======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
 中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津興信所と南部興信所の契約弁護士だが、中津警部と結婚、より中津興信所と関係が濃くなった。
 柴田管理官・・・警視庁交渉人。
 エマージェンシーガールズ・・・実は、愛宕みちる。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 午後1時。モール。シネコン映画館。
 中津達は、喫茶店アテロゴのマスターから貰った、割引券で映画を観ていた。
 いや、観ようとしていた。
 CMや案内映画が終った後、突如として、舞台に男達が現れ、その1人が、舞台上から映写室に向かって発砲した。
 「おい。ライトを点けろ。」
 天井灯が灯った。
 昔の機材もあるが、昔と違って、映写はコンピュータによる自動制御で映し出される。
 万一の場合に備えて、係員が常駐する。
 今が「万一の場合」だった。
 貫通はしなかったが、映写室に拳銃の弾は刺さった。
 「どうやら、舞台挨拶じゃなさそうだな。俺の好きな女優なのに。」と、中津健二が言い、DDバッジを押した。
 DDバッジとは、元々は「陸自バッジ」というバッジで、災害時の救助等に使用するものである。
 大文字伝子のグループが、度々災難に陥るので、EITOが再開発、関係各所に配られた。
 中津興信所の面々も全員持っている。
 所持者の位置情報が一元管理されている他、救助信号、即ちSOSを発信出来る。
 すぐに届いている筈だ。EITOには直接救助は依頼出来ないが、EITOを通じて警察に「110番」出来る。
 尤も、映写室のスタッフが事務所を通じて警察に通報はしている筈だ。
 「男達はいい。女達は、前へ出ろ。」
 公子、本庄、根津は躊躇わず、舞台に移動した。
 「既婚者だけどいいかしら?レイプする積もりなら、選び直してもいいわよ。」と、本庄は言った。
 「人妻も悪くないな。」と、下っ端らしい男が言った。
 減らず口の男の他のメンバーが、タブレットで3人の女性を映した。
 どうやら、New Tubeのライブ中継のようだ。
 そして、リーダーの男が本庄に紙片を渡して、「これを読むんだ。」と、言った。
 本庄は、呆れた内容の紙片を、わざと『棒読み』した。
 「内閣総理大臣市橋早苗さん。私たちは、あなたが総理を継続したことで、今、命の危険に晒されています。すぐに退陣して下さい。」
 「復唱しろ。」根津と公子は仕方無く「すぐに退陣して下さい。」と言った。
 「1時間待つ。すぐに退陣しろ。」
 「言ってることが、めちゃくちゃだ。」
 中津のスマホが鳴動した。
 「今、迎えを送ったから、時間稼ぎをしろ。」中津警部からのメールだった。
 中津は高崎と泊にメールを見せた。
 「判った。総理とは親しいんだ。今、メールを送った。犯人の要求を呑んで、大人しく退陣してくれ、と。」
 「お前、誰だ?」
 「人質の1人の夫だ。俺も、恋女房を失いたくない。信じてくれ。俺からもお願いするから。」
 「どうだろう?女3人人質だったら、『女性擁護団体』から、『いつも人質が女だ。男尊女卑だ』って言われるぞ。俺達3人が人質になるよ。ロープ、持ってるんだろう?拳銃も持ってるし。今の内に『人質交換』しないか?」
 男達は、協議をした。
 女達は、開放され、中津と高崎と泊は、強盗に縛られた。
 「待たせたな。」
 言いながら、入場した者がいた。エマージェンシーガールだった。
 そのエマージェンシーガールは、あっと言う間に拳銃を持った犯人に構わず、トンファーを振り回して、強盗を倒した。
 エマージェンシーガールは、何故かコンパクトを出して、身繕いした。
 実は、コンパクトの中は『通信装置』だ。
 警官隊が雪崩込んで来た。
 「ふうん、やっぱり、俺の出番はない訳ね。交渉人なのに。」柴田管理官は拗ねた。
 30分後、犯人が逮捕連行していく中、本庄は、「大丈夫なの?お腹。」とエマージェンシーガール姿の、みちるに尋ねた。
 「これ、おねえさまの『予備』なの。だから、目立たない。今日のこと、警部が『責任は俺が持つ』なんて言うから、来ちゃった。内緒よ。」
 そう言って去って行った、みちるを中津興信所の面々は呆れて見送った。
 「コーヒーでも、飲んで帰る?マスターの『おごり』で。」
 中津健二の提案に皆は賛成した。
 ―完―