======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。
 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
 中津(本庄)尚子・・・弁護士。主に中津興信所、南部興信所関係の仕事を依頼している。事実婚だった、中津警部と結婚。通称で仕事をしている。
 本郷隼人・・・EITOシステム開発部課長。中津興信所裏手の、EITO秘密基地に常駐している。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 午後1時。最高裁判所。第一法廷。
 「主文・・・、。」裁判長が、判決の主文を読もうとしたとき、傍聴席からナイフが飛んだ。ナイフは、被告の脇腹に飛んだ。
 同じ、傍聴席にいた中津達は、すぐさま被疑者を取り押さえ、廷吏に引き渡した。
 『ナイフガン』だった。中津警部は、すぐに関係各所に連絡した。本庄弁護士は、そっとバッグの中にナイフガンを収納した。
 ナイフガンは、ダークレインボーが、たまに使う武器で、先日も戦闘時に使われた。
 騒然とする中、法廷は休廷。被告は、病院に運ばれた。
 午後4時。中津興信所。所長室兼会議室。
 マルチディスプレイに中津警部が映っている。
 「EITOにも確認した。間違い無い。あの、『ナイフガン』だ。被疑者と被告の関係だが、被告が行ったレイプ殺人の被害者の兄だった。ブツの出所だが、ネットで購入したと言っている。」
 「ホントかな?」「そこで、君たちの使命だが・・・。」「被疑者の身辺捜査ですか、改めて。」
 高崎は、機先を制して言った。
 「その通り。サイバーセキュリティー班が、被害者の兄である戸部真一郎のPCを押収、捜査している。ハッキングの跡があることまでは分かっている。今日は、EITO東京本部とも繋がっている。」
 画面がワイプされ、EITO東京本部が映し出された。
 「おはよう、諸君。使われた凶器はナイフガンに間違い無い。だが、ダークレインボーがやったとは考えにくい。何故なら、その事件は単独で、尚且つ犯行声明も出ていない。」と、夏目警視正が言った。
 その横で、大文字伝子が言った。
 「ピスミラかも知れない。予め分かっていたら、ドリフト・アイスも我々に『パシリ』をさせただろうが。」
 「盲点だったよ。」と、中津達の部屋にいつの間にか入って来た本郷が言った。
 拳銃や機関銃なら、水流ガンやフリーズガンは有効だが、ナイフガンには無効だ。何故なら火薬を使っていないからだ。考えられるのは、以前、ナイフガンを使った戦闘時に、弾き跳ばされたか何かで回収し損なったブツだということだ。何度か話したが、ナイフガンは『一度っきり』の武器だ。発射されれば標的に命中しようがしまいが、もう使えない。それだけ複雑な構造をしている。」
 「あや、本郷君。拾った、ピスミラが犯行に使った、ということか。でも、何で、あの裁判に潜り込んで?」
 訝った高崎だったが、「これじゃないですかね。」と、泊が自分のPCを指さした。
 「戸部真一郎は、義理の妹の井下真由の為に、幾らでも金を用意出来た。恐山銀行の頭取だから。ピスミラは、以前から狙っていたところで、とんだ『落とし物』を拾った。そうか、ドライバーか。逃げたドライバーが、どこかに潜んでいたんだ。戸部に殺人を犯させる事を条件に、銀行の金を盗ったかもな。」と、中津警部が言った。
 「あの闘いの時のナイフガンには違いないが、以前発見されたものと大きく違うことがある。ナイフの方は、木製なんだ。檜(ひのき)だ。一番堅いのは、イスノキだが、檜の方が、アブラムシもつかないし、扱い易い。法廷には、金属探知機もあるが、ナイフもガンも多くが金属じゃない。身体検査がなきゃ通ったかも。組み立てはナイフを差し込むだけ。但し、何度も言うけど、発射したら、復元出来ない。」
 「厄介な事件になりそうだな。戸部が口を割るとも思えないし。」
 中津警部の予感は当たっていた。
 ―完―