①潮風に匂いが舞って いつもより離れたくないTシャツの裾



②火遊びは知らないままで大人になった 危ないとばかり言われて



③感情の決壊など待てやしない 初期衝動のような初恋



④君と手を繋ごうとして泳ぐ手は碧すぎる湖面に戸惑う



⑤生まれたら分からないから知りたくて 君もそういうひとだといいな



⑥君だけは比喩にしない 月が綺麗な夜は苦しかったの、だけど好き



⑦唇に触れた粉雪 僕が優しく溶かしてあげるから、おいで



⑧無知を知るたび大人になってゆけどあなたのことはぜんぶ知りたい



⑨知らなくていいけれどホワイトローズ みんなギャップに弱いのです



⑩君がその花を選んだ理由まで考えてから受け取った



⑪チョコレートコスモス 美味しくなくても笑顔で食べてくれるひと



⑫風に散らばるラブレター 恋の濃度は眠れぬ夜に増してゆく



⑬瞳の色は違うから あなたに映る残酷さも美しさも分からない




⑭失恋は供養させて頂きます 遺骨のように花を散らせて



⑮すきな花、教えてほしい もしそれが私じゃないなら諦められる



⑯寄り添うように霞草 枯れない花などないのに生きてほしくて



⑰憧れはあこがれのまま 先輩の第二ボタンに葉桜の影



⑱言葉って花びらみたい 桜の花は思いを告げるために散る



⑲好き、ってあとどのくらい伝えられる?あなたを想う雪が溶けない



⑳降る雪を恋だと思う忘れ雪 溶け残るのは愛だと思う



㉑さよならにリボンをかけて閉じるとき 思い出さない強さで結ぶ



㉒失恋の後の夕焼け まだ好きでどうしたらいいか分かんないよ



㉓燃やされた線香花火 いつかきっとこの想いも潰えるように



㉔花時雨 大人になるまで待っていて少女が引いた真っ赤なルージュ



㉕出逢うこと お互いに好きだとしても桜並木は途切れるように