ムカついた。理不尽に罵倒されてるときは本気で殺したいと思った。
私が文句をぶちまけた。
『ソレデハ、投票ヲ開始シマス』
私は迷わず【横田正一】に投票した。
『ソレデハ、投票ノ結果ヲ発表シマス』
テレビ画面が切り替わり、結果が表示された。
私も誠と同じようにスマホ型投票機を手放して死のうとしたとき、誰かにスマホ型投票機と一緒に手を握られた。
本投票の結果
横田正一…7
竹内笑美…1
死亡者
横田正一
本投票の結果を見て、ホッとしたのもつかの間。
聞こえてきた爆発音は二人分だった。
慌てて、音の聞こえた方向を向くと、二人分の焦げた死体。
私の夫、誠は、スマホ型投票機を手放してはいけない、というルールを破り、自ら死んだ。
誠はずっと優しい人だった。私は誠さんを愛していた。
私は誠さんのために死ねる。誠さんがいない世界は嫌だった。
どうせ、誰かが死ななきゃいけない。なら、私も誠さんと同じように不満をぶちまけて死のう。
『ソレデハ、5回戦ヲ開始シマス』
キボウの声が聞こえる。
「それじゃ、仮投票する?」
唯一残っている、男の大人の人、横田正一が言った。
みんなは、スマホ型投票機を取り出し、仮投票を行う。
私は迷わず【横田正一】を選択する。
横田正一は私が働いている会社の上司だ。
テレビ画面に、仮投票の結果が表示された。
仮投票の結果
横田正一…1
坂井秀……1
「誰だよ、俺に投票したやつは」
まさか、投票されるとは思っていなかっうたんだろう、横田正一が声を荒げる。
「まさか、自覚ないんですか、横田さん」
「お前か、俺に投票したのは!」
「そうですよ」
私は、余裕の笑みを浮かべる。
「俺が何をしたって言うんだ!」
「私を、たくさん罵倒したじゃないですか。不条理に怒鳴って、暴言を吐いた。馬鹿にした」
私が入社したてで研修のころ、直接教えていただいたのが横田正一だった。
入社当時から印象はそんなに良くなかった。
入社前は、親戚の集まりで会うので知り合い程度だった。だって、私の夫の姉の旦那。
ほとんど関わりがなかった。
入社して、初めてちゃんとしゃべった。
その一言目が
「親戚だからって優しくはしないからね」
だった。
横田さんは勤めて長く、多くの人が逆らえない存在だった。
「この資料、作っといて」
急に言われることが多かった。
「え、でも教わってないです」
「考えるんだよ、そんなこともわかんないわけ。ここじゃなくても、働いたことはあるだろ」
確かに、働いたことはある。でもこの会社は初めてで、どう考えても分からないことだらけだ。
過去の資料を参考に、時間をかけて作った。
横田正一に提出すると、
「全然だめだ」
そう一言言われた。
「すみません。どこがダメですか?」
「そんなの、自分で考えろ。すぐ人にきくから成長しないんだ」
令和の時代に昭和の指導。
ムカついたけど、上司で親戚。なにか問題を起こして気まずくなるのだけは避けたかった。
私の直した資料で、打ち合わせを行った。
「おい、お茶を用意しろよ。女なのに気利かねえな」
「すみません」
別に男女は関係ないだろ、と心底思うが、グッと我慢し、部屋を出てお茶を用意する。
部屋からは「すいませんね、気が利かなくて」なんて言ってる声が聞こえる。
打ち合わせが終わり、相手に言われた。
「この資料、素晴らしいですね。作られたのは横田さんですか?」
「はい」
平然と嘘をついた。
「さすがですね。僕も参考にしたい」
「いえいえ、ありがとうございます」
横田正一は謙遜した様子で言うが、まんざらでもない笑顔を浮かべている。
私の手柄を自分のものにされた。ムカつく。
他にも「バカ」「アホ」「女なのに、」という言葉を多用した罵倒をされた。
ムカついた。理不尽に罵倒されてるときは本気で殺したいと思った。
私が文句をぶちまけた。
『ソレデハ、投票ヲ開始シマス』
私は迷わず【横田正一】に投票した。
『ソレデハ、投票ノ結果ヲ発表シマス』
テレビ画面が切り替わり、結果が表示された。
私も誠と同じようにスマホ型投票機を手放して死のうとしたとき、誰かにスマホ型投票機と一緒に手を握られた。
本投票の結果
横田正一…7
竹内笑美…1
死亡者
横田正一

