M病院の「探す女」へ


 これが、インシデントレポートに書かれた内容の詳細だそうです。

 自分の顔が青ざめていくのを自覚していました。手が震えるのを、同僚に気づかれないように必死に押さえつけるので精一杯です。

「これを上に報告・通報してから、一月に侵入した女と同一人物の可能性が高いってようやく気付いたみたい。ちょっと事態を軽く見てたんだよね、前の時も盗んだりしたわけじゃなかったから……でももっと病院全体で気を付けるべきだったよね。ていうか、大丈夫? 顔色悪くない?」

 同僚が心配そうに私の顔を覗き込んできたので、何とか頷いてみせました。その時、電話が鳴り響き、同僚はそっちの対応に追われてしまったので、私は一人立ちすくんでいました。

 そんなはずない。女がまだ私を探しているなんて……。

 混乱する頭で必死に考えますが、特徴などから考えても女が同一人物であるのは間違いないと思います。ではなぜか?

 祖父母が何か勘違いをしている。

 例えば、全て妄想だった? もしくは、突き飛ばしたまでは現実でも、女は死んでいなかったとか。人を殺したとあんな嬉しそうに言うくらいなのだから、一人息子を亡くして精神的にも参っていたのかもしれない。

……それとも、本当に女は……

 非現実的な考えが頭に浮かび、自分でそれを払いました。そんなことありえない。あるはずがない、私は必死に自分をそう言い聞かせたのです。