冷淡な玄武様はオッドアイの神子の愛に溺れる

「エマっ?!」
突然消えた香夜たちに困惑する水無月。
「翡翠様に報告エマぁ〜〜」
水無月は急ぎ、翡翠の元に向かった。



一方その頃、香夜たちは戸惑いを隠せずにいた。特に香夜は頭を抱えた。
もしここが街なら麗菜子と京介を連れてきてしまったのだ。
島から出ては行けない2人を。

「ここはたぶん街…です。私の力が上手く使えなくて…その……」
言いにくそうに氷神兄妹に伝えると2人は驚きつつも喜んだ。

「ここが…?」
「私…ずっとずっと憧れてた街…!」
周りの光景をみれば香夜の言ったことが間違いないと確信した2人。
フフッと不敵に笑う。

「じゃあ観光していくか」
「えっ?夕方とはいえ、もう暗くなってきてるし掟で島から出ては行けないんですよね?見つかる前に帰りましょうよ」
「アンタが悪いんでしょ?私達は行きたいなんて言ってないし、どうやって帰るのよ」
「うっ……」

たしかに一度失敗してしまい、次も上手く帰れる保証はない。
痛いところを突かれ頭を悩ませる香夜を無視し2人は歩きだし香夜は後ろから付いて行くしかなかった。


「お兄様、ここ入りましょうよ」
訪れたのはコンビニ。
色んな物が売っていることに驚き、香夜が仕方なく持ってきたカゴに次々といれていく。

「あのお金大丈夫?私、持ってないよ」
「よそ者にたかるほど落ちぶれてないわよ」
お金の心配はないようだが、香夜は何故か荷物持ちをさせられる。

「あれ?碧川さん?」
コンビニから出ると声を掛けられ振り向くとそこにいたのはアヤカシ学部の講師で天狗のアヤカシの光璃。

「光璃先生?なんで街にいるんですか?」
「アヤカシは人間に迷惑を掛けなければ自由に街に行けるんだ。僕はちょっと本を買いに来たついでに夕飯食べようと思ってたところだよ」

光璃は香夜は期間限定とはいえ、玄武の神子なので翡翠の判断次第と理解できたが氷神兄妹がいることに不思議に思う。

「……とりあえず夕飯一緒にどう?僕、お腹ペコペコでね」

近くのファミレスに入り、事の経緯を説明し帰る方法を尋ねた。

「なるほど…」
光璃は困ったように難しい顔をする。
アヤカシなら強い神通力なら感じられるらしいので力の使い方のヒントか帰る方法はないかと思ったのだが様子からなんとなく悟る。

「先生はどうやって街に来られたのですか?」
光璃を狙っていた麗菜子が尋ねる。
香夜との対応とは大違いだ。

「4つの島の海辺にはアヤカシ界に繋がる洞窟があるように、街にも同じような洞窟があってそこから行き来してるんだよ」
「そこを通れば帰れますよね!」
「…番ではない人間の通行は禁止されてるんだよ…ごめん」

光璃の話ではアヤカシはアヤカシ界の亜空間のような場所を通り、島にやってくる。
島から街に行きたい場合は再びアヤカシ界に戻り、街に繋がる別の空間を通らなければならないため、香夜たちはアヤカシ界へ足を踏み入れることになるため、連れて行けないという。

近々、予定されているアヤカシ界へ社会科見学は翡翠が交渉し許可をもらったもので特別だそうだ。

「碧川さん、あのフワフワの雪玉ちゃんは?あの子ならどうにか出来るんじゃないかな」
雪玉とは水無月のことだろうが、香夜は首を横に振る。

「それにしても翡翠様のお力は凄いのですね」
「違うよ。これは街の人々の努力だよ」
「えっ?」

京介はファミレスの窓から街の様子や通行人を見ながら呟く。北ノ島が電気などのライフラインは翡翠の神通力により普及しているので街の電気なども翡翠の力だと思ったようだが、光璃に否定され驚く。

「人間の力……これが?神の力を使わずともできるのですか?……コンビニエンスストアやそこに売っているものも、この料理も翡翠様たち神が与えたものではなく……?」
「そうだよ。人間が自ら生み出したんだ」

島に住む者はテレビもネットもなく得られる情報は本やアヤカシからのみ。
京介は翡翠や神から与えられたものだと勘違いをしていた。島との差にますます驚きを隠せずに困惑している。

「白虎様達がこられてたでしょ?特に白虎様が街と比べて島は時代遅れがすぎると仰っていて改善できないかと会議があってですね。詳しくは麗菜子さんや当主に聞いてください」
翡翠は当主に話し、香夜はクラスメイトに会議の内容を話したことを説明。

「お兄様、すまほという機器で他の島の者との連絡や他の島へ行き来できるよう将来的にするみたいですって」
「………そうか…そうか…たしに時代遅れだな」
京介はフッと笑うが先程までの強気な顔はなく、悔しそうな弱気な表情。
京介は食事中はうわの空でよく窓を眺めていた。