①帰り道友達と飲むサイダーは青春の味甘く弾けた



②王子とか姫とかあだ名つけていたおとぎ話は親友とする



③制服のリボンの紐を解き放つ 卒業の春この恋届け



④水泳の授業の後に髪を結う つむじとうなじが愛おしかった



⑤人魚が眠る碧く澄んだ海の底 明るい方で息をしていて



⑥陽に透ける髪に塩素の残り香 伝う水滴煌めいて、星流る



⑦覗き込む チューリップには部屋がある妖精たちの秘密のお城



⑧さんずいの海の香りに誘われて裸足になった 滑らかな四肢



⑨君が詠む 短歌はいつも定型で制服みたいで息が詰まるよ



⑩担任の最後の授業 青春の終わりを告げるチャイムが鳴った



⑪後悔は先に立たない青春は取り戻せないそれでも生きる



⑫サイダーのヒリつく味が青春と同じ痛みでいつか和らぐ



⑬校庭の中心で愛を叫ぶ僕の青さは海に負けない



⑭青春は平等じゃない。私たちプールの底で息をしている



⑮サイダーの二酸化炭素がきらきら光る 恋と呼ぶには綺麗すぎる



⑯コミュ力のカードをもっていないなら自分の手札で戦い抜けよ



⑰僕たちは等しく光る星屑で一等星に憧れている



⑱まっすぐに線を引かれた青の世界で プールサイドは煌めいて



⑲敬語からタメ語になってゆくときの空と海の境目の色は



⑳雨の日の葉桜の匂い あなたとはずっと友達でいたかった



㉑思い出の海辺 裸足にはなれなかった素直になれたならきっと



㉒草原を揺らすフルート 白雨が降り出しそうな予感と旋律



㉓花びらを殺める風 この罪が誰のものでもなかったとして



㉔ひと文字はひとつの願い みそひともじはひとつの祈りとなって君へ



㉕先輩と波打ち際を追いかけるどこからが海どこまでが海