======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津警部の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
依田俊介・・・やすらぎほのかホテル東京の支配人。大文字伝子の大学の翻訳部の後輩。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前10時。中津興信所。
高崎と根津が応接室で相談者の応対に出ている。
「結婚詐欺、ですか。」「ええ。本人には内緒で、やって来ました。」と、相談者の楠正一は、言って、メモを出した。
根津は、メモをデジカメに撮った。手書きにしないのは、後でもめ事が起こさない為である。会話も相談者に断ってICレコーダーで録音する。更に、部屋の隠しカメラで自動撮影している。
中津興信所は「興信所」または「調査所」と呼ばれる会社である。探偵に近いが、日本では、アメリカのように「公式」に探偵業は認められていない。
よくドラマとか映画で犬猫の迷子の探索を請け負ったりしているが、普通は高額な『オマケ』でもないと、引き受けない。
『人間の迷子』、即ち、行方不明の場合は調査を請け負うこともある。中津興信所は、警察やEITO、または弁護士の依頼があった時に請け負う。
提携している大阪の南部興信所のように『浮気調査』をする場合もなくはない。が、EITOと提携したことによって、事件に関わる案件が発生した場合、『一般の調査』は、断るか、期限付きにしない契約を取る。
今回は、この新事務所をオープンして初めての『飛び込み』依頼だ。
この事務所は、かつて大文字伝子・学夫妻が仮住まいしていた場所で、伝子の後輩である依田がうっかり、敵の『ラスボス』に教えてしまったことで、全焼した。
裏は、正確に言うと、裏の広大な庭の地下は、EITOの秘密基地で、大文字邸は、カムフラージュの為にあった。
今は中津興信所の『店舗付き住宅』になったが、秘密基地との関係は変わらない。
土地建物の所有は、EITOの大株主である芦屋グループなので、中津興信所は、店子であるEITOから又貸しされている関係にある。
さて、依頼内容は?
「今日、結婚式を挙げる段取りしているんですが、どうも挙動不審な女で、最近知り合ってすぐ結婚って無茶だし、弟の健二は欺されている気がしてならないんです。ネットの『マッチングアプリ』で知り合ったと言うし。」と、楠は写真を出した。隠し撮りのようだ。
「成程。素行調査を含めた『聞き合わせ』ですね。あまり、時間がないですね。式に我々を楠さんの友人と言うことで出席者に入れることは可能ですか?」
「私の会社の人間ということなら入れると思います。急な事ですから、招待状も出していないようですし。」
「了解しました。では、式までに、なるべく調べましょう。」
楠が帰った後、所長室で聞いていた中津健二は、兄の中津警部に連絡を取った。
「飛び込み、っていうのが引っかかるな。お前の事務所、広告出しているか?」
「出してないよ。前の事務所なら何回かチラシ広告を出したことはある。ネットで広告出したこともないし、このEITOの秘密基地のことが万が一にも世間に知れると不味いから、広告は出さないでくれ、ってEITO側に言われている。基本的に『一般』の仕事は、本庄先生か本庄先生の知り合いから、だ。まあ、浮気調査と犯罪の『ウラ取り』だな。」
「ふむ。取り敢えず、『2課』にデータがあるかどうか、調べて見る。写真のデータ、送ってくれ。持川徳子って名乗ってるんだな。ちょっと時間をくれ。」
午後7時。やすらぎほのかホテル東京。
挙式を終えた、楠健二と持川徳子が披露宴会場に現れた。
MCを勤める支配人の依田が、新郎新婦を紹介しようとした時、警視庁捜査二課の刑事達が、やって来た。楠健二の友人達が驚いている。
「何かの間違いです。彼女は、徳子は・・・。」
叫ぶ楠健二に、二課の刑事は無情にもこう言った。
「ここ5年間に、彼女は5回結婚している。それだけで説明は十分でしょう。」
楠健二は、頽れた。
楠正一と健二は、親の四十九日を済ませたばかりだった。健二は、寂しさを紛らわす為にインストールしたアプリで知り合った、自称持川徳子に一目惚れをした、哀れな中年男性だった。
徳子は、ドレスを脱ぎ、ダッシュして逃げようとしたが、公子と根津が阻止した。
すぐに、徳子は逮捕連行された。
中津健二は、泊に命じて、中津警部に報告させた。
「警部は、事務所に帰ったら、事務所荒しに遭ってないか、よく調べるように、と言っておられました。」「了解。依田さん、ご協力ありがとうございました。」
振り向いた依田は、「いいえ。本人はショックでしょうが、最近は、希有なパターンじゃないようです。同業者の利用者に、同じようなケースがあったと聞いています。」と応えた。
中津健二は、『元新郎』を慰めている高崎に合図をし、ホテルを出た。
午後8時半。中津興信所。
中津は、兄に言われたように、手分けして、事務所及び『家』に以上がないかどうかを確認した。秘密基地にもセキュリティーチェックして貰い、やっと、安堵した。
「今度から、『飛び込み禁止』な。」と皆に言って、解散させた。
皆が出て行った後、「海やプールじゃないのよ、ダーリン。」と、公子に突っ込まれた中津健二は、「今夜はインスタントラーメンにするか。」と、応えた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津警部の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
依田俊介・・・やすらぎほのかホテル東京の支配人。大文字伝子の大学の翻訳部の後輩。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前10時。中津興信所。
高崎と根津が応接室で相談者の応対に出ている。
「結婚詐欺、ですか。」「ええ。本人には内緒で、やって来ました。」と、相談者の楠正一は、言って、メモを出した。
根津は、メモをデジカメに撮った。手書きにしないのは、後でもめ事が起こさない為である。会話も相談者に断ってICレコーダーで録音する。更に、部屋の隠しカメラで自動撮影している。
中津興信所は「興信所」または「調査所」と呼ばれる会社である。探偵に近いが、日本では、アメリカのように「公式」に探偵業は認められていない。
よくドラマとか映画で犬猫の迷子の探索を請け負ったりしているが、普通は高額な『オマケ』でもないと、引き受けない。
『人間の迷子』、即ち、行方不明の場合は調査を請け負うこともある。中津興信所は、警察やEITO、または弁護士の依頼があった時に請け負う。
提携している大阪の南部興信所のように『浮気調査』をする場合もなくはない。が、EITOと提携したことによって、事件に関わる案件が発生した場合、『一般の調査』は、断るか、期限付きにしない契約を取る。
今回は、この新事務所をオープンして初めての『飛び込み』依頼だ。
この事務所は、かつて大文字伝子・学夫妻が仮住まいしていた場所で、伝子の後輩である依田がうっかり、敵の『ラスボス』に教えてしまったことで、全焼した。
裏は、正確に言うと、裏の広大な庭の地下は、EITOの秘密基地で、大文字邸は、カムフラージュの為にあった。
今は中津興信所の『店舗付き住宅』になったが、秘密基地との関係は変わらない。
土地建物の所有は、EITOの大株主である芦屋グループなので、中津興信所は、店子であるEITOから又貸しされている関係にある。
さて、依頼内容は?
「今日、結婚式を挙げる段取りしているんですが、どうも挙動不審な女で、最近知り合ってすぐ結婚って無茶だし、弟の健二は欺されている気がしてならないんです。ネットの『マッチングアプリ』で知り合ったと言うし。」と、楠は写真を出した。隠し撮りのようだ。
「成程。素行調査を含めた『聞き合わせ』ですね。あまり、時間がないですね。式に我々を楠さんの友人と言うことで出席者に入れることは可能ですか?」
「私の会社の人間ということなら入れると思います。急な事ですから、招待状も出していないようですし。」
「了解しました。では、式までに、なるべく調べましょう。」
楠が帰った後、所長室で聞いていた中津健二は、兄の中津警部に連絡を取った。
「飛び込み、っていうのが引っかかるな。お前の事務所、広告出しているか?」
「出してないよ。前の事務所なら何回かチラシ広告を出したことはある。ネットで広告出したこともないし、このEITOの秘密基地のことが万が一にも世間に知れると不味いから、広告は出さないでくれ、ってEITO側に言われている。基本的に『一般』の仕事は、本庄先生か本庄先生の知り合いから、だ。まあ、浮気調査と犯罪の『ウラ取り』だな。」
「ふむ。取り敢えず、『2課』にデータがあるかどうか、調べて見る。写真のデータ、送ってくれ。持川徳子って名乗ってるんだな。ちょっと時間をくれ。」
午後7時。やすらぎほのかホテル東京。
挙式を終えた、楠健二と持川徳子が披露宴会場に現れた。
MCを勤める支配人の依田が、新郎新婦を紹介しようとした時、警視庁捜査二課の刑事達が、やって来た。楠健二の友人達が驚いている。
「何かの間違いです。彼女は、徳子は・・・。」
叫ぶ楠健二に、二課の刑事は無情にもこう言った。
「ここ5年間に、彼女は5回結婚している。それだけで説明は十分でしょう。」
楠健二は、頽れた。
楠正一と健二は、親の四十九日を済ませたばかりだった。健二は、寂しさを紛らわす為にインストールしたアプリで知り合った、自称持川徳子に一目惚れをした、哀れな中年男性だった。
徳子は、ドレスを脱ぎ、ダッシュして逃げようとしたが、公子と根津が阻止した。
すぐに、徳子は逮捕連行された。
中津健二は、泊に命じて、中津警部に報告させた。
「警部は、事務所に帰ったら、事務所荒しに遭ってないか、よく調べるように、と言っておられました。」「了解。依田さん、ご協力ありがとうございました。」
振り向いた依田は、「いいえ。本人はショックでしょうが、最近は、希有なパターンじゃないようです。同業者の利用者に、同じようなケースがあったと聞いています。」と応えた。
中津健二は、『元新郎』を慰めている高崎に合図をし、ホテルを出た。
午後8時半。中津興信所。
中津は、兄に言われたように、手分けして、事務所及び『家』に以上がないかどうかを確認した。秘密基地にもセキュリティーチェックして貰い、やっと、安堵した。
「今度から、『飛び込み禁止』な。」と皆に言って、解散させた。
皆が出て行った後、「海やプールじゃないのよ、ダーリン。」と、公子に突っ込まれた中津健二は、「今夜はインスタントラーメンにするか。」と、応えた。
―完―