この記録を締めくくるにあたり、現在の私たちのことを記さねばならないと思う。

 時は、私が目を覚ましてからさらに四年後になる。
 四年前の目覚め。
 三年前の結婚。
 二年前には事業を始めた。

 そして一年前──私たちの間に娘が生まれた。植物状態から目覚めた当初、私の生殖能力はほぼゼロだったのだから、これも一つの奇跡といえるだろう。

 私たちは郊外に家を構え、エリーは自宅で娘の世話をするかたわら、執筆や編集に携わっている。
 私は家から車で十五分ほどの街に職場を持ち、良きアメリカ人の夫として、毎晩夕食前に帰宅している。



 日が暮れかかるころ、私は白い垢抜けないフォード車に乗って、家路につく。

 家の前に車が停まると、待ってましたといわんばかりの勢いで玄関が開き、娘を抱いたエリーが顔を見せる。
 私も同じく、待ちきれないといった歩調で前庭を横切るのだ。

 エリーは、私を迎えるために手を広げる。

 私は彼らの前に辿り着くと、まずエリーの唇に、そして次に娘の額に、口付けをする。そして今日一日離れていた間に起こった出来事を──それは毎日変わりばえしないのが常だったが──お互いに報告し合う。

 そうして日は暮れ、私たちは夕食を取り、いくらかの団欒をしたあと、眠りに付く。



 私は完璧な夫ではなく、ましてや完璧な人間とはほど遠かったが、エリーはそんな私をも愛し、私もそんなエリーを愛していた。

 夜、眠りに付いた娘を見届け、ベッドルームでエリーと愛を重ねたのち、私はサイドの明かりを消す。

 エリーは私におやすみなさいと言って軽く唇に口付け、私もそれを返す。
 妻の肩を抱きながら、私は窓からのぞく月を見つめる。


 私は知っている。
 ある者たちは、こんな瞬間を一生待ち続ける。
 またある者たちは、こんな瞬間を永遠に探し続ける。

 私はあの冬を永遠に覚えているだろう──あの四年間を。あの苦しみを。しかし今の毎日を、巡る四季を、あの四年間が育んだ新しい心でもって、生きている。

 青い晴天のもとでも、灰色の雨雲のもとでも。
 春も冬も、夏も秋も。

 すべての季節を、この命でもって。




【FOUR SEASONS - 了】