まず、家に帰ってイスルギミサトについて調べてみました。最近はSNSも発達していますし、名前でヒットする可能性もあると思ったのです。ですが、その名前でヒットする人はいませんでした。
イスルギという名字は、漢字では石動と書くらしく、やはり一般的には珍しい苗字のようでした。ですが基本的に北陸地方で見られる苗字で、私の知識不足なのですが、富山県には石動駅という駅もあるのだそう。北陸の方からすれば、そんなに珍しい名前ではないのかもしれません。
ただ、M病院があるのは北陸地方ではないですし、少なくとも私は今まで石動さんという患者に出会ったことはありませんでした。
次に仕事に行った際、カルテで石動みさとを検索してみました。カルテは今までにM病院を使用したことがある人間全てを表示することができるので、検索に掛ければ一発で石動みさとがどこにいるのか分かるはずでした。
ですが、ヒットしませんでした。
もしかすると、緊迫した空気の中だったので看護師が名前を聞き間違えたのかと思い、とりあえず石動の苗字だけで検索してみました。例えば石動みなととか、石動あさととかがいれば、限りなく正解に近いと思ったのです。
出てきたのは一件のみで、しかも石動みさととは似ても似つかない高齢男性の名前のみでした。その上、その男性はかなり前に亡くなっていることがわかり、さすがにあの女が探していた人はこの人ではないだろう、と思いました。
となれば、考えられることは一つ。
患者ではないのではないか? ということです。女は石動みさとがM病院にいる、という情報だけを知り、それが入院患者なのかスタッフなのか知らなかった可能性があります。
M病院は大きな病院ですので、医師や看護師の他にも、薬剤師や検査技師、栄養士に医療事務など、ゆうに千人を超える人が働いています。その中に石動みさとがいる可能性は十分にあると思いました。
とはいえ、全スタッフの名前を検索する方法は、いち看護師でしかない私にはありません。根気よく知り合いに聞いてみるぐらいしか思いつかず、難航することはわかり切っていました。
とりあえず知り合いに手あたり次第尋ねてみることにして、そこで何か情報を得られるよう祈るしかありませんでした。
もう一つ探す手段として、インターネットの書き込みやSNSを利用する方法もすぐに思い浮かびました。この時私はすでに物書きとしてペンネームを持っており、その名前でアカウントを持っていたので、利用することは可能です。
ですが、ネット上に『石動みさと』というフルネームをさらしてしまうことはよくありません。私はすぐに諦めました。
とりあえず今は、地道にコツコツ知り合いに聞いて回ろうと思いました。
ちなみにイスルギさんという遊びについては、どう検索しても出てきませんでした。