忘れてしまう君だけど

 週末、僕と彼女はお互いの最寄りである駅に集合した。
「あっ、恭介くん。おはよう。待たせちゃってごめんね。」
 集合時間の十分も前だというのに彼女は僕にそう謝ってきた。
ただ、僕が早く来すぎてしまっただけなのに。
 この日は、初夏に相応しい、照りつけすぎない日差しと爽やかな風が吹く日だった。
そんなことを思っていると彼女が一枚の紙を渡してきた。
突然のことに驚きながらもその紙を見てみると『空に浮かぶ湖の旅』と、彼女特有の丸い字で書いてあった。
「翠生、これって何?もしかして今日のしおり?」
僕がそう尋ねたのを聞いて彼女がクスッと笑った。
「そうだよ。私ねこの前約束した時から頑張って作ったの。今日が本当に楽しみで仕方がなかったんだよね。」
 しおりを大切そうに抱きかかえ、頬を赤く染めて微笑む彼女がとても可愛らしかった。