忘れてしまう君だけど


 そして僕が落ち着いて少しした時、彼女は先天性儚心症候群が国家機密で、治療のための研究が進められている病であることを教えてくれた。そんな大切なことを僕に教えてくれた。そう思うだけで僕は幸せだった。
 その後、僕と翠生はベンチに腰掛けて、空に散りばめられた美しく輝く星を眺めながら星座にまつわる神話について話した。兄妹を救うために天を翔けた羊の話や娘を奪われて悲しみに暮れてしまった豊穣の女神の話など。お互いに知っている神話をあげていると話が尽きなかった。やはり彼女と話すと楽しいし、心が落ち着く。もう僕は彼女と離れることができなくなっている。たとえ彼女が僕との思い出を忘れていったとしても、忘れていってしまう分もっとたくさん幸せな思い出を作っていこう。そんなことを考えていると彼女が何か思いついたように僕の方に向き直った。
「今までは学校でしか会ったり話したりしてなかったけど、今日お互いに同じ思いだってことがわかったし、病気のことも打ち明けられたから今週末にでもどこか一緒にお出かけしたいって思ったんだけどどうかな。」
 僕は一瞬、彼女の言ったことが理解できず、きっと間抜けな顔をしていただろう。彼女はもう一度、一緒に出かけたいなって思ったんだけど、と少し控えめに言った。僕が行きたくないと思っていると捉えてしまったのだろうか。僕は心配になって、慌てて言った。
「嬉しくてちょっと驚いただけだよ。もちろん僕も行きたい。」
 その言葉に微笑んだ彼女の笑顔が忘れられない。