「動画だね」
「やっぱり変な動画なんじゃない?」
だが止める暇もなく、その動画は勝手に再生されてしまった。結局二人して、その動画を恐る恐る眺めることになる。
動画は非常に画質が荒く、そして全体が暗かった。夜の中で撮影されたのだろうか? 二人は目を凝らして動画に見入る。
場所は野外で撮られたものらしかった。かすかにだが、カサカサと木々が揺れる音が流れてくる。動画はしばらく闇ばかりを映していて変化がなかったが、しばらくするとぼんやりと何かが浮き上がってきた。
動画の真ん中だが、距離があるようでかなり小さい。しかし時間が経つにつれ次第にはっきりと変化し、それが青い服を着た人間であることが分かってきた。
ワンピースだ。真っ青なワンピースを着た女が、小さく左右に揺れながら何をするでもなく突っ立っている。
夜の色に青い色はやけに映えた。それは不気味なほどで、女の顔や髪形などはほとんど見えないのに、青いワンピースが揺れている事だけはしっかり見えるのだ。
「ね、ねえこれ変じゃない? 止めた方がいいかもよ」
「うん、不気味すぎ……やっぱりいたずらなのかも」
そう言って友人が画面を閉じようとした時、当然画面に白い文字が流れた。
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
「……」
二人は絶句して動画を見つめる。あまりの不気味さに声も出なかった。
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
シッテイルヒト ジョウホウ ヲ クダサイ
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
延々と流れる白い文字に、二人は小さな悲鳴を上げた。
「ヤバくないこれ?」
「絶対ヤバイやつだ」
「怖い、普通じゃないって!」
見たところ動画はまだ一分ほど残っている状態だったが、友人はすぐに消した。もう関わりたくない、とばかりに記載されていたURLも削除する。
何も映らなくなったスマホを、しばらく二人で呆然と眺めていた。時間がいくらか経った後、友人は後悔したように呟いた。
「やっぱり見るんじゃなかった……何だったんだろう、あれ」
栗原さんも体に残るぞくぞくとした寒気に腕を振るわせながら、それでも気丈に振舞う。
「手の込んだいたずらだったんだよ! 凄いね、新しい手法なのかも!」
「いたずらなのかなあ……人の名前が出てなかった?」
「いたずらだよ、いたずら。お腹空いたし早くお店に行こうよ」
もう話題を切り上げたくなった栗原さんは友人を笑顔で促した。友人はまだ動画のことが気になるようだったが、栗原さんについて喫茶店へ向かった。
その後、二人が喫茶店から出るときも張り紙は張られたままだったようだが、無許可で貼られたものだったため、翌日には全て撤去されていたらしい。近所の人に張り紙について聞いてみたが、みんな存在は認識していたもののQRコードを読み取った人まではいないようだった。
栗原さんは、動画を最後まで見なかったため、ラスト一分がずっと気になっているようだ。
「人探しをしている動画で、『情報をください』という文面なら、その情報を送る連絡先の記載があったはずですよね。電話番号とかアドレスとか……私は見れなかったラスト一分に、そういう情報があったのかなと思うと気になりますが、全部見る勇気は未だにないですね」
栗原さんはそう語っていた。
「やっぱり変な動画なんじゃない?」
だが止める暇もなく、その動画は勝手に再生されてしまった。結局二人して、その動画を恐る恐る眺めることになる。
動画は非常に画質が荒く、そして全体が暗かった。夜の中で撮影されたのだろうか? 二人は目を凝らして動画に見入る。
場所は野外で撮られたものらしかった。かすかにだが、カサカサと木々が揺れる音が流れてくる。動画はしばらく闇ばかりを映していて変化がなかったが、しばらくするとぼんやりと何かが浮き上がってきた。
動画の真ん中だが、距離があるようでかなり小さい。しかし時間が経つにつれ次第にはっきりと変化し、それが青い服を着た人間であることが分かってきた。
ワンピースだ。真っ青なワンピースを着た女が、小さく左右に揺れながら何をするでもなく突っ立っている。
夜の色に青い色はやけに映えた。それは不気味なほどで、女の顔や髪形などはほとんど見えないのに、青いワンピースが揺れている事だけはしっかり見えるのだ。
「ね、ねえこれ変じゃない? 止めた方がいいかもよ」
「うん、不気味すぎ……やっぱりいたずらなのかも」
そう言って友人が画面を閉じようとした時、当然画面に白い文字が流れた。
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
「……」
二人は絶句して動画を見つめる。あまりの不気味さに声も出なかった。
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
シッテイルヒト ジョウホウ ヲ クダサイ
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
イスルギ ミサト ヲ サガシテイマス
延々と流れる白い文字に、二人は小さな悲鳴を上げた。
「ヤバくないこれ?」
「絶対ヤバイやつだ」
「怖い、普通じゃないって!」
見たところ動画はまだ一分ほど残っている状態だったが、友人はすぐに消した。もう関わりたくない、とばかりに記載されていたURLも削除する。
何も映らなくなったスマホを、しばらく二人で呆然と眺めていた。時間がいくらか経った後、友人は後悔したように呟いた。
「やっぱり見るんじゃなかった……何だったんだろう、あれ」
栗原さんも体に残るぞくぞくとした寒気に腕を振るわせながら、それでも気丈に振舞う。
「手の込んだいたずらだったんだよ! 凄いね、新しい手法なのかも!」
「いたずらなのかなあ……人の名前が出てなかった?」
「いたずらだよ、いたずら。お腹空いたし早くお店に行こうよ」
もう話題を切り上げたくなった栗原さんは友人を笑顔で促した。友人はまだ動画のことが気になるようだったが、栗原さんについて喫茶店へ向かった。
その後、二人が喫茶店から出るときも張り紙は張られたままだったようだが、無許可で貼られたものだったため、翌日には全て撤去されていたらしい。近所の人に張り紙について聞いてみたが、みんな存在は認識していたもののQRコードを読み取った人まではいないようだった。
栗原さんは、動画を最後まで見なかったため、ラスト一分がずっと気になっているようだ。
「人探しをしている動画で、『情報をください』という文面なら、その情報を送る連絡先の記載があったはずですよね。電話番号とかアドレスとか……私は見れなかったラスト一分に、そういう情報があったのかなと思うと気になりますが、全部見る勇気は未だにないですね」
栗原さんはそう語っていた。