ついに待ち望んだ体育祭が始まった。
(あのときはびっくりしたな…)
まさか急に抱きつかれるなんて…目眩だったらしいけど……
最近なんだか燈也を見ているとドキドキする。いつも見てるはずなのに……
ドキドキしてまともに話せもしないから嫌われたりしないだろうか……
「続いては部活対抗リレー!選手の皆さんは移動してください。」
「じゃあ行ってくるね」
「がんばれー」
「が、がんばって……」
「俺、佐野のために頑張るね応援してて」
「うん…」
(うう…ドキドキする…)
しっかり応援できるだろうか…見惚れていたから応援できなかったなんて事になったらマネージャーとしてやっていけるだろうか…
「きゃー!月嶋くん頑張ってー!」
「山本くんも頑張ってー!」
「おい!そっち陸上部!」
「きゃー!」
女子たちは月嶋と山本に夢中で陸上部ではない人も応援しているようだ。
「高橋は出なくてよかったの?」
「俺〜?いいのいいの、めんどくさいから」
「そうなんだ」
「山本と月嶋最後のほうだね〜」
「うん…」
「月嶋のこといっぱい応援してあげてね」
「うん、でもみんな応援しないと」
「佐野ちゃんはいい子だね〜よしよし」
「ありがと……」
高橋を見ていたであろう女子が俺の方を睨んでいるような気がするが気にしないでおこう……
吹奏楽部がどこか聞き覚えのあるファンファーレを演奏し終えたところで全員がコース内に入った。
「それでは位置について、よーいドン!」
スタートの合図で一斉に選手たちが走り出した。コースを走らずネタに走った水泳部は地面を泳ぎ、所々から笑いが起こる。体操部は見事なバク転を披露しみんなを驚かせた。
「さぁ!現在のトップは野球部の山代くん!大きく差をつけ独走しています!」
「野球部つえ〜逃げ切られるんじゃない?」
「む…」
俺らの陸上部は現在三番手。他の部活も気合を入れてきているのだろう。
「さあ一番手と二番手の間はおよそ7馬身!果たして追いつけるのか!」
「競馬じゃないんだから…」
「馬で例えれば野球部はサイレントナズナってとこか」
後ろで見ていたクラスメイトが馬に例えだした。サイレントナズナは大逃げで有名な馬らしい。
「なんでそんなに詳しいのさ」
「父さんが競馬好きだから、ほらあそこで差せー!って叫んでるのがそう」
「なるほど…」
その生徒が指差す方を見ると確かにすごい叫んでるおじさんがいた。
「水泳部は〜?」
「あれはもはや走ってないだろ」
「確かに」
そんな話をしている間にも次は山本の番。野球部とはすごくさが開いていて勝つのは厳しそう…
「おー!やまちゃんだ!」
「お前らあれ勝てんの?」
「フフン、それができるんだよな〜なんせやまちゃんだもん」
「でも大丈夫なの…?」
「見てなって」
そういえばちょっと騒がしくなったな……気になって見てみると俺が見ていない間にさっきまで離れていた野球部のすぐ後ろに山本がついていた。
「えっ」
「あいつバケモンすぎだろ!」
そしてあっという間に並び野球部と陸上部アンカーの一騎打ちになった
「ほら次つきちゃん!応援して!」
「う、うん」
でも大声を出したら目立つよな…ちょっと控えめに…
「が、頑張れ〜…」
月嶋を見るとこちらを見て手を振っていた
「ちょっ…!あれやばい」
月嶋が手を振ってる間に並走していた野球部はどんどん離れていく。
「きゃー!月嶋くんが私に手振ってくれてるー!」
女子たちは大興奮だが俺は焦ってきた……高橋もなんか言ってよ……
「つきちゃーん!佐野ちゃんが『燈也くん頑張れ♡』だってー!」
「!?」
そんなこと言ってませんが!?ハートなんてつけてないし下の名前では呼んでいない
月嶋を見るとパァっと目を輝かせ走り出した
「さぁラストスパート!このまま野球部が逃げ切るのか!」
「へっ、俺らの勝ち…」
誰もが野球部の勝ちを確信していたその時だった
「おっとここで先ほど立ち止まった陸上部がもう追いついてきた!」
「は!?」
「あっという間に追い抜かして差し切ったー!」
「きゃー!月嶋くーん!」
会場は大きな歓声に包まれた。後ろのクラスメイトは
「あれはまさにマチカネカミサマの神戸新聞杯のような末脚!」
「マチ…なんて?」
「サイレントナズナの逃げ切りかと思われたのにギリギリで差し切った名馬だよ!」
「つきちゃんすっげー!」
「佐野!見てた!?」
ゴールまでは距離があるはずなのにいつの間にか月嶋がいた。
「えっと…うん!」
「すごかったっしょ!」
「ちゃんと走ったらよかったのに」
「いやぁ、佐野が目に入ったから」
「っ…!」
なんだそれ…なんか胸がギュンってなる…いつも見ているはずなのに月嶋がいつもより輝いて見える…日差しが強いからか?
「次借り物競争だぞー!ちゃんと水飲んでおくように!」
「はーい」
「いやーあれはないわ」
「えー?勝ったじゃん」
「せっかく俺が差縮めてやったのに」
「やまちゃんかっこよかったよ!」
「それで、次高橋と月嶋だっけ」
「そう、補欠で入ることになった」
「忙しい人だね」
「あはは…頑張ってね」
「おう!任せろ!」
月嶋が眩しい笑顔でそう言ってくる。こんなに眩しいと思ったことはないはずなんだけどな…
「あ、そう言えば俺もお題考えたから引けるといいね」
「…お前のことだから変なお題なんだろうな」
「引いてからのお楽しみ」
「つきちゃんもう始まるよ」
「ああ、わかった」
「じゃあね」
「応援しててね」
「うん」
月嶋は俺に小さく手を振りまたコースへと入っていった。
「さぁ!続いてはクラス対抗借り物競争!紙に書かれたお題に合うものをあちらの望月先生に見せてください!」
望月先生はわかりやすいよう大きく手を振った
「ただし!人がお題のときもあります!その際は望月先生の元へ一緒に連れて行ってください!」
「人がお題になったりもするんだね…」
「俺が考えたのも人なんだよね」
「どんなの書いたの?」
「んー…秘密」
「えぇ…」
「そして順位が確定次第終了ですので最下位になってしまった場合はその時点で終了してください!」
借りるものが見つからなくて終わるってのもあり得るのか…俺じゃ多分最下位になってるだろうな…
「それでは一列目!よーいドン!」
スタートの合図でまた一斉に走り出す。あっという間に一年生が終わり次は2年だ。
俺のクラスのトップバッターは高橋。高橋も陸上部だスタートした瞬間あっという間にお題の紙を取りまた走り出す。
「あれ?こっち来てる?」
「佐野ちゃん!来て!」
「え、俺?」
「そう!部活のマネージャーだって!」
高橋に見せられた紙には確かにマネージャーと書かれている。
「でも別に自分のじゃなくてもいいって書いて…」
「いいから!」
俺が断ろうとするもそれは虚しく手を引かれ、連れて行かれた。
「んー合格!」
「やったね!1位だよ!」
「う、うん…」
「じゃあ借りられた人は戻っていいぞ!」
「はい」
「またね~」
高橋に見送られ俺は席へと戻った。
「次月嶋だってよ」
「そうなんだ、どんなお題引くのかな」
「さあね」
高橋が1位でゴールした後、次々と他の生徒もゴールしていき次は月嶋の番
「位置についてよーいドン!」
月嶋はフライングしたのかってくらい速いスピードでお題の紙を取った…がそれを見た途端急に固まった
「俺の引いたな」
「え、なんなの?それって」
「なんでしょう」
「教えてよ〜」
気になって仕方ない…どんなのを書きそうかと考えていると体が持ち上がる感触が襲った。
「え!?」
見ると月嶋が俺をお姫様抱っこして運んでいるのだ。
「お、降ろして」
「……」
無視!?せめてなんのお題なのか教えてよ!
「おー、また佐野か」
「どうも…」
「紙は?」
「これです」
月嶋は俺を一旦降ろし、お題の紙をポケットから取り出した。
「おー!そうか!」
「そうか…?」
「よし、合格!」
「あの、なんのお題だったんですか?」
「それは…」
「望月先生次お願いします」
「あー悪いなでもまた1位だぞ」
1位だから聞かなくていいとかないのに…!
「戻りな、背の低い男子とかなら佐野もまた出番だから」
「はぁ~!?小さくないもん!」
「はいはい、戻らないと怒られるよ」
「じゃあ教えてよ何書かれてたの?」
「うっ…それは」
月嶋はどこか言いたくなさそうに目線を反らせた。怪しい…でも無理に聞かれるのも嫌だよな…今回は諦めるか…
その後も2年生、3年生と続き、月嶋のお題を知れずに借り物競争は終わった。
「お昼休憩です、各自お弁当を食べ、お手洗いは早めに済ませましょう」
「俺ちょっとトイレ」
「はーい、いってらっしゃい」
俺はトイレと言って席を外した。次は俺の参加する玉入れだ。そのためにも色々準備しよう。
「…ねぇつきちゃん、佐野ちゃんいなくなったから俺だけに教えてよ」
「…やだ」
「えーじゃあやまちゃん教えて」
「俺はただ好きな人って書いただけだよ?他のクラスのやつが取ったらしいけど」
「?やまちゃんのじゃなかったんだ」
「そうみたい」
「じゃあ教えてくれてもいいじゃん!」
「それは無理」
「えー!」
「……」
「ふっ」
「…なんだよ山本ニヤついて」
「いやぁ?素直じゃないねって」
「…別にどうでもいいだろ」
「みんなおまたせ、次玉入れだからこのまま行くね」
「おー、がんばー」
「佐野ちゃん行ってらっしゃい!」
「月嶋にいいとこ見せてやれ〜」
「なっ…!」
「続いては玉入れ競争!より多くの玉を入れたチームの勝利です!」
いよいよ玉入れ!俺の大得意なものだ。幼稚園では俺一人でかごを満ぱんにして他の子達を泣かせたほどの実力はある。その影響で幼稚園ではバタコさんと呼ばれていた。
「スタートの合図で玉を拾い始めてください!それではよーいドン!」
そして玉入れがスタート。俺は急いで玉を拾い、かごへと投げる。俺の投げた玉はほとんどかごに入りあっという間に玉はかごに入らなくなった。周りからは「すげー!」との声で溢れかえった。
「えー…紅組150個、白組43個で紅組の勝ち…」
どうだバタコさんの実力は。白組は白旗を上げ、先生たちは次の競技へと入る準備を始める。
「佐野ちゃんすごーい!」
「フフン!幼稚園の頃は大得意だったから!」
「まさか佐野にそんな特技があったなんてな」
「つきちゃんもなんか言ってあげなよ」
「え?ああ、すごかったよ、かっこよかった」
「へへ…ありがとう」
月嶋に褒められるとなんだかとても嬉しい…また胸がギュンとなった…なんでだろう
その後も障害物競走や100m走、ダンスが終わりいよいよ結果発表
「結果発表ー!!」
「「うおおおおお!!」」
「まずは部活対抗リレー!優勝は陸上部!」
陸上部のみんなと女子からは大きな歓声が上がった。代表として月嶋が賞状を受け取った。
「続いては組対抗の借り物競争!まずは1年生!優勝は〜…3組!」
「次は2年だね」
「勝てるかな…」
「俺と高橋で1位だから大丈夫だよ」
「そうなのかな?」
「そうそう」
「続いては2年生!優勝は…1組!」
「わああああああああ!」
月嶋の言う通り月嶋と高橋が二人で1位を取ったのが功を制したようだ。
「やったね!佐野ちゃん!」
「うん!…あ、そういえば結局あのお題なんだったの?」
「俺も気になる〜」
「…名字がさ行から始まるやつだった」
そうだったのか…でもそれならリレーのときも後ろにいた佐藤さんとか陸上部をよく見に来ていた鈴木さんでも良かったんじゃとは思うけど…月嶋的には俺が1番呼びやすかったんだろうな。
「なーる、確かに俺らの中じゃ佐野ちゃんだけだね」
「だろ?」
「今なら言ってもよかったんじゃない?」
「うっせ、山本は見てただけだろ」
「せっかくチャンス作ったのに…」
チャンス?何の話だろうか…
「続いては紅組と白組の勝敗を振り返ってみましょう」
「佐野ちゃんの玉入れのやつだ」
「まずは玉入れ!2勝1敗で紅組の勝ち!」
「頑張ったね〜よしよし」
「ありがと」
「次は障害物競走!2勝1敗で白組の勝ち!」
「高橋速かったのにね」
「1年の白組の子強かったから…」
「そして100m走!3勝で紅組の勝ち!」
「3勝やったね」
「俺ら一緒の紅組だったからね〜」
「圧勝すごかった」
「さあ!ということで今年は…!紅組の勝ちー!」
紅組から大歓声が上がり、運動会は幕を閉じた…
そして放課後、俺達はいつものように四人で並んで帰る
「佐野ちゃん、今日はどうだった?」
「楽しかった!」
「よかったね〜」
「それよりもうすぐ修学旅行だって」
突然月嶋がそんな事を言い出した。修学旅行…あまりいい思い出はない…
「おお〜!じゃあこの四人で決まりだね」
「え、俺もいいの?」
三人が仲良いのは知っていたが俺は今年から話していただけ。だからてっきり修学旅行の班は他の人を誘うんだと思っていた。
「もちろんだよー友達でしょ?」
「佐野が嫌ならいいけど…佐野がいれば大喜びするやつはいるよ」
「佐野!高橋と山本がこう言ってるから!な!」
「う、うん…みんなが入ってほしいなら」
「「やったー!」」
「月嶋と高橋近所迷惑」
「だって嬉しいんだもんね〜?」
「そうそう、高橋の言う通り。山本ももっと喜びなよ」
「俺は…はしゃがないから」
「あー!照れてる!」
「めちゃくちゃ嬉しそう!」
「うっせ、じゃあ俺こっちだから」
「おう!じゃあな!俺も行くわ!」
「ばいばい」
『友達でしょ?』
友達…そう言ってもらえて嬉しかった。友達って思っていいんだ…
修学旅行…楽しみだな…
(あのときはびっくりしたな…)
まさか急に抱きつかれるなんて…目眩だったらしいけど……
最近なんだか燈也を見ているとドキドキする。いつも見てるはずなのに……
ドキドキしてまともに話せもしないから嫌われたりしないだろうか……
「続いては部活対抗リレー!選手の皆さんは移動してください。」
「じゃあ行ってくるね」
「がんばれー」
「が、がんばって……」
「俺、佐野のために頑張るね応援してて」
「うん…」
(うう…ドキドキする…)
しっかり応援できるだろうか…見惚れていたから応援できなかったなんて事になったらマネージャーとしてやっていけるだろうか…
「きゃー!月嶋くん頑張ってー!」
「山本くんも頑張ってー!」
「おい!そっち陸上部!」
「きゃー!」
女子たちは月嶋と山本に夢中で陸上部ではない人も応援しているようだ。
「高橋は出なくてよかったの?」
「俺〜?いいのいいの、めんどくさいから」
「そうなんだ」
「山本と月嶋最後のほうだね〜」
「うん…」
「月嶋のこといっぱい応援してあげてね」
「うん、でもみんな応援しないと」
「佐野ちゃんはいい子だね〜よしよし」
「ありがと……」
高橋を見ていたであろう女子が俺の方を睨んでいるような気がするが気にしないでおこう……
吹奏楽部がどこか聞き覚えのあるファンファーレを演奏し終えたところで全員がコース内に入った。
「それでは位置について、よーいドン!」
スタートの合図で一斉に選手たちが走り出した。コースを走らずネタに走った水泳部は地面を泳ぎ、所々から笑いが起こる。体操部は見事なバク転を披露しみんなを驚かせた。
「さぁ!現在のトップは野球部の山代くん!大きく差をつけ独走しています!」
「野球部つえ〜逃げ切られるんじゃない?」
「む…」
俺らの陸上部は現在三番手。他の部活も気合を入れてきているのだろう。
「さあ一番手と二番手の間はおよそ7馬身!果たして追いつけるのか!」
「競馬じゃないんだから…」
「馬で例えれば野球部はサイレントナズナってとこか」
後ろで見ていたクラスメイトが馬に例えだした。サイレントナズナは大逃げで有名な馬らしい。
「なんでそんなに詳しいのさ」
「父さんが競馬好きだから、ほらあそこで差せー!って叫んでるのがそう」
「なるほど…」
その生徒が指差す方を見ると確かにすごい叫んでるおじさんがいた。
「水泳部は〜?」
「あれはもはや走ってないだろ」
「確かに」
そんな話をしている間にも次は山本の番。野球部とはすごくさが開いていて勝つのは厳しそう…
「おー!やまちゃんだ!」
「お前らあれ勝てんの?」
「フフン、それができるんだよな〜なんせやまちゃんだもん」
「でも大丈夫なの…?」
「見てなって」
そういえばちょっと騒がしくなったな……気になって見てみると俺が見ていない間にさっきまで離れていた野球部のすぐ後ろに山本がついていた。
「えっ」
「あいつバケモンすぎだろ!」
そしてあっという間に並び野球部と陸上部アンカーの一騎打ちになった
「ほら次つきちゃん!応援して!」
「う、うん」
でも大声を出したら目立つよな…ちょっと控えめに…
「が、頑張れ〜…」
月嶋を見るとこちらを見て手を振っていた
「ちょっ…!あれやばい」
月嶋が手を振ってる間に並走していた野球部はどんどん離れていく。
「きゃー!月嶋くんが私に手振ってくれてるー!」
女子たちは大興奮だが俺は焦ってきた……高橋もなんか言ってよ……
「つきちゃーん!佐野ちゃんが『燈也くん頑張れ♡』だってー!」
「!?」
そんなこと言ってませんが!?ハートなんてつけてないし下の名前では呼んでいない
月嶋を見るとパァっと目を輝かせ走り出した
「さぁラストスパート!このまま野球部が逃げ切るのか!」
「へっ、俺らの勝ち…」
誰もが野球部の勝ちを確信していたその時だった
「おっとここで先ほど立ち止まった陸上部がもう追いついてきた!」
「は!?」
「あっという間に追い抜かして差し切ったー!」
「きゃー!月嶋くーん!」
会場は大きな歓声に包まれた。後ろのクラスメイトは
「あれはまさにマチカネカミサマの神戸新聞杯のような末脚!」
「マチ…なんて?」
「サイレントナズナの逃げ切りかと思われたのにギリギリで差し切った名馬だよ!」
「つきちゃんすっげー!」
「佐野!見てた!?」
ゴールまでは距離があるはずなのにいつの間にか月嶋がいた。
「えっと…うん!」
「すごかったっしょ!」
「ちゃんと走ったらよかったのに」
「いやぁ、佐野が目に入ったから」
「っ…!」
なんだそれ…なんか胸がギュンってなる…いつも見ているはずなのに月嶋がいつもより輝いて見える…日差しが強いからか?
「次借り物競争だぞー!ちゃんと水飲んでおくように!」
「はーい」
「いやーあれはないわ」
「えー?勝ったじゃん」
「せっかく俺が差縮めてやったのに」
「やまちゃんかっこよかったよ!」
「それで、次高橋と月嶋だっけ」
「そう、補欠で入ることになった」
「忙しい人だね」
「あはは…頑張ってね」
「おう!任せろ!」
月嶋が眩しい笑顔でそう言ってくる。こんなに眩しいと思ったことはないはずなんだけどな…
「あ、そう言えば俺もお題考えたから引けるといいね」
「…お前のことだから変なお題なんだろうな」
「引いてからのお楽しみ」
「つきちゃんもう始まるよ」
「ああ、わかった」
「じゃあね」
「応援しててね」
「うん」
月嶋は俺に小さく手を振りまたコースへと入っていった。
「さぁ!続いてはクラス対抗借り物競争!紙に書かれたお題に合うものをあちらの望月先生に見せてください!」
望月先生はわかりやすいよう大きく手を振った
「ただし!人がお題のときもあります!その際は望月先生の元へ一緒に連れて行ってください!」
「人がお題になったりもするんだね…」
「俺が考えたのも人なんだよね」
「どんなの書いたの?」
「んー…秘密」
「えぇ…」
「そして順位が確定次第終了ですので最下位になってしまった場合はその時点で終了してください!」
借りるものが見つからなくて終わるってのもあり得るのか…俺じゃ多分最下位になってるだろうな…
「それでは一列目!よーいドン!」
スタートの合図でまた一斉に走り出す。あっという間に一年生が終わり次は2年だ。
俺のクラスのトップバッターは高橋。高橋も陸上部だスタートした瞬間あっという間にお題の紙を取りまた走り出す。
「あれ?こっち来てる?」
「佐野ちゃん!来て!」
「え、俺?」
「そう!部活のマネージャーだって!」
高橋に見せられた紙には確かにマネージャーと書かれている。
「でも別に自分のじゃなくてもいいって書いて…」
「いいから!」
俺が断ろうとするもそれは虚しく手を引かれ、連れて行かれた。
「んー合格!」
「やったね!1位だよ!」
「う、うん…」
「じゃあ借りられた人は戻っていいぞ!」
「はい」
「またね~」
高橋に見送られ俺は席へと戻った。
「次月嶋だってよ」
「そうなんだ、どんなお題引くのかな」
「さあね」
高橋が1位でゴールした後、次々と他の生徒もゴールしていき次は月嶋の番
「位置についてよーいドン!」
月嶋はフライングしたのかってくらい速いスピードでお題の紙を取った…がそれを見た途端急に固まった
「俺の引いたな」
「え、なんなの?それって」
「なんでしょう」
「教えてよ〜」
気になって仕方ない…どんなのを書きそうかと考えていると体が持ち上がる感触が襲った。
「え!?」
見ると月嶋が俺をお姫様抱っこして運んでいるのだ。
「お、降ろして」
「……」
無視!?せめてなんのお題なのか教えてよ!
「おー、また佐野か」
「どうも…」
「紙は?」
「これです」
月嶋は俺を一旦降ろし、お題の紙をポケットから取り出した。
「おー!そうか!」
「そうか…?」
「よし、合格!」
「あの、なんのお題だったんですか?」
「それは…」
「望月先生次お願いします」
「あー悪いなでもまた1位だぞ」
1位だから聞かなくていいとかないのに…!
「戻りな、背の低い男子とかなら佐野もまた出番だから」
「はぁ~!?小さくないもん!」
「はいはい、戻らないと怒られるよ」
「じゃあ教えてよ何書かれてたの?」
「うっ…それは」
月嶋はどこか言いたくなさそうに目線を反らせた。怪しい…でも無理に聞かれるのも嫌だよな…今回は諦めるか…
その後も2年生、3年生と続き、月嶋のお題を知れずに借り物競争は終わった。
「お昼休憩です、各自お弁当を食べ、お手洗いは早めに済ませましょう」
「俺ちょっとトイレ」
「はーい、いってらっしゃい」
俺はトイレと言って席を外した。次は俺の参加する玉入れだ。そのためにも色々準備しよう。
「…ねぇつきちゃん、佐野ちゃんいなくなったから俺だけに教えてよ」
「…やだ」
「えーじゃあやまちゃん教えて」
「俺はただ好きな人って書いただけだよ?他のクラスのやつが取ったらしいけど」
「?やまちゃんのじゃなかったんだ」
「そうみたい」
「じゃあ教えてくれてもいいじゃん!」
「それは無理」
「えー!」
「……」
「ふっ」
「…なんだよ山本ニヤついて」
「いやぁ?素直じゃないねって」
「…別にどうでもいいだろ」
「みんなおまたせ、次玉入れだからこのまま行くね」
「おー、がんばー」
「佐野ちゃん行ってらっしゃい!」
「月嶋にいいとこ見せてやれ〜」
「なっ…!」
「続いては玉入れ競争!より多くの玉を入れたチームの勝利です!」
いよいよ玉入れ!俺の大得意なものだ。幼稚園では俺一人でかごを満ぱんにして他の子達を泣かせたほどの実力はある。その影響で幼稚園ではバタコさんと呼ばれていた。
「スタートの合図で玉を拾い始めてください!それではよーいドン!」
そして玉入れがスタート。俺は急いで玉を拾い、かごへと投げる。俺の投げた玉はほとんどかごに入りあっという間に玉はかごに入らなくなった。周りからは「すげー!」との声で溢れかえった。
「えー…紅組150個、白組43個で紅組の勝ち…」
どうだバタコさんの実力は。白組は白旗を上げ、先生たちは次の競技へと入る準備を始める。
「佐野ちゃんすごーい!」
「フフン!幼稚園の頃は大得意だったから!」
「まさか佐野にそんな特技があったなんてな」
「つきちゃんもなんか言ってあげなよ」
「え?ああ、すごかったよ、かっこよかった」
「へへ…ありがとう」
月嶋に褒められるとなんだかとても嬉しい…また胸がギュンとなった…なんでだろう
その後も障害物競走や100m走、ダンスが終わりいよいよ結果発表
「結果発表ー!!」
「「うおおおおお!!」」
「まずは部活対抗リレー!優勝は陸上部!」
陸上部のみんなと女子からは大きな歓声が上がった。代表として月嶋が賞状を受け取った。
「続いては組対抗の借り物競争!まずは1年生!優勝は〜…3組!」
「次は2年だね」
「勝てるかな…」
「俺と高橋で1位だから大丈夫だよ」
「そうなのかな?」
「そうそう」
「続いては2年生!優勝は…1組!」
「わああああああああ!」
月嶋の言う通り月嶋と高橋が二人で1位を取ったのが功を制したようだ。
「やったね!佐野ちゃん!」
「うん!…あ、そういえば結局あのお題なんだったの?」
「俺も気になる〜」
「…名字がさ行から始まるやつだった」
そうだったのか…でもそれならリレーのときも後ろにいた佐藤さんとか陸上部をよく見に来ていた鈴木さんでも良かったんじゃとは思うけど…月嶋的には俺が1番呼びやすかったんだろうな。
「なーる、確かに俺らの中じゃ佐野ちゃんだけだね」
「だろ?」
「今なら言ってもよかったんじゃない?」
「うっせ、山本は見てただけだろ」
「せっかくチャンス作ったのに…」
チャンス?何の話だろうか…
「続いては紅組と白組の勝敗を振り返ってみましょう」
「佐野ちゃんの玉入れのやつだ」
「まずは玉入れ!2勝1敗で紅組の勝ち!」
「頑張ったね〜よしよし」
「ありがと」
「次は障害物競走!2勝1敗で白組の勝ち!」
「高橋速かったのにね」
「1年の白組の子強かったから…」
「そして100m走!3勝で紅組の勝ち!」
「3勝やったね」
「俺ら一緒の紅組だったからね〜」
「圧勝すごかった」
「さあ!ということで今年は…!紅組の勝ちー!」
紅組から大歓声が上がり、運動会は幕を閉じた…
そして放課後、俺達はいつものように四人で並んで帰る
「佐野ちゃん、今日はどうだった?」
「楽しかった!」
「よかったね〜」
「それよりもうすぐ修学旅行だって」
突然月嶋がそんな事を言い出した。修学旅行…あまりいい思い出はない…
「おお〜!じゃあこの四人で決まりだね」
「え、俺もいいの?」
三人が仲良いのは知っていたが俺は今年から話していただけ。だからてっきり修学旅行の班は他の人を誘うんだと思っていた。
「もちろんだよー友達でしょ?」
「佐野が嫌ならいいけど…佐野がいれば大喜びするやつはいるよ」
「佐野!高橋と山本がこう言ってるから!な!」
「う、うん…みんなが入ってほしいなら」
「「やったー!」」
「月嶋と高橋近所迷惑」
「だって嬉しいんだもんね〜?」
「そうそう、高橋の言う通り。山本ももっと喜びなよ」
「俺は…はしゃがないから」
「あー!照れてる!」
「めちゃくちゃ嬉しそう!」
「うっせ、じゃあ俺こっちだから」
「おう!じゃあな!俺も行くわ!」
「ばいばい」
『友達でしょ?』
友達…そう言ってもらえて嬉しかった。友達って思っていいんだ…
修学旅行…楽しみだな…


