学校のチャイムがなり生徒たちが一斉に席に着いた。
 「皆さんおはようございます!今年からこのクラスの担任になった望月(もちづき)だ!」
 今年も望月先生か…
 彼の名前は望月馨(もちづきかおる)。担当教科は国語。女子からは「もっちー」というあだ名をつけられている。
 去年も担任で、授業も楽しかったし相談にも乗ってくれてお世話になりすぎた。だからなんかこれ以上迷惑はかけたくないから正直他の先生が良かった。
 望月先生は教え方が上手と評判だ。見た目は爽やかなイケおじみたいな感じ。しかもめっちゃ親しみやすいし陰キャの俺にも優しい。

 「今年から高校2年生だな!今年は修学旅行があるから一生懸命(いっしょうけんめい)楽しむぞ!」
 修学旅行というワードに反応して教室は盛り上がった。
 修学旅行…
 
 中学の友達は別々のクラスになりこのクラスには対して仲がいい人はいない。なんなら中学の修学旅行では1人余ってしまい残ったグループに入れてもらったがめちゃくちゃ嫌な顔をされていたのを覚えている。
 「お前ら修学旅行が楽しみなのはわかるが勉強もしなきゃ連れていかんぞ!」
 クラスの大半がはいはいと言わんばかりに面倒くさそうな顔をした。
 「でももっちーの授業わかりやすいから大丈夫っしょ〜」と陽キャの女子が笑いながら言う。
 それに対し先生は「国語だけ良くても他がダメなら行けね〜ぞ。俺は国語しか教えれねえからな。」と即答した。
 「まだ時間があるな…そうだ!じゃあ今年初めましてってやつもいるから質問コーナーだ!俺に質問あるやついるか〜?」
 自己紹介じゃなくて良かった…とちょっと安心した
 自己紹介しろなんて言われたら詰むからな…と思ったその時後ろの席の男子が手を挙げたみたいだ
 「おし!じゃあ高橋(たかはし)!」
 ふと後ろを見ると凄いイケメンが手を挙げていた。
 どっちかといえば中性的で髪もふわっとしている。
 「先生って彼女いんの〜?」
 定番のやつ…なのかは知らないが望月先生ならいそうだ、容姿端麗、性格も完璧モテる要素しかない。強いて言うなら年齢が謎なところか?
 「そういうのは秘密〜」
 「えー!ケチ〜」
 その声に聞き覚えがあるような気がした
 その声は横から聞こえ、ふと横を見るとまたイケメンがいた。
 「絶対いそー!何年目ー?」
 こういうのも陽キャのノリなら普通なのか…?とりあえず俺は関係ないし黙っておこう
 「まぁその話はこれで終わりな!まだあるかー?」とまた聞かれるが質問がもうないのか教室はシーンとした
 もうないのかよ…!
 俺は内心そう思った。だってこういう空気って気まずくないか。
 チラッと横を見るとさっきのヤツと目が合った。
 ヤベッと思って咄嗟に目を()らした。
 確か名前は…月嶋(つきしま)だったか
 去年何かと(うわさ)になったヤツ。
 イケメン三人組が入学してきた!と月嶋、高橋、山本が先輩や同級生達からキャーキャー言われてた。
 俺とは真逆。
 そんなこと考えてるうちに質問がない沈黙の時間が流れたまま時間が来たようでチャイムが鳴った。
 「おっともう時間か、次移動だから遅れるなよ〜」
 そうだった…移動しなきゃなのか…
 俺はいつも1人だから浮いている…さすがにもう慣れたが1年の頃は結構気にしてた

 まぁいいか…
 と1人で行こうとした時後ろから声をかけられた。
 「おチビちゃんっ、一緒(いっしょ)に行かん?」
 声の主は月嶋だ
 「え、お、俺?」
 「お前以外いんのかよ」
 確かに俺は高校2年生にもなって身長はまだ162センチ…体重も48キロで昔から細っこいだのチビだの言われてる
 ハッ!というかこんなイケメンが俺を誘うなんて絶対裏がある…パシリにされるのか?俺…それともいじめられたり…?
 「何ボーッとしてんだ、早く行くぞ」
 「あ、はい…」
 教室を出るとそこにはさっきの高橋ともう1人のイケメン山本
 高橋はその見た目から想像できる通りふわふわ感じでこう…犬みたいだ。
 山本は逆にクールでちょっと怖い。狼みたいな感じ。
 「その子誰ー?」
 高橋が言った
 「あ、え…とさ、佐野友里(さのゆうり)です…」
 「ふーん…おけ!じゃ、とっとと行こうぜ!」
 え?流された?せっかく言ったのに!
 「お前が人誘うとか珍しいじゃん」
 「確かに〜いつも俺と山本とで行ってんじゃん」
 そうだよ!なんでよりによって俺なんだ!
 きっといじめやすそうとかそういうのなんだろうな…トホホ
 「別にいいだろ」
 よくねーよ!と心の中で叫んだ。
 「仲良くしよーな」
 「は、はい…」
 最悪だ…始業式当日からクラスの陽キャ達に目をつけられるだなんて…
 
 そして全校集会が終わり教室へ戻ることになった
 さっきの陽キャイケメン集団から逃げるようにこっそり戻ろうとすると「待てよ」と後ろから呼び止められた
 おそるおそる振り向くとさっきの月嶋がいた
 「戻る時も一緒だろ?」
 ニコニコしているが圧がすごい…
 「わ、わかり…まし…た」
 嫌だとか言ったら殺される…!そう察知した
 「ねぇねぇ!月嶋くん達〜!一緒に教室まで行こ!」
 女子集団が月嶋達に話しかける。
 た、助かった…これで一人で行ける…と安心していたら
 「は?無理」
 「自分らで行けば」
 「パス」
 三人とも即答…なんで女子集団のところ行かねえんだ!
 「えーそこをなんとか!」
 よし!そうだ!諦めるな!心の中で女子集団を応援してたが…
 「無理なもんは無理」
 きっぱり断った…俺は誘うくせに女子からの誘いは乗らねえのかよ…
 「行こーぜ山本、高橋、佐野」
 …え?結局俺は連れてかれるの?
 「「へーい」」
 女子からの鋭い視線が刺さる…
 やばい…殺される… 俺は三人に連れ去られるようにその場をあとにした。
 「女子たちとは行かないの?」
 「アレは無理」
 アレって…
 あっという間に教室についたどうやら今年は噂のイケメン三人は同じクラスだったらしい。
 教室に戻ると女子からの黄色い歓声が上がった。
 「今年はイケメン三人衆同じクラスなの!?最高じゃん!」
 「お近づきになりた〜い!」
 「うるさ」
 月嶋が女子たちに聞こえる声でボソッと言ってくれた。

 「お前ら席につけ〜」
 望月先生が声をかけ全員席に着く
 この学校治安はいい方なんだよな…校則も緩いし…
 だからこの高校を選んだのだが…何されるんだろう…不安でしかない…
  そして下校時間。始業式なので部活とかは無く今日は玄関が混んでいた。
 と、通れねえ…と悩んでいると
 「お前らどけ」
 後ろから声がかかった。月嶋だ。
 イケメン最優先と言わんばかりに周りは道を開けだした。俺も横に避けようとしたが腕を捕まれ「お前はいい」とだけ言われた。みんなから空気読めと言わんばかりの視線を感じたが月嶋に何をされるのかの方が怖かったため仕方なく通った。

 「ねぇねぇ!佐野…だっけ?今年部活入るん?」そう聞いてきたのは彼女がいるか聞いた高橋だ
 「えっ…今年も…部活はいいかな〜って…」
 俺は中学の頃から帰宅部を貫き通してきた。運動音痴だし美術や音楽の成績は中の下ってところだ。ここの文化部は美術か吹奏楽だけだし…
 「じゃ、今年は陸上部入れ」今度は月嶋が言ってくる。
 「え…で、でも俺…運動苦手だし…」
 「マネージャーやればいーじゃん」
 そう簡単になれるものなのかよ…と思っていたら
 「お前去年幽霊部員してるくせに何言ってんだよ」と山本がツっこむ
 「お前に言われたくねーよ」
 噂に聞いていたところだとどうやら三人とも去年は陸上部に入っていたらしいが全く参加していなかったみたい。
 「で?入るの?入らないの?」
 月嶋が言うと三人の目がこっちを見る
 「入…ります…」
 「じゃ、決まりな!」
 入らざるを得なかった…マネージャーって何するんだ…パシリ?掃除?明日から休もうかな…
 不安すぎる高校生活2年目が始まった…

 そして数日後
 「な、一緒に昼食おうぜ」
 「え」
 「山本と高橋も一緒だぞ」
 「どこに…」
 教室には山本の姿も高橋の姿もない。どうやら先に行ってしまったようだ。
 「屋上で待ってるね」
 「いいの?」
 「もっちーに聞いたらいいぞ〜って!」
 彼ら三人は成績も超優秀で去年の定期テストでは学年TOP3は全てあの三人が取っていたほどだ。おまけに運動神経も抜群。幽霊部員だったということ以外はほぼ完璧なので一定の信頼も得ているようだ。
 でも俺が気になるのは一緒にご飯を食べることだ。なんで俺みたいなのを誘うのだろうか…
 「そっちじゃなくて…俺なんかが一緒に食べていいの?」
 「ダメなのに誘うやつどこにいんだよ」
 そう言われると何も言えない… 
 「それとも一緒に行くか?」
 「大丈夫…」
 月嶋のとなりにいるってだけでなにかされそうだ。
 「そっか、早く来いよ」
 「はい…」
 正直ちょっと行きたくない…俺なんかいても失礼じゃないか?
 
 …でも俺は、断れない性格だから仕方なく屋上へ向かう。そして扉を開けると… 
 「あ、来たー!」
 高橋がこちらを見て手を振ってきた
 「よっ」
 「こんにちは…」
 「早速食おうぜ」
 「はい……」
 「…敬語使わなくていいぜ?これからはタメ口でいいぞ」
 「でも…」
 「タメ口でいいぞ」
 どうやら拒否権はないようだ
 「あ…は」
 「タメ口」
 「う、うん」
 「よくできました〜」
 なんなんだ…
 テンションが高い高橋に、圧がすごい月嶋、俺の方を睨むように見てくる山本。
 (な、なにここ…怖い…)
 「わ!佐野ちゃんの弁当おいしそー!」
 (佐野ちゃん…!?)
 早速高橋はちゃん呼びしてきた。関わったことないはずなのに…
 「作ってもらったの?」
 「いや、自分で作ってる……」
 俺がそう答えると
 「「「マジ!?」」」
 と三人が声を揃えて聞いてくる。
 「うん、変…?」
 「いや?そんなことないと思うよ」
 そう答えたのは月嶋だった。月嶋の方を見るとコンビニ弁当を食べていた。
 「俺料理できる人羨ましい〜」
 「俺も〜!佐野ちゃん料理好き?」
 「え?あ、好きというか……得意で、母さん忙しいから自分で作ってる」
 「そっか〜」
 「山本も料理得意だよな!」
 「別に…」
 「佐野ちゃん知ってる?山本の父ちゃん一流のシェフなんだよ!」
 そうなんだ…初めて知った…
 「な、それ食べてみてもいい?」
 「え?」
 月嶋が急にそんなことを聞いてきた
 「ダメ?」
 「あ…えっと…ど、どうぞ」
 「さんきゅ」
 月嶋は卵焼きをつまむ
 「うっま…どうやって作ったん!?てかなんか入れてる?いつものと違う」
 「カレー粉を少々…」
 俺は卵焼きにカレー粉をちょっといれる世間が美味しいというかは知らないが俺は好きだ。入れすぎるとカレーの味が濃く出るからしっかり量を調節している、だから一番時間がかかる。
 「へー!おもしろ!」
 「俺も食べたい!」
 「ご、ごめん…もうない…」
 高橋はめちゃくちゃがっかりした顔をし、月嶋はもっと食べたいと言わんばかりにしょんぼりしている。山本の方も見るとちょっとがっかりしてるような?
 「明日いっぱい作ってくるね…」
 「ほんと!?」
 高橋が目を輝かせ月嶋も嬉しそうにこちらを見る
 「じゃあ俺と高橋の分も頼むな!」
 「はーい…」
 「誰か忘れてませんかー?」
 後ろを振り向くと怖い顔をした山本が立っていた
 「えーお前興味ないのかと」
 「お前なあ、卵焼きだって作るの大変なんだぞ?隠し味入れてんならなおさらな」
 「でも佐野ちゃんが自ら言ってんじゃん!」
 「そうだそうだ」
 「それでいいのかよお前は」
 「え、あ、まあ…山本さんの分も作りましょうか」
 「いいの?じゃ、頼んだ」
 「山本も食べたかったんだろ〜」
 「素直じゃないねぇ」
 こうなった手前…断れん…そうこうしているとチャイムが鳴った
 「戻ろっか」
 俺がそう言うと月嶋はなにかちょっと渋い顔をしていたがついてきた
 「次国語だからサボっても大丈夫だったのにって顔だな」
 望月先生はそんな風に見られてるのか…
 「留年もめんどいからな、もっちーめったに怒らないけど裏で動くタイプだからな」
 「確かに」
 「じゃ、明日忘れんなよ」
 「あ、はい…」
 結局作るのね、どんくらい作ればいいかな…

 翌日の昼
 「おー!うまそー!」
 昨日言った通り卵焼きをたくさん作ってきた。でも量が多かったから卵がもうなくなったし、いくつか焦がしてしまった。
 「佐野は食わないん?」
 「自分用のも作ったから」
 「そっか!じゃあいただきます」
 三人は早速食べ進める。そして俺は焦がしてしまったものを食べる。
 「ごちそーさん」
 「え!?」
 気づくとパンパンに入れていたはずの卵焼きは1つ残らず消えていた
 「もう食べたの?」
 「昼休憩移動合わせたら30分しかないからね」
 それにしても早すぎやしませんかね…
 そして3人が駄弁(だべ)っている間に卵焼きを食べていると
 「一個ちょーだい」
 月嶋が後ろから卵焼きを取ってきた
 「あ、それ焦げてる…」
 俺の忠告も遅く口の中に入る。
 「ありがとな!」
 「でもそれ焦げてるから…」
 俺がそう言うと
 「別にそんな不味くねえよ、それに人の料理にケチなんかつけるかよ」
 「そうですよね…」
 「それよりお前は食べ過ぎなんだよ」
 そういったのは山本だった
 「ほら、月嶋が食い尽くさんうちに食いな」
 「う、うん」
 そう言われ俺は急いで食べることにした
 「美味かった!ありがとね!」
 ……でもまあ、褒められるのは嬉しい。そういえば今日から部活だっけ、ちょっと楽しみかも……?

 ――そして放課後。ついに部活動が始まった。
 イケメン三人組に目をつけられた俺は陸上部に入ることにした。
 「ちゃんと来てくれたんだ」
 「うん…」
 「お!佐野!どうした?忘れ物か?」
 陸上部の顧問は望月先生らしい。
 「入部希望ですってよ〜」
 そう声をかけてきたのは高橋だ。
 「そうか!珍しいな!」
 「は、はぁ」
 「というか月嶋達が来るだなんてな雪でも降んのか?」
 「まっさか、まだ4月ですよ」
 月嶋たちが望月先生と話していると…
 「え!?月嶋くんたち陸上部入るの!?」
 女子たちだ
 「まじ!?うちらも入ろっかな〜!」
 女子たちが入るなら俺の仕事も減るんじゃないか?どうぞどうぞ!
 「定員オーバーでーすおかえりくださ〜い」
 何言って…まだ入れるよな!?
 「えーでもマネいなそうじゃ〜んうちらがなるよ〜」
 正直そのほうが助かる…
 月嶋が
 「間に合ってます」
 と言いこっちを見た…え?まさか俺じゃない…よな?周りをキョロキョロしているとヒョイッと宙に浮いた
 「な、佐野」
 俺!? そして女子からの冷たい視線が刺さる…なんなら刺されそうだ…そして女子が
 「そんなやつよりうちらのほうがいいでしょ?」と言った瞬間月嶋の表情が変わった
 「お前らより何億倍もマシだあっちいけ」
 月嶋が女子を追い払う。
 「強火担がいていいねえ」
 「ん?それってどういうこと?」
 つい聞いてしまった。高橋はこっちを見て「さあ?」と言った
 「お前らもうはじめっぞ早く来い」
 もうそんな時間か、急がなきゃ。

 「今年から新しいメンバーだ!ということで自己紹介!」
 …え?今なんて?自己紹介!?
 「まず1年から!」
 まずい…自己紹介なんてコミュ障の俺にはだいぶきつい…

 そして1年生の自己紹介が終わりとうとう2年生…
 「…月嶋燈也(つきしまとうや)っす」
 「高橋隼人(たかはしはやと)でーす」
 「…山本宏太(やまもとこうた)っす」
 3人の下の名前は初めて聞いた。というか3人とも適当…まあ部員たちは見惚れてるし望月先生もやれやれといった感じだ。
 「ほら、佐野の番だよ」
 ゲッ、もう俺の番か…
 「え…と、佐野友里(さのゆうり)…です、よろしくお願いします…」
 俺が答えると一瞬シンとして次の人へと回った…何だったんだあの間は…

 ―――そして自己紹介が終わり
 「さて、じゃあさっそく役を決めよう!3年は今年で終わりだから2年からもキャプテンを決めるように!」
 そっか、3年生は途中でいなくなるのか…キャプテンは誰がやるんだろ…
 「じゃあまずはマネージャ…」
 「佐野くんがマネージャーやりたいそうでーす」
 まだ言ってな…
 「お、そうか?じゃあ佐野でいいか?」
 誰か手挙げてくれ…と思ったが月嶋が手挙げるなオーラを放っている
 「じゃあ決まりな!」
 そんなあ…

 「次はキャプテンだな、3年と2年から1人ずつだが…」
 「俺がやりまーす」
 先輩たちはもう決まっているようだった
 「じゃ、3年は小野な」
 
 「誰かなるの…?」
 「俺らになってほしいの〜?」
 「は!?無理!」
 「俺もパス」
 高橋と山本は『絶対嫌』という顔をしている
 でも誰も手を挙げないから時間だけが過ぎていく。
 「じゃ、俺がやるよ」
 そう言ったのは月嶋だった
 「お前できるのか?去年全く参加してなかっただろ」
 「えーできますよ〜」
 「じゃあサボったら腹いせに成績下げてやろうか?」
 冗談っぽいなあ、望月先生嘘つくの下手だから…
 「いっすよ全然」
その言葉におもわず
 「え、絶対嘘だって、望月先生の事だし」
 「俺になって欲しくなかった?」
 そうじゃないけど…と言おうとしたら
 「じゃあ信じるからな!」
 望月先生の声に遮られた。月嶋は「へーい」と軽く返事をした。大丈夫なんだろうか…

 「マネージャーってなにすればいいの?」
 「差し入れとか?」
 とかってなんだよ!やっぱりなにかやばいことを…!?
 「お前、マネージャーをなにか勘違いしてんじゃねえか?」
 「え?なにが?」
 「マネージャーはパシリとかそんなんじゃねえぞ」
 「え?」
 「マネージャーって部員のコンディションとか管理するのよ〜」
 「そうなんだ…」
 初知り…まあ当たり前か
 「パシってほしかった?」
 「そういうのじゃない」
 それならもっと適任がいるだろ…

 「じゃあ今日は他の部活もいないことだし準備運動終わったら校庭を軽く走ろうか!」
 それだけでいいのか…まあ初日から持久走とかよりいいか。
 それに、マネージャーってきっとそこまできつい運動とかはしないはず…
 「それじゃ!校庭2周したやつから部活動終了!」
 その言葉にみんなが一斉に走り出す。
 「じゃあ佐野!これ頼むな!」
 渡されたのは部員の名前が書かれたボードだ
 「帰りに体調チェックしてやってくれ!」
 「あ、はい」
 なるほど、マネージャーって雑用係なのね…ま、運動しないだけいいか…
 
 そして最初に走り終えたのは 
 「よ!マネージャーさーん」
 月嶋か…
 「からだの調子は?」
 「全然ヘーキ」
 「そう、てか速いんだねここのグラウンド広いのに」
 「まあね」
 なんだか自慢げだ。
 「…てか帰らないの?」
 終わった人から帰れるはずなのに月嶋は一向に帰ろうとしない
 「高橋たち待つから」
 なるほど…ところで高橋たちは…
 「え」
 わざとだろってくらいゆっくり走っている高橋と山本がいた。
 「あの2人遅いから待ってような」
 最悪だ…しかも軽く走るって言ってるのに月嶋がとっとと走っちゃったから月嶋以外誰もゴールしてない。
 「ねぇマネージャーさん、マネージャーのお仕事って大変?」
  初日で分かるわけないじゃん…
 「まぁ…走らないし…」
 「そか」
 俺の方見るなよ…ただでさえ話すの苦手なんだから…
 「なんで入ってくれたの?」
 お前が無理やり入れさせたんだろ!という気持ちは抑え
 「月嶋の願いだし…」
 そう答えた
 「へぇ〜、俺のお願いだから入ったの?」
  お願いというか命令だろあれは…
 「じゃあ俺のお願いならなんでも聞いてくれる?」
 なんでそうなるんだよ…!
 「う…うん」
 いいえなんて言ったら何されるかわかんない。それならはいって言う方がマシだ。
 「じゃあさインスタやってる?」
 インスタ。中高生がよくやってると噂のSNSだ。俺は陰キャだし友達も少ないのでいれていない。
 「やってない…です…ご、ごめんなさい」
 月嶋マジかよって顔してる…全員が全員インスタいれてると思うなよ!
 「じゃあインスタの垢作ろ」
 (ええ…)
 「いいけど…インスタ全然わかんないよ?」
 「俺が教えるからいーの」
 そういう問題なのか…月嶋と話していると部員が続々とゴールしてくる
 「あ、みんな…体調は大丈夫ですか…?」
 とりあえずとっとと体調チェックを済ませた。
 ちょうどそこに高橋が来て
 「佐野ちゃん月嶋と何話してたのー?」
 「え」
 「何か話してたじゃーんサボり?」
 サボりはどっちかといえばそっちじゃないか?もはや歩いてたし…
 「こいつがインスタの垢作りたいだってさ〜」
 「えぇ…言ってな…」
 「まじ!?てかやってなかったんだ!」
 だから全員いれてる訳では無いだろ…
 「俺とも交換しよー!」
 「あ、はい…」
 すぐ終わるでしょ…そう思っていたが…
 「フォロバしといてね〜!」
 ふぉろ…なんて?なにそれおいしいの?
 「フォローバック。俺らがフォローするからお前も俺らのことフォローしてねってこと」
 ああそういう事ね…最近の若者の言葉はわかんないな…
 「門の前で待ってるからお早めに」
 「あ、はい…」
 俺は望月先生に報告し、急いで門へと向かった。
 ほんとに俺なんかが関わっていい人たちなんだろうか……