僕と彼女は隣の席だった。窓際の一番後ろ。彼女が窓に近い方、僕はその隣。
空いた窓から入ってくる風に髪を靡かせ、頬杖をつきながら彼女はぼうっと外を見ていた。
 担任から、高校生としての心構えなど朝礼だけで多くのことを教えられた。責任を持つ、将来を見据える、時間を大切にするなど。中学生でもわかっていることばかりだった。つまらなく感じ、何気なく彼女の方をチラッと見ると目が合ってしまった。まさか、彼女も僕の方を向いているとは思わず、驚いて俯いた。
「顔赤いよ。大丈夫?」
そう言われ、パッと顔を上げて彼女の方を見ると心配そうに僕のことを見つめていた。僕は自分の顔が赤くなっているとは知らなかったため、恥ずかしくなった。
「大丈夫大丈夫。気にしないで。」
僕は片手で顔を覆いながら慌ててそう言った。彼女は不思議そうに僕のことを見ていた。あまりにも慌ててしまった僕の声は大きくなっていたようでクラスメイトの視線が僕に集中していた。
「如月。静かにしろ。何かあったのか。」
さっきまで話していた担任に入学式早々注意をされてしまった。
「なんでもないです。すみません。」
僕は軽く頭を下げて謝罪した。彼女はまだ僕のことを心配そうに見ていたが僕は何も言わずに担任の話の続きを聞いていた。