ペナルティ。
 それは、デスゲーム運営本部の作り上げた、運営を罰する専用のデスゲーム会場である。
 当然、ゲームオーバーは死だ。
 運営となって日の浅い四季が作るゲームとは異なり、数十年以上のノウハウをつぎ込んだ、極めて生存可能性の低い場所である。
 
「いよいよ、ぼくの人生も終わりか」
 
 人生を振り返り、しんみりとしていた四季の横に、大きな落下音が響いた。
 四季が音の下方向へ振り向くと、そこにはしりもちをついた花がいた。
 
「はああああああああああ!?」
 
「痛ーい! あ、ダーリ……じゃなかった。四季さん!」
 
「いや、お前、なんで? え?」
 
 四季は、当然の花の登場に驚きを隠せなかった。
 生還を望むはずの参加者である花が、生還のための扉をくぐらず穴に落ちてくることなど、普通に考えればありえないだろう。
 四季は、花の行動が理解できず、何も言えずに口をパクパク動かした。
 
 そんな四季を見て、花は真っ赤にした顔のまま、四季に手を差し出した。
 
「あの! 初めて見た時に一目惚れしました! 私と結婚してください!!」
 
「……は?」
 
「え? あ!? ま、間違えました! まずは、デートからですよね!」
 
 花の発した言葉は、まぎれもなく告白であった。
 花の全身は緊張で震え、言葉が嘘でないことも示していた。
 
 デスゲームを恐れることなく、走り続けていた花の行動の理由を知った四季は、花を凝視し、乾いた笑いを出した。
 
「あは……。あははははは!」
 
「え、えっと?」
 
「こんなやつに負けたのか、ぼくは。こんなやつに、ぼくの汗と涙の結晶が」
 
「あ、あの。四季さん?」
 
 手を差し出したまま、固まる花。
 乾いた笑いを続ける四季。
 
 四季の頭の中に浮かんでいたのは、デスゲームを完成するまでの努力の数々。
 何度も上司に差し戻されながらルールを考え、必死にバイトをしてデスゲームを開催するために必要な資材を揃えた。
 四季にとって、人生で最も多忙な時期だったと言える。
 それが、ただの一目惚れによって無に帰したのだ。
 
 笑いが止まった四季の中には、強い怒りの炎が燃え始めた。
 このままで終われないという生への執着が生まれた。
 だが、怒りを花にぶつけるにも、再び花に挑むにも、現在四季のいる場所では達成できないことは明白であった。
 
「いい……でしょう……! ここから出られたら……デートでも何でも……してあげますよ!」
 
「ほ、本当!? やったー!!」
 
 そこで出した四季の結論は、花と協力してペナルティのデスゲームをクリアすることだった。
 地上に戻り、新たなデスゲームを作り上げ、今度こそ花を殺してやろうと心に誓った。
 
「やってやる! やってやるよ! こんなところで、死んでたまるか!」
 
「す、すごい気合い! そんなに、私とのデートが……。へへ……えへへへへ」
 
 覚悟を決めた四季。
 そして、告白成功に浮かれる花。
 
 二人は同時に一歩を踏み出し、デスゲームに挑み始めた。