冷淡な玄武様はオッドアイの神子の愛に溺れる

さてどう帰ろうかと悩んでいる香夜とはうらはらに氷神兄妹は買い物をはじめる。

麗菜子は母親が誕生日が近いので花屋へ、京介は祖父が腰が悪いためドラッグストアへ行った。

香夜は時計塔の下で待つことにした。

(嫌な部分しか知らなかったけど、意外と家族想いなんだ)
氷神兄妹に感心しつつ冬の寒さにブルッと震えると光璃は自身のマフラーを香夜にかけてくれる。

「ありがとうございます。それにすみません…迷惑かけて…」
「ううん。むしろ碧川さんに学校以外で会えて嬉しくてラッキーだったよ」
「え?」

光璃は香夜の隣に腰掛け肩を引き寄せる。
顔が近づきキスできそうなほどの距離。

「碧川さん、僕が最初に言ったこと覚えてる?番にならないって話…本気で考えてくれないかな?」
「ふぇ…あの…生徒と先生じゃまずいです!」

翡翠には及ばないが光璃はイケメンの顔が近く香夜の頬に光璃の息がかかり、声も色気があり思わず変な声が出てしまう。

「教師と生徒なんて禁断な関係もいいじゃない。僕は番目当てで講師の話を受けたんだ。僕じゃ不服かい?」
「わ、私は翡翠様が好きなんです!だからごめんなさい!」
香夜は慌てて光璃から離れるが、光璃はまた香夜を引き寄せる。
「翡翠様は神様だよ?人間を番になんてするわけないよ」
「他の四神様は人間を番にしていましたから、まだ可能性はゼロじゃありません!」
「ふぅん。でもまだ恋人じゃないなら僕にもチャンスあるかな?」
目を細める光璃。
香夜はなぜ自分なんかを?と疑問がいっぱいだった。

『香夜!』
光璃と話していると愛しい翡翠の声。
「翡翠様!」
「香夜…心配したエマよ〜…」
翡翠の髪に隠れた水無月が周りに見つからないように小さな声で心配してくれる。

「翡翠様、ご機嫌麗しゅうございます」
『光璃殿ですか。香夜たちを保護してくださったようで感謝しますよ』
光璃は翡翠に頭を下げる。翡翠は相変わらず無表情だ。

「翡翠様、申し訳ございません。勝手に……」
『水無月から少し聞いています。謝罪や言い訳はあとで聞かせてもらいます』
あたりが暗くて表情はよく見えないが声が怒っていた。氷神兄妹とも合流し海辺まで行き人がいないことを確認した翡翠は神獣の姿に変える。
氷神兄妹は腰を抜かしながら驚くのを「同じ反応するよね…」なんて考えていた。

「翡翠様、僕…じゃなくて私はここで失礼致します。碧川さん、明日は僕の授業ないけど学校にはいるから困ったら来てね〜職員用のコーヒーご馳走するよ」
光璃は手を振る。困ったら…つまり翡翠や氷神家当主に怒られたら慰めるよと言っている。
翡翠の様子からお世話になりそうだなと香夜は思った。
翡翠(神獣の姿)に乗り、北ノ島へ帰った。

氷神家に向かい、香夜は当主ご夫妻に事情を説明。
当主の奥さんはかなり怒っていたが、当主が翡翠様の前だからと止めてくれた。

「不慮の事故ってことで私からは息子たちも碧川さんにも罰を与えることは致しません」
「ありがとうございます」
香夜は頭を下げた。
当主からお咎めなしなのは助かる。
問題は翡翠の方だ。

『本来であれば、許可のない範囲に出れば罰を与えなければならない掟ですが…私もご子息たちへの罰を与えるつもりはありません。悪いのは香夜ですから』
「ひっ!」
翡翠がチラりと冷酷な目で睨まれ、香夜は背筋がゾクッとした。


氷神家の屋敷から出ても翡翠は無言、無表情。
翡翠と香夜の住処である右ノ島に戻っても変わらない。