「春斗……夏弥、秋来、冬理……」

 僕はその場に座り込み、失った仲間たちを想い涙しながら、なんとか自分を正当化しようとする。

 春斗の行動力は、無鉄砲だ。ルールを守らず、考える前に動いた。だから死んだ。
 夏弥の平和主義は、状況によっては無力だ。偽善は疑心暗鬼や対立を生む。だから死んだ。
 秋来の勢いは、発揮する場所を間違えると自滅行為だ。だから死んだ。
 冬理の感受性豊かな優しさは、心の弱さだ。競争社会では耐えられない。だから死んだ。
 僕の当たり障りない行動や言動は、生き残るための処世術。もう誰かの代わりに自分が割りを食うなんてごめんだった。だから生き残った。

「はは……ダッサ……」

 自分に言い訳を重ねても、やっぱり正当化なんて出来なかった。一人生き残った不安に苛まれながら、僕は彼らの良いところも悪いところも胸の内に押し込んで、彼らの遺志を継いで立ち上がる。

「あいつらに格好悪いとこ、見せられないよな……僕が、主役になるんだから」

 仲間と比べ特に秀でたものはなく、特に誇れるものもない僕。
 ただの運。ただのまぐれ。ただ流されるままここに立っていただけ。出る杭は打たれると言うけれど、出ることも出来ない存在だろう。

「それでも……その方がいいのかな、現に僕が、生き残ったんだから……」

 僕は僕を軸に、彼らの残したものを引き継ごう。流されるだけじゃなく、時には自発的に行動して、正義漢ぶるのもいい。時には弱さに心を委ねて、怒れる時には怒れるように。僕たちは極端すぎた。だから、その中間くらいがちょうどいい。

「……」

 そして僕は、まばゆいスポットライトの真ん中に立つ。
 赤い照明が消え、暗闇に差し込む白い光に包まれながら、僕は目を閉じる。
 これからは、僕が主役。僕が生き残ったのだ。
 この場に辿り着いた僕は、死んだ彼らの分まで戦わなくてはいけない。これ以降、敗北は許されない。

「僕は、これからも生き残る……」

 不意に拍手の音が聞こえて目を開けると、暗い客席には春斗、夏弥、秋来、冬理が居た。
 血に濡れた彼らは微笑みながら、僕にスタンディングオベーションをくれる。

「ありがとう……みんな。僕、頑張るよ」

 鳴り響く拍手の中、僕は鼓動の高鳴る胸に手を当てて、深くお辞儀をした。


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