「でもね、A子さんってなんとなく鼻につくっていうか」

「そうそう! 自分はこの中では一番幸せだと思ってるくせに、私たちに合わせて不幸ぶってみせて、嫌な感じだったのよね」

ふたりはA子さんから事前に話を聞いていた山田さんと安岡さんで間違いないようです。僕は今ふたりの本心を聞いているわけです。



「だけどご家族がいなくなったのは心配ですよね」



「まぁ、心配っちゃ心配だけど……うまく言ったって感じかしら?」

「あの噂、本当だったのね」
ふたりの声が、今度は本当に小さく小さくなっていきました。

これは本当に人に知られてはならない話なんでしょう。
僕は身を乗り出してふたりに質問しました。