======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
筒井[新里]あやめ・・・警視庁テロ対策室の警視。同期の筒井と結婚した。妊娠はしていない。筒井の子供は産みたくないから。
矢野警部・・・警視庁テロ対策室勤務。
渡辺道夫副総監・・・警視庁副総監。
芝田管理官・・・警視庁管理官。普段は、久保田管理官と交替で『交渉人』を勤めている。
================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※火事場泥棒(かじばどろぼう)とは、火事や災害などにより混乱したり避難などで人々がいなくなったりした現場での窃盗または窃盗を働く者(泥棒)。転じて、人々が混乱している中で利益を得ること、または利益を得る者。
3月11日。東日本大震災の日。
その2日前。岩手県で起こった大規模な山火事は、2月26日に発生した大規模な火事だったが、漸く『鎮圧』宣言がなされた。
午前9時。中津興信所。会議室。
「成田空港に向かってくれ。事情は後で話す。」
「何だよ、いきなり。」と中津は、兄の横暴に、マルチディスプレイの映像がすぐ切れた後に言った。
興信所メンバーは、すぐに興信所を出た。
午前9時15分。健二の自動車。
こういう場合に備えて、中津は先日6人乗りミニバンを購入した。高崎が運転している。
EITO秘密基地の方で改造され、助手席には、「警視庁またはEITOとのネットワーク」が繋がるタブレットが搭載されている。
GPSで察知したのか、タブレットは助手席のダッシュボード内から自動的に現れ、画面が表示された。
「警察の、成田空港で湯田を確保する作戦に協力して欲しい。湯田は、岩手県の火災の放火犯としてマークされた。警視庁からは、新里警視と矢野警部が向かった。君たちは、警備会社の制服に着替え、湯田が逃亡を図ろうとした場合に、阻止して欲しい。」
「兄貴。空港警察がいるじゃないか。税関を通る前に前に阻止出来るんじゃないのか?千葉県の管轄だし。」
「まだ、逮捕状が確保されていない。それに、『税関職員』にスパイがいる、とタレコミがあった。」
「信用出来るのか?」「元、ビターZだ・・・らしき人物の情報だ。」
「山並郁夫?」「湯田が被疑者らしい情報も提供してきたのは、奴だ。」
「了解。」画面から中津警部の姿が消えると、「警察としては、大っぴらに認める訳にはいかないか。『情報屋』なのに。公子。高峰さんとこの警備会社の制服、トランクにあったな。」「あるけど、警備会社の制服じゃなくて、警備会社の制服のコスプレでしょ。」
「向こうに着いたら、車内で着替えよう、交替で。」と、高崎が言った。
「そ、そうね。狭いから。」と、公子がフォローした。
午前11時。空港ロビー。
湯田が、スーツケースを持って、税関の方向に向かおうとすると、衣類をさっと乱した、観光客風の根津が悲鳴を上げた。
「キャー!!何するのよ!!痴漢!変態!!」
湯田は根津を一瞬見て、ゴクリと唾を飲んだが、自分に不利な状況を悟った。
「どうしました?」と警備会社の警備員風の高崎と泊がやってきた。
「この人、いきなりキスしてきて、スカートをめくり上げようとしたんです。」
湯田は、弁明をする機会を失った。
新里と矢野が来たからだ。
事情を聞いた、『女性警察官姿』の新里は、言った。
「緊急逮捕します。」矢野が、湯田に冷たいブレスレットをかけた。
午後1時。警視庁。『特別取り調べ室』。
チョイナドレス姿の新里が入って来る。いきなり、ドレスのスリットを引き裂き、湯田に言った。
「湯田浩二。今、逮捕状が取れたよ。空港のレイプ未遂は見逃してやる。でも、放火と殺人の容疑に切り替わったから、大人しく白状しなさい。それほど、『財務省』を追われたことを根に持っていたのか。『各大臣』を那珂国のハニトラに加えて、自身も『宅配風俗』を楽しんで来たのに。出世の道を塞いだのは、お前自身の『悪行』だろうが。正直に話さないと、取調中に、現役女性警察官を『レイプした』罪が加わる。弁護士に自白強要は言わせない。その前に、マスコミにリークするから。元エリート官僚、隠し持っていたナイフで現役女性警察官を強姦、って記事。週刊誌も新聞も書くだろうな。お前の身内は、表を歩けないな。」
そう言って、新里はスリップ姿になった。
いつの間にか、書記係の女性警察官は消えていた。
午後3時。警視庁。記者会見室。
副総監と芝田管理官が臨んでいる。
「2月26日に起こった岩手県の山火事は、元官僚湯田浩二の放火、そして、3月8日の強盗殺人は、同被疑者の犯行であることが『自白』により判明しました。同被疑者は、国会で行われていた騒ぎの書類の捏造書類の原本を元財務大臣の八戸塁氏の親類の家に放火して全焼させ、類焼が山火事に発展しました。焼失した書類には、財務省以外の大臣への『指示書』が含まれており、問題は重大です。」
副総監に次いで、芝田が発言した。
「同被疑者は、放火した後、『火事場泥棒』として入った徳井仙吉が、その書類の一部を持ち去るのを目撃、徳井氏の居宅を突き止め、強盗殺人を行いました。徳井氏は万一の場合に備えて、知人に撮影バックアップSDを預け、その知人が届け出たので、内容は重要書類と判断出来ました。」
副総監がまた、口を開いた。
「前代未聞の事件です。夕刻、総理からも記者会見があります。」
午後5時。中津興信所。会議室兼所長室。
「自然災害じゃなかったんだ?奈良県の山火事は、野焼きした人の不注意で延焼したって聞いてるけど。」
中津は、「自然災害にしては不自然だって噂だった。兄貴の話では、那珂国人も絡んでいた。八戸塁氏の親類の家というだけじゃない。わざわざ岩手県に行ったのは、あの山を買収したがっていた、那珂国人がいたからなんだ。だが、直接手を下せない。市橋総理が、土地売買法の大幅な改訂をして、土地転売を困難にしたからな。もうメガソーラーは設置出来ない。そもそも、太陽光発電で地元の電力を賄う為のモノは僅かに過ぎない。『ゼロではない』ってところが、那珂国人の商売のやり方だ。そして、天下りや賄賂は未だに存在する。被疑者は、元財務省職員だ。かつて財務セブンと言われた腕利きだ。アリバイは完璧だった。だが、闇バイトを通じてボロが出た。夏目リサーチのお陰で、アリバイの或る時間その場所にいたのは財務セブンじゃない。別人だって判明した。逮捕を受けて、『替え玉』が証言を翻した。そして、湯田と那珂国マフイアが繋がる証拠が、闇サイトに転がっていた、と告発・通報した奴がいる。」
「闇サイトハンター、山並郁夫か。」と、高崎が溜息をついた。
「火事場泥棒のSNSの投稿を消した者がいて、火事場泥棒は『消された』。だから、ボロが出た。山並は、消した奴を突き止めたんだろう。そして、『高飛び』の情報を得た。山の買収ではなく、空き地なら転売しやすいらしい。空き地は買い取られて、メガソーラーを設置する。那珂国製の粗悪品だ。今度は自治体首長を巻き込む。大金は簡単に手に出来る。」
「新里さんの尋問ってキツいんですか?」「ああ。新里警視用の取り調べ室がある位だからな。どうやって、落すかは、誰も・・・。」
「私は分かるわ。」「私は、前から思っていたわ。」
中津は言った。「何か寒気がするな。」
そして、机の中の風邪薬を飲み、デスクの上の水で流し込んだ。
「所長。私にも。」「僕にも。」
高崎と泊も風邪薬を飲んだ。
女性2人は、トイレに『消えた』。トイレからは、3人の女性の歓声が聞こえた。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
鬼頭平三・・・検察庁検事。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
3月15日。午後1時。裁判所。法廷。
「でも、悪気は無かったんです。殺意は無かったんです。」
傍聴席の中津健二は、隣の高崎に囁いた。
「弁護人に、中途半端に吹き込まれたな。」高崎は頷いた。
「被告人は静粛に。被告人に殺意があったか無かったかは、これから証明されることです。弁護人は、被告人に、よく言っておいて下さい。不規則発言についてもね。」
裁判長の言葉に、弁護人は起立し、「しかるべく」とだけ言って、着席した。
ドラマや映画では、裁判長が木槌を叩いて沈ませるシーンだが、実際の「日本の」法廷では、あり得ない光景である。
検察官は、実は、『本庄弁護士の元カレの1人』で、鬼頭平三と言う名前だ。
有名な時代劇に習って、「オニヘイ」とあだ名される。
目撃者も多く、証人も多いので、張り切っている。
事件は、半年前に起こった。
ある遺族、相続人が親族協議の末、行政書士を通じて『遺産分割協議書』を作成、公文書として裁判所に提出した。
そして、分割手続きとして、メイン金融機関である郵便局に相続人が揃って出掛け、振り込み手続きが行われていた時、利用客の1人が、代表相続人の長男の背中からナイフで刺した。
そこに居合わせたのが、泊と根津だった。
2人は、すぐに被疑者を取り押さえた。
今は警察官ではないので、『私人逮捕』である。
『私人逮捕』とは、犯人の逃亡を阻止する行為であって、警察官の逮捕とは違う。
被告人は、そういう『常識』も知らず、「警察官でもないのに、手錠も持っていないのに」と、取り調べに当たった警察官に喚いた、と中津健二は兄の中津警部から聞いていた。
証人とは、被害者の親族である姉妹、中津興信所の2人、郵便局員のことである。
シフトで当日窓口にいた郵便局員は、古くからの顧客である被害者をよく知っていた。
その郵便局員は、仕事を休んで証人席に立った。
被告人が主張する『口論』は存在しなかった。
中津健二と高崎が調査したところ、被告人と相続人である、被害者の姉婿とは面識があった。というより、『パチンコ仲間』だった。
被害者の姉婿は、被告人に『脅して貯金通帳と印鑑、カードを奪う』ことを依頼した。
郵便局強盗ではあったが、郵便局が脅されたのではなく、利用客の1人が刺される事件となった。
被害者の親族は、傍聴席にはいなかった。
重傷の為、今も入院していたからだ。
中津警部の計らいで、本庄弁護士が時折、親族の相談に乗っていた。
突然、廷吏が入って来て、裁判長に小声で囁いた。
裁判長は、検察官のオニヘイと、被告人弁護人を呼んだ。
中津健二は、スマホに届いたメールを高崎に見せ、退席した。
午後2時半。中津の自動車車内。
中津は、スマホの電話を切った。
「文字通り、命運尽きたな。被害者の姉婿は、偽証していた友人と共に、逮捕された。オンラインカジノもやっていたらしい。被告の罪も傷害じゃ無くなった。被害者は亡くなったんだからな。情状酌量の余地は無いし。」
高崎は、無言で運転した。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
久保田嘉三・・・警視庁管理官。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※このエピソードは、「特命機関夏目リサーチ26」のエピソードから続きます。
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに、中津警部と久保田管理官が映っている。
「『骨格から推定される、この人物は、コウ・ユーユー。10年前にアメリカから帰化して高橋与一になった。運転免許証Aの写真の人物と同一と判定。運転免許証Bの人物は、10年前に行方不明になり、警察に捜索願が出されていて、その後、区役所に失踪届が出された、阿川恭一と推定される。尚、運転免許証Bの更新期限は過ぎている。』以上が、夏目リサーチのシステムが出した答だ。」
久保田管理官の言葉に、「『偽和知事件』の時のように、CIAが調査に来ている時に、始末された、ってことか、兄貴。」と中津健二は中津警部に問い返した。
「南部興信所の幸田所員が拾った、分厚い運転免許証から色んなことが分かったんですね。ドライバーはCIAの潜入調査員で、10年前に日本人になった。運転免許証Aは、日本で発行されたものなんですか?」と、高崎は久保田管理官に尋ねた。
「うむ。高橋与一の運転免許証データはない。恐らく、交通取締等の時は、阿川の方、つまり、運転免許証Bを出していたのだろう。よく見ると、非常に顔がよく似ている。そして、例えばマンションの賃貸契約などをする場合、運転免許証Aを使って、使い分けていた。」
「幸田さんが拾ったのは、偶然ですかね?まあ、赤信号を突っ走ってきたのなら、予め幸田さんのクルマのナンバーを知っていて、追い掛けたことになるけど。」と、泊が呟いた。
「残念ながら、偶然だな。御堂筋線でも交通事故があり、幸田所員達は迂回して北上していたんだ。ただ、ブレーキに細工されていたから、危険を感じた高橋は、窓から運転免許証を捨てたことになる。軽四が衝突して、警察官にすぐに渡らないように、だ。」
「アメリカ映画みたいね。」と公子が言い、根津も賛同した。
「高橋は、どこに潜入していたのかしら?ダークレインボウ?」
「違うだろうね。あきちゃん、何で中津興信所に依頼が来たと思う?当てたら、パンケーキ、あげようか?」
「敬一。子供みたいな扱いしたら、パワハラでセクハラよ。」と、トイレから出てきた本庄が言った。
ここのトイレは、トイレだけでなく、秘密の出入り口でもある。
「2枚の運転免許証は、何故かラミネートされていた。運転席から掘り出した時の衝撃で、剥がれやすくなった。パウチと違って剥がれやすいんだ。で、運転免許証Aの裏側にあったフィルムだが、特殊なものだった。フイルムの上に『悪戯書き』したんじゃない。コーティングされた『内側』に描かれた模様だった。ナイフガンナイフの模様ではあるが、ダークレインボウの直接関与ではない。何らかの特殊な秘密があるに違い無い。このフィルム加工だが、大阪堂島の会社でも扱っていたが、記憶にない、と言う。そこで、東京にあるフイルム加工の会社を3社、紹介して貰った。高橋の写真を持って、高橋が依頼に来たかどうかを確認して欲しい。回りくどかったが、それが依頼だ。」
マルチディスプレイに、3つの会社がマーキングしている地図が映った。
「1軒目は、宇都宮特殊フィルム東京支店、2軒目は、錦糸町フイルム総括有限会社、3軒目は、東京KKフィルム加工。切迫している訳ではないが、調べてくれ。高橋を犬死にさせない為にな。それと、警視庁から陸自、米軍を通じてCIAに照会したところ、突然消息を絶ったまま、だった。驚いたことに、阿川もCIAの捜査員で、報告によると、既に殉職しているそうだ。」
中津警部の言葉に、「双子?」と本庄は反応した。
久保田管理官は、頷いた。
「戸籍データを改めて調べて、分かったよ。『他人のそら似』でも『整形なりすまし』でも無かった。」
マルチディスプレイから2人が消えると、手分けして『6人』で調べることが決まった。
午後5時。東京KKフィルム加工。
高崎は、電話で中津警部に報告した。
「ここで、目撃されていました。たまたま定年退職した元社員が、高橋が『死んだ娘のイラストを残したい』と言ったので、加工を引き受けたそうです。その社員にも、電話で確認が取れました。残念ながら、原稿のイラストは、当人が持ち帰ったようで現存しません。」
「了解。高橋が、ダークレインボウと関わりのある組織に潜入していたことが確立しただけでも上出来だ。」
「警部。まだ、あります。」「何だ?高橋は、こういうものも、フイルムに貼れるのか?と端が欠けたマイクロSDを見せたので、『試し打ち』したそうです。そのフイルム貼ったミニSDも持ち帰ったようです。」
「保険か。」「え?そのSDカードこそが、狙われた理由だよ。ガサ入れのやり直しだな。ご苦労様。」
電話を切った高崎は、中津所長にも報告した。
「成程。直帰してくれ。あとで商品券渡すから、カミさん孝行してやれ。1000円の商品券だけどな。10万円じゃない。」
高崎は、首を捻りながら、電話を切った。
「どうしたんです、先輩。」と泊が尋ねると、「なんか、ご褒美くれるってさ。」と高崎は答えた。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
橘なぎさ一等陸佐・・・EITO東京本部副隊長。結婚したての時に、夫は戦死した。つい先日、オスプレイのパイロットとしてアメリカの空軍から出向中のロバートと婚約をした。
宮田元准教授・・・感染症の研究家。EITOに救い出されてから、ヒットマンに狙われない様に、中津興信所地下にあるシェルターで研究をしている。
蛭田教授・・・毒の権威。普段は、池上病院の泌尿器科の医師をしている。院長の好意で、研究室を持っている。
天童[須藤]桃子医官・・・陸自からEITO東京本部に出向している。50年越しの恋を実らせ、天童晃と結婚した。
本郷隼人・・・EITOシステム部長。普段はEITO秘密基地に常駐している。
原田警部・・・普段は、EITO東京本部の司令室勤務。闘いの時は、後方支援として、敵のカメラを回収、折りを見て映像を解析している。
一ノ瀬悦子・・・なぎさが嫁いで、殉職した一ノ瀬孝の母親。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後3時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに、中津警部が映っている・・・のでは無く、秘密の出入り口から入って来た。
「珍しい客人だろ。」後には、橘なぎさが立っていた。
なぎさは、いきなり皆に土下座をした。
「お願いします。探して下さい。」
「誰をです?」「健二。人じゃないんだ。モノだ。日記なんだ。」
中津警部は、経緯を話した。
池袋署から出てきた警部は、呆然として立ち尽くしている、なぎさを発見した。
取り敢えず、自分の車に連れて乗った警部は、重大な落とし物をした、と言うなぎさに驚いた。
こんな女性らしさがある人物とは思っていなかった。
いつも、EITO東京本部副隊長として凜としていたからだ。
「一ノ瀬の家に忘れ物を取りに行ったんですけど・・・気が付いたら、池袋駅で。」
「電車で行ったんですか。」「ええ。いつもプライベートはバイクで移動するんですけど、故障中で。今、ここの裏にある秘密基地で修理して貰っています。それで、『ときわ台』の駅に行って、トイレを借りて、電車に乗ったんですが、乗っていた間の記憶がないんです。」
「それで、極秘裏に探したいって言うから連れてきたんだ。本来の仕事だから嬉しいだろ?」
「兄貴。本来の仕事じゃ無いし、別に嬉しくはないよ。で、失ったモノは?日記って、業務日誌ですか?陸自の?EITOの?」と、健二は、なぎさに尋ねた。
「いえ。プライベートの日記です。表に『おねえさまと私』って書いてあります。」
『おねえさま』とは、大文字伝子のことに違い無い。EITOの要職だが、出逢った頃の呼び方を止めない。皆、黙認している。他にも『妹』がいることも関係する。
大文字伝子と『生死の境目』を越えた、仲間、つまりは『義姉妹』の契り(誓い)を交わしたから、絆は深い。
「じゃ、公子と根津は、ときわ台駅のトイレに行け。高崎、駅に忘れ物の届け出がないから確認。泊は、『忘れ物センター』に搬送中かどうか確認してくれ。」
健二は所長らしく、てきぱきと指示を出した。
そこへ、宮田元准教授が顔を出した。
騒いでいるから、何事か、と思ったのだろう。
話を聞いた宮田は、内科の医師がやるような、簡単な検査をした。
「何か、ショックになるようなことは無かったですか?舅姑さんとは仲が良かったと聞いていますが。」「いいえ。笑顔で出迎えてくれて、笑顔で送ってくれました。」
警部にスラスラと答えるなぎさを見て、「何かの薬物の影響かな?一時的な記憶喪失の場合、薬の副作用の場合があるんです。」
健二は、EITO用の内線で本郷を呼び出した。
「分かりました。理事官や大文字さんに内緒にしたいなら、取り敢えず須藤医官に来て貰いましょう。」
半時間後。須藤医官が、EITO東京本部からEITO秘密基地にやってきた。オスプレイを動かす訳にいかないので、原田警部がバイクで送ってきた。
「確かに。宮田先生の言う通り、薬物の影響かも知れない。こんなぼうーーとした副隊長は見たことがない。」
今度は、秘密基地のマセラティを駆って、本郷が池上病院になぎさを連れて行った。
池上病院には『毒の権威』の蛭田教授がいるのだ。
原田がバイクで、なぎさ、本郷、宮田、中津警部が、マセラティで池上病院に向かった後、次々と連絡が入った。
東京の忘れ物センターには、搬送中の日記らしきデータがない、ということだった。
ときわ台駅からは連絡が無かったが、公子達から連絡が入った。
「今、駅周辺は『異臭騒ぎ』でごった返しているわ。トイレには近寄れない。異臭元がトイレだから。今、新里警視に代わるわ。」
「新里です。時期が時期だから、サリンかも知れない、って騒いでいる。事件の日はもう過ぎているけど。」
午後5時。池上病院。蛭田教授の研究室。
普段は、泌尿器科の医師として活躍しているが、蛭田教授は池上病院院長の大学の先輩で、大学を追われた後、医師として採用、本来の研究が出来る様に、池上院長は、密かに研究室を用意した。
池上家は池上病院に隣接しているが、その反対側が池上病院院長の池上葉子の実家だった。
その跡地を開放したのだ。
「えらいことになった。須藤さん、院長。一佐の衣類に付着していた液、EITO大阪支部が関わった事件で採取された液、ときわ台駅で発見された液は一致する。これは、ビールスの水溶液だ。毒性がある。気化する最中に、詰まり、エアロゾル化した時に感染する。人から人へは感染はしないが、感染した者は一時的に体が麻痺する。マスコミに知られない内に、感染させている者を捕まえなくてはいけない。それは、EITOの使命だな。一佐。日記のことはどうでもいい。隊長に、おねえさまに報告しろ。」
蛭田の言葉に、なぎさは言葉を失った。
「私が弁護してやる。罪を感じることはない。」と、須藤医官は、なぎさの肩を叩いた。
「それで、先生。解毒剤は?」と本郷は、蛭田に尋ねた。
「可能だ。既にあるものを組み合わせればいい。どこの病院でも量産出来る。そして、予防策は、通常のビールスと同じ。手洗い、うがいだ。宮田先生。化学式書くのは得意ですよね。」
蛭田は、宮田を振り返って言った。
「多少は・・・。」と、宮田は苦笑して返した。
午後7時。中津家。
ざる蕎麦を食べながら、公子は健二に尋ねた。「それで、日記は?」
「一ノ瀬の家にあったよ。一佐のアパートに郵送したそうだ。取りに行って忘れるなんて、暢気な嫁ね、って笑ってた。」
「じゃ、ときわ台の駅トイレ探しても無駄だったんだ。」「ああ。『おねえさまと私』って日記、実は、空想日記だったそうだ。公子にも経験ある?」
「ああ。小学校の時に書いたわ。ベッドで教えてあげる。それから、大学、辞めたから。」
健二は、言葉を失った。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午後3時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに、中津警部が映っている。
「健二。みんな。この男に見覚えないか?」
マルチディスプレイの隅に、男の写真が映った。
「この写真は、運転免許証の写真だ。」
「警部。その写真の男なら、玄関をどんどん叩くから開けたら、入って来た、『飛び込み依頼』の客ですよ。」と、高崎が言った。
「ウチは、表の看板の横に書いてある通り、『紹介のない依頼』はお断りしていますので、って丁重にお断りしたんだけどね。用意してある、『興信所地図』を渡して。」と、健二は言った。
たまに起こる事象の為、依頼を断る替わりに、他の興信所を紹介している。
他の興信所それぞれに連携は取っていないが、大抵は、仕方無いな、と諦める。
「ところが、折角来たのだから、話を聞けって煩いの。話を聞いたら依頼を引き受けることになるので、ご了解願います。話を聞いたら興信所には『守秘義務』が発生して、個人情報を共有することになりますので。ウチは、実は弁護士事務所の下請けだから、一般の依頼は受けられないんです、って言ったんです。」
「なかなかいい答だが、最後のは言わない方がいいかもな、公ちゃん。で、彼は納得した?」
「訴えてやる!ですって。はあ?って、感じ。」と根津が言った。
「成程な。これで分かった。実は、この男は、酒場で口論の末、他の客を刺し殺してしまった。店の包丁でな。で、所持品に、その地図があったんだ。喧嘩の理由は、他の客や店の従業員の話によると、些細なことだった。健二。この際だから、正式に他の興信所の了解を取ったらどうだ。他の興信所に取っては、『タダで宣伝』して貰うことになる。連携理由は、今、公ちゃんが言った通りでいい。弁護士の紹介以外は依頼を受付けられない、って。」
「分かった。因みに、些細な事って?」「大阪・関西万博に行ったかどうか、だ。指された相手は、行く気がしない、と答えた。被疑者湯田英介は、ネットでチケット買って、行って来た。で、誰彼構わず自慢した。友人によると、反応が薄いとむくれたそうだ。まあ、関西以外の人間にはチャンスが無いと何度も行けないだろうしなあ。被害者は、関西出身で、1970年の万博には何度も行ったそうだ。前評判も良く無かったし、昔行ったから、別に関心は無かったらしい。すまんな、『忙しい』ところ。地図に載っている興信所の人間は誰も知らない、と言うから、『足取り』していた刑事から問い合わせがあったんだ。」
マルチディスプレイが消えた時、泊が本庄弁護士と帰って来た。
「これ、大阪土産。公ちゃん、お茶出して。」
「大阪土産って、これ、京都のお菓子ですよ。」
「大阪帰り土産。何か白けた?」
「お茶、出しまーす。遅いおやつですね。」と、根津は奥に消えた。
「1970年・・・55年前か。まあ、関心無い人多いかもな。特に関東人には。」と、高崎が呟いた。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※このエピソードは、「こちら中津興信所65」「特命機関夏目リサーチ27」のエピソードから続きます。
【「こちら中津興信所65」のあらすじ】
中津興信所は、当地に新しくオープンした際に「一見さんお断り」として、中津警部夫人になった本庄弁護士の紹介あるいは中津警部からの警視庁からの依頼以外は受けないことになっていたが、たまに「飛び込み依頼」を言ってくる人がいるので、『興信所地図』を渡して、遠くない距離の他の興信所を紹介していた。それで、先日も、ゴリ押しする男の依頼を断っていたのだが・・・。
【「特命機関夏目リサーチ27」のあらすじ】
秘密裏に、警視庁テロ対策室の依頼を受けた案件で、痴漢騒ぎがあり、痴漢がえん罪であることは、たまたま居合わせたも元鑑識課の井関民恵と元EITO隊員のあかりの証言で証明され、被疑者被害者共に解放された。しかし、CIAからのデータと照合すると、不審な被害者女は、ジュディー・オーランドという二重スパイだった。一方、えん罪被害者と思われたサラリーマンは偽名で、本物はその時議員会館にいた政務官だった。
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに中津警部が映っている。
「結論から言おう。先日興信所を訪れた男は、「振り」の客、「一見さん」じゃない。そこがEITO秘密基地の「縄張り」だって知ってるよな。」
中津の言葉に、「兄貴。縄張りって性格が出た言葉だな。EITO秘密基地が大家さん。俺達は、「店子」だろ?」と、健二所長は抗議した。
「すまん。要は、防犯カメラで守られている、と言いたかったんだ。その男のことだが、お前達が親切に渡した地図に載っている興信所の者は知らなかった。それは、実際は行かなかったからだ。その男は、どこでも引き受けてくれるものと思っていたから、腐っていた、本来の『依頼』は『遺産相続』に関してだが、夜、大阪・関西万博の件で障害事件を起こしてしまったが、酒場に行くまでに色々と立ち寄っている。そして、お前が提携した、他の興信所に共通の『依頼者』が浮かんできた。EITO秘密基地の防犯カメラによると、お前達が押し問答をしているのを観察している男がいた。不審だと思わないか?」
「ウチの様子を伺っていたのか。その男を通して。」中津は憤慨した。
「うん。他の興信所連中に、切り出した防犯カメラからの写真を見せたら、変装しているが似ている、と言うんだ。軽く口止めしておいたがね。」
「警察権力か?」
「まあ、そう言うな。今、観察男の『人相』を夏目リサーチに割り出して貰っている。
何故か?報せが行ったとは思うが、電車で痴漢騒ぎがあって、たまたま居合わせた井関さんの奥さんやあかりさんの証言で、えん罪は証明されたが、痴漢騒ぎは、明らかに『グル』でやったことだ。被害者のオンナは、夏目リサーチで調べると、錦糸町のネットカフェに入る所のデータを発見、CIAでお尋ね者の二重スパイだった。目下、指名手配中だ。一方、被害者である筈の男は偽物で、本物はその時議員会館にいた。本物は政務官だ。これは、俺のカンだが、『中津興信所』の秘密、日本の捜査能力の程度を探っていた、と考えられる。オンナが二重スパイってことは、『あぶりだし』のノウハウがあるのかも知れない。それと、観察男は偽痴漢被害者だ。駅の防犯カメラは一時的に撮影不能だった。」
「お義兄さん、私達危ないの?」公子が叫んだ。
「いや、今は心配ない。飽くまでも秘密捜査の進行中、ということだ。」
画面の中で、警部の頭を小突く者がいた。
「何、かっこつけてるのよ。いつものことだけど。皆は、いつも通りにすればいいのよ。」と本庄が言った。
「その通り。」
高崎や泊は、まだまだ、事件が連鎖していくのでは?と懸念した。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
大文字伝子・・・EITOや久保田管理官を通じて、普段から連携している。元々は翻訳家。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。普段から伝子に「クソババア!!」と言われている。
井関民恵・・・警視庁鑑識課井関権蔵の妻。元鑑識課員。
井関[新町]あかり・・・元EITO東京本部隊員。警察から出向していたが、井関五郎と結婚後、隊員も警察も辞めている。
高峰圭二・・・元刑事。退職してから警備会社に再就職。嫁の妹みちると共に闘う伝子やEITOの協力者になった。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前11時。あるスーパー。
「だから、謝りなさいよ。もう大人でしょ。」
「うっさい、クソババア!!」
「その一言が余計なのよ。撤回しなさい!」
「老いては子に従え、って言葉、知らないの?」
「この場合は、当てはまらないでしょ!!」
ある家族が、買物帰りに、突然出入り口付近で始まった親子喧嘩に恐れをなし、他の出入り口に向かった。
このスーパーでは、3つの出入り口があるのだ。
2つ目のスーパー出入り口に向かった親子だったが、ここでも嫁姑喧嘩が始まった。
「それが嫁の取る態度ですか!すぐに離婚させます。」
「あなたにそんな権限はないわ。婚姻届離婚届は夫婦間で・・・。」
「だまらっしゃい!!婚姻届を役所に出したのは、私よ。とにかく、ここに土下座しなさい。」
「土下座ああ。パワハラだわ、ワイハラだわ。貴方たち、見たわよね、この傲慢で高飛車な姑を!!」
家族は、また回れ右をした。
3つ目の出入り口に向かうと、今度は痴話喧嘩が始まった。
「だからあ、ペットを飼う余裕なんかないだろう?確かに、あの犬は可愛い。でも、誰が面倒見るの?共働きだよ、ウチは。」
「どうにかなるわよ。私のお友達の家んあか2匹も飼っているのよ、2匹。私は1匹でいいのよ。」
家族の子供達が、両親を見て困った顔をした。
「お困りですか?」
やってきた警備員がそう話しかけ、自動翻訳機で那珂国語に翻訳した。
母親がいち早く反応した。
「どの出入り口でも喧嘩していて、外に出られない。日本って野蛮な国ね。早く帰らないと、『フライト』に間に合わないわ。」
自動翻訳機が母親の言葉を日本語に翻訳した。
「それはお困りでしょう。どうぞ、こちらへ。警備員室から従業員出入り口を通じて外に出られます。」
自動翻訳機は、警備員の言葉を那珂国語に翻訳した。
一行が警備員室に入ると、警官隊と1人の男が待ち構えていた。
「ダメだな、欲を出しちゃあ。、車のヤクは応酬したよ。あ、日本語分かるよね。ワンさんと、『お仲間』達。荷物も、まとめて改めさせて貰うよ。」
一家は逃げようとしたが、全員に手錠がかけられた。
連行されて行く一家に、中津警部は言った。
「野蛮なのは、オタクら民族と、一部の売国奴の日本の政治家だけさ。日本は『民主主義国家』なんだよ!!」
駐車場からパトカーと押収した『盗難車』が出発すると、中津興信所の面々と大文字親子、井関和子・あかり、それに高峰圭二警備員がやってきた。
「流石、大文字さんね、よく緊急で『役者』を揃えてくれました。」と、本庄弁護士が代表して言った。
「いや。一番の功労者は井関さんとあかりでしょう。私達は、普段から喧嘩してますから、台本無し。」と、大文字伝子は笑った。
突然、スマホの着信音が幾つも鳴りだした。
やはり、皆忙しいんだ、と中津健二所長は思った。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※このエピソードは、「大文字伝子が行く337」または「大文字伝子の冒険376」から、お話を引き継いでいます。
午後5時。会議室兼所長室。
マルチディスプレイには、中津警部が映っている。
EITOの日比谷公園での闘いを経緯の連絡をすると共に、中津警部は皆を労った。
「高遠さんからも丁重にお礼を言ってきたよ。」と健二は言った。
「身辺警護は我々が担当したが、フォーラムの周囲は物部さん達がカバーしてくれたお陰で、何の混乱も起きなかった。南原さんが映した映像と泊が映した映像は警視庁から夏目リサーチに送る。」と警部は伝達した。
「所長。一佐に案内文を渡した男、絶対怪しいですよね。所謂『枝』かも知れない。」と、高崎が言った。
「うむ。そのためにも『面割り』が必要だ。」
「ただいまー。」と、言いながら、本庄がトイレのドアを閉めて入って来た。
ここは、『防犯上』トイレが『通用口』になっている。
「公ちゃん、これ花瓶に生けといて。」と、カーネーションの花束を本庄は公子に渡した。
「何です?」と健二は本庄に尋ねた。
「今日の法廷。被告人に反省を促す為に検察側が用意したのよ。花自体は持ち込めないから、廊下に花束並べて。写真を被告人に見せてたわ。被告人のせいで、被害者はカーネーションを普通に母親に贈れなくなったって。」
「ふうん。効果あったんですか?」と根津が言うと、「それがね、傍聴人から啜り泣く声が聞こえると被告は泣き出して、『罪を償います。私が悪いんです。むしゃくしていたからといって殺人をして言い訳はありません。』って言って。裁判長も目頭押えて。裁判長は『純粋な日本人』だから。」と、本庄は応えた。
「まるで、ドラマだな。人の命は尊い。我々の意見の一致するところだ。今日の闘いは、闇サイトハンターの情報があったから、最大限の対処で迎え撃つことが出来た、と理事官も喜んでいたが、パラ・リヴァイアサンは、闇サイトで釣り上げた若者達の三輪バイク全てに爆発物を仕掛けてあった。リーダー役の三輪バイクすらだ。若者達は皆殺し、エマージェンシーガールズは爆風で死傷者を出す。それから、マスコミに火を点ける算段だったのかも知れない。」
「確かに、兄貴の言う通り、人の命は『道具』じゃない。今までで一番残酷な相手かな?我々が国際フォーラムに行かなければ、あそこでも被害者が出たかもな。」
「これから、踊らされた若者も、充分反省して貰わないとね。」と、言って、本庄はまたトイレのドアを開けて出て行った。
今度は、「本当の」トイレらしい。
―完―
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津と事実婚だったが正式に結婚した。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。EITO東京本部の馬越と結婚した。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
久保田嘉三・・・誠の叔父。警視庁管理官。交渉案件があれば「交渉人」の仕事もする。EITO初代指揮官。
村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。
筒井[新里]あやめ警視・・・警視庁テロ対策室勤務。
山村美佐男・・・伝子と高遠が原稿を収めている、みゆき出版社の編集長。
高島軍平・・・フィットネスHTC富山勤務。大文字伝子の後輩。
富田・・・フィットネスHTC富山社長。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前9時。会議室兼所長室。
マルチディスプレイには、中津警部が映っている。
「ああ。堪らんなあ。82歳のお婆ちゃんが、82歳のお爺ちゃんをネクタイで首締めて殺したなんて。」
「今朝の新聞に載ってるね。で。それが何?不審な点があるから、調査しろって?」
「健二。いつから超能力者になったんだ?その通りだよ。2人はな、健二。みゆき出版社の山村編集長の通っているフィットネスの会員なんだよ。知ってるよな。」
「知ってるよな、って、いつもうどん屋の割引券や蕎麦屋の割引券貰ってるじゃ・・・兄貴。それ、目当てで引き受けた?」
「やっぱりお前は超能力者だ。」「推理だよ、推理。」
午前11時。フィットネスHTC富山。応接室。
山村編集長が、富山に高崎と泊を改めて紹介した。既に愛宕警部も到着していた。
「前にオンラインレッスンの時に殺人事件が起きたので、全て予備のサーバーに録画をしています。それと、任意ですが、会員のお宅に防犯カメラの設置をお願いしてあります。」
「編集長。倉敷さんのお宅は?」と愛宕が尋ねた。
「それがね、警部。一昨日設置したばかりなの。私の知り合いの工務店だから、私も立ち会ったわ。」「場所は?」「聞かれると思って、用意してきたわ。工務店さんが作った見取図よ。」「じゃ、警視庁に送ってください。」
「でも、なんで大事になってるの?」「実は、マスコミには戒厳令を敷いてありますが、似たケースの事件が神奈川県警下で起こっているんです。それに、被疑者の倉敷智寿子さんは、全くしゃべらない。ネクタイの指紋は、被害者の、夫の誠さんと智寿子さんだけ。ネクタイは状況証拠です。」
「じゃ、警部。我々はカメラのある現場に向かいます。」
高崎と泊がエレベーターに向かう途中、怒号が控え室から聞こえ、高島と富田に罵声が浴びせかかる様子が見えた。
恐らく、また殺人事件が起きたので、退会するのだろうな、と高崎はぼんやり思った。
午前10時半。西東京市。倉敷家。
到着した泊が、高崎に言った。
「ここ、遠くないですか?」「ああ、遠いな。だから、引っ越した後もオンラインレッスンを続けた。警部からのメールによると、レッスン中、2人は襖の向こうに途中退席している。6分30秒だ。そして、1人で帰って来た智寿子さんは、ぼうっと座っていた。別れよう。」
2人は、黄色いテープの前で張り番をしている巡査に名刺を見せ、山村から渡された見取図の場所に行き、3台のカメラごと録画SDを回収してきた。
午後1時。警視庁テロ対策室。
新里が、回収してきた録画と、神奈川県警から送られてきた録画を再生した。
「似てますね。警視正。」
村越は唸った。
「神奈川県警の案件は、夫婦が娘さんとスマホのテレビ電話の最中に来客があって、中座したんだが、いくら経っても繋がらない。不審に思った娘さんが訪ねると、無理心中らしき遺体を発見した。山村編集長が愛用しているフィットネスの案件は、6分30秒の空白時間がある。状況としては、夫人がネクタイで絞め殺したように見えなくもない。フィットネスは元々外科クリニックの併設で、オーナーは院長だ。山村さん経由で夫妻が通院していたなら、カルテがある筈だから、問い合わせてみた。夫人は、ネクタイを普通に締める握力はあっても、絞め殺す程の握力はない筈だと言っている。更に、現在通院している病院の院長も同じ答を返してきた。」
「明らかに、同一犯人または同一犯人グループによる犯行です。」
久保田管理官と中津警部が入って来た。
「見るに見かねて、というところか。警視庁宛のメールに『闇サイトハンター』からの『タレコミ』です。『汝の隣人を殺めたまえ。』という闇サイトの募集が数日前、あったようです。」
「財産ですかね。両家とも、『生前贈与』で揉めていた。夫婦が喧嘩をしていた、という倉敷さんの隣人の資産状況を調べてきました。健二。倉敷家は塀が高いそうだな。」
中津警部の質問に、「泊達がカメラを回収してきた時、カメラは必須だったな、と言っていたよ。」と健二は応えた。
事件は急展開した。
倉敷智寿子は、元々軽度の認知症を患っていた。
被疑者の上条仙吉は、2人とも殺そうとしたが、事態が把握出来る状況でないことで、放置した。
もう1人の被疑者、上条英一は、やはり隣人を狙っていた。
隣人の大和家には防犯カメラがなく、立派な植え込みがあった。
兄弟は、時間を合せて決行した。
だが、アリバイ作りは不要だった。物音に気づいた家人が出てきた所を一気に殺したが、直前の時間が判明していた。倉敷夫妻が参加していたオンラインレッスンと、大和家の娘のスマホだ。そして、倉敷家の防犯カメラで仙吉の下半身が映っていた。
被疑者兄弟の素行は、中津興信所の聞き込みで明らかになっていた。
午後4時。中津興信所。会議室兼所長室。
山村編集長からの差し入れの蕎麦を啜りながら、公子が言った。
「いいドライブになったわ。悪い事は出来ないものね。近所の奥さん達、簡単に話してくれたわ。女性警察官だったら、こうは行かないわ。あ。あきちゃん、元女性警察官だったっけ?」
「知ってて言ってるでしょ。あなたあ、パワハラされたあ。」
「ウチは、みんな仲良しだな。」と健二が言うと、トイレから尚子が出てきた。
「呼んだ?」
「呼んでなあい。」
期せずして、皆は唱和した。
―完―