「怖すぎるじゃん」

「やばいよね? 病院も警戒して警備員を増やしたりはするらしいけど……」

「イスルギ ミサトって、病棟にはいないよね」

「うん、でもほら、五木さんの名前って、ちょっと似てるよね」

 五木さんは『五木みやこ』イスルギミサトと、似ていなくもない。

「イスルギ、ミサト。ミサトかあ……」

「他の病棟に入院中なのかもね。その人と何かトラブルがあったのかも。多分どこの誰か調べて、注意してると思うけど、そこは私たちの仕事じゃないけどさ」

「探されていたイスルギミサトって人がどんな人かはわからないけど、ヤバそうな人に探されてるみたいだし、本人も気を付けた方がいいよね」

 唸りながらそう呟いたところで、ナースコールの音が響き同僚が席を離れてしまった。おいていったインシデントレポートを手に取り、中身をもう一度読み返す。

 イスルギミサトという名前の入院患者は、この病棟にはいない。では、他の病棟にいるのだろうか?

 先ほど聞いた青いワンピースの女の姿を想像し、再びぞっと寒気が襲う。なんだか説明しがたい嫌な感覚だ……。

 いずれにせよ、こんな不審者が入り込んだことは大変なことだし、対応した看護師が哀れでしかたがなかった。自分だったらと想像すると寒気がするし、二度と起きてほしくないと願った。