「好きです! 付き合」
 
「ごめんなさい!」
 
 放課後の校舎裏。
 一人の男子生徒が、華麗なる失恋を遂げた。
 そして、男子生徒を振った高嶺(たかね)(はな)は、授業を終えた直後のような何でもない顔で、その場を後にした。
 告白されるなど、花にとっては日常茶飯事。
 失恋に悲しむ男子のことなど、いちいち気にしてなどいられない。
 
「花、また振ったんだ」
 
「うん」
 
「どうして? あの人、サッカー部のエースで、顔もイケメンだし」
 
「全然好みの顔じゃないから」
 
 花は、群がって来た友達からの質問攻めを適当にいなしながら、速足で帰路に就く。
 告白されるのが日常茶飯事であれば、振った後の質問攻めも日常茶飯事。
 定期的に発生する面倒ごとから、花はさっさと離れたかった。
 
 しかし、告白を断り続けている花も、決して恋愛に興味がないわけではなかった。
 
「はーあ。どこかにいないかなあ。私の心を打ち抜いてくれるような、王子様みたいな人」
 
 ただただ、誰も花のお眼鏡にかなっていないというだけだ
 花は自分を迎えに来てくれる王子様を妄想をしながら、曲がり角を曲がった。
 
「目標発見」
 
「へ?」
 
 曲がった先には複数の黒服の男が立っており、花は男たちの持つハンカチで鼻と口を押さえられた。
 
「ん!? んー!!」
 
 突然の出来事に、花は必死に抵抗するも、体を強引に抑えられて脱出することができなかった。
 
「んー!! んー……」
 
 次第に、ハンカチに染み込まれた薬品が体に回り、花の意識は奪われた。
 
「目標確保」
 
 眠った花は、近くに待機していた車の中に放り込まれ、どこかへと連れ去られていった。