怪しい担任
 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 藤堂所縁(ゆかり)・・・早乙女愛の長女。次女が12年前、敵に轢き逃げされる。
 物部一朗太・・・満百合の父。喫茶店アテロゴのマスター。
 大文字学・・・おさむの父。小説家。

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 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 午後3時。伝子のマンション。
 「ただいまー。行ってきまーす。」
 と、玄関を開けて入って来てすぐ出て行く、おさむに「どっちだよ。と、おさむの父の学は苦笑した。
 EITOはまだ那珂国マフィアと闘っていた。
 おさむは、小学校に上がってから、養育して貰っていた池上病院から離れ、このマンションに両親と住んでいる。しかし・・・。
 「父さん。今度、亡くなった恵先生の替わりに担任になった矢代先生が、やたらウチのこと聞きたがるんだ。帰ってから、話すね。」「うん。」
 玄関で待っている、EITOの新人隊員に、おさむは黙礼し、グローブを手にした。おさむは出て行った。
 大文字伝子は、EITO隊長である。EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す。主に那珂国のマフィアと闘っている。本業は翻訳家だが、たまにしか仕事が出来ない。表向きは、「亡くなった」ことになっている。
 大文字学が、兼業主夫として、小説家をしながら、おさむを育ててきた。
 抜群のセキュリティーシステムで守られてはいても、生身の人間である、おさむはいつも危険と隣り合わせだ。いつ狙われるかは分からない。それで、もう何年も、送り迎えはEITO隊員が行うことになっている。例え忘れ物でも。
 ミラクル9のメンバーは全てを知っている。DDメンバージュニアだから。そして、複数の追跡探知装置をおさむは身に着けている。
 午後4時。モール外の公園。
 草野球が行われていた。ミラクル9の相手は、待ってくれていた。何しろ9人しかいないのだ。
 隣町の草野球チームのケルベロスは、名前とは裏腹に、紳士的だった。
 実は、ミラクル9に女の子がいるから優しいのだ。試合中止の間、猛烈なアタックをしていた。
 ケルベロスのリーダーの杉下は、「予備のグローブ、あった?ベンチにお客さんだよ。お前とこの先生じゃないかな?」と、おさむに言った。
 「あった。じゃ、もう少し待ってて。」おさむは、ベンチに走って行った。
 「何だ、藤堂先生だ。」「おさむ君に確認したいと思ってたら、今草野球やってるのが見えたから、お迎え来てどっか行って・・・早かったわね。家、近いの?ひょっとしたら、お金持ちかな?」
 「うん。お金持ちです。」「ははは。堂々と言ったわね。実はね、君のお父さんとお母さんのこと知ってるの。」「知ってて聞いたんですか?健太郎に。やだなあ。」
 「御免、御免。世間では亡くなったことになっているものね、大文字伝子さんは。すっかり忘れてたわ。先生が結婚していること、知ってるよね。」「はい。」「旧姓は早乙女って言うの。先生の妹が、私と弟の前で轢き殺される事件があったの。お母さんやEITOの隊員が事件を解決してくれたわ。『大文字(だいもんじ)』って珍しい名字よね。それで、昔のこと思い出しちゃって。」
 藤堂の言葉に、隣にいた健太郎が、「なあんだ、母ちゃんに怪しいから調べてよ、って言っちゃった。」と言った。
 「成程ね。おさむが言いたかったのは、そういうことか。『縁は異なもの味なもの』ですね、副部長。」いつの間にか来ていた、おさむの父学と、アテロゴのマスターが笑っていた。
 「どこかで縁が繋がっていたか。そうだ、健太郎。藤堂先生に顧問になって貰えよ。部活みたいなもんだろ、ミラクル9。」
 「光栄ね、よろしくネ、健太郎君、おさむ君。」と、藤堂が言うと、「まだ決めた、って言ってませんけど。」と健太郎が言った。
 「嬉しい。今夜は眠れない、って顔に書いてるわよ。ライバルチームに挨拶に行って来るわ。監督で、顧問になったから。」
 藤堂が走って行くと、満百合が健太郎に鏡を差し出した。
 「え?」と健太郎が首を傾げると、「ホントだ。顔に書いてあるよ、マスター。」と、おさむがからかった。
 「早く試合しようぜ。」健太郎は、元気に駆けだした。
 「正直ですね、副部長。」「そうだな。」
 2人は腹を抱えて笑い出した。
 ―完―