「走るか普通!? なんだ、あの女は!?」
 
 四季は、吊り橋を躊躇いなく走って渡った花を見て、目の前の机に両の拳を振り落とした。
 デスゲームの機材は、四季が全て発注している。
 しかし、吊り橋に関しては、腐敗した板を使って吊り橋を作るという業務を請け負ってくれる会社が存在しなかったため、新品の橋に四季が手を加えた。
 四季、初めてのDIYである。
 
 本来であれば板の腐敗もさせたかったが、時間とお金は有限である。
 限られた時間とお金の中で、四季は板に切り込みを入れて脆い場所を作り、プロジェクションマッピングで視覚的に足を置く場所を制限する方法を採用した。
 現在の四季が思いつく限りの最善手。
 結果は、無惨なものだったが。
 
「やばいやばいやばいやばい。次がラストゲームだ。もしも、誰も死なずにクリアなんてされたら、ペナルティは免れない。……こうなったら!」
 
 四季は椅子から立ち上がり、デスゲームのモードをオートモードへと切り替えた。
 オートモードの起動により、以降の司会進行を務めるAIが動き始めた。
 
 四季は、キャビネットから取り出した何かを懐にしまい、部屋を後にした。