中学生だったあの日の放課後、僕は家から少し離れた公園に呼び出された。そこは木が生い茂っており、あまり入らない方がいいと学校でも言われている公園だった。そこには数名のクラスメイトの男子がいた。
「この前、お前の母さんがスーパーのレジのところで必死に客に謝ってるの見たぞ。情けねぇな。ぺこぺこ頭下げてたぞ。」
クラスメイトのうち一人が笑いながらそう言った。周りの奴らも笑い始めた時、僕の体は自然と動いていた。無心で拳を振り回した。涙を流しながら。
気がついた時にはあたりは暗くなっており、近所の交番から駆けつけた警官に事情徴収されていた。僕を呼び出した奴らは通報を受けて来た救急隊員から手当を受けていた。そんな何もかもボロボロになった僕を見るためにたくさんの野次馬が集まっていた。きっと誰もが僕が全て悪い、そう思っているのだろう。僕はズキズキと身体中が痛むことを誰にも言うことができなかった。警官に何を聞かれても答える気にはならなかった。
僕が無言を貫いているとクラスメイト達の親が僕のところへ来た。
「あなた、一体私の大切な息子に何をしてくれたの。」
まるで、鬼が怒っているようだ。僕に掴みかかろうとしながら暴言を吐き続けているのは母のことを悪く言った奴の母親だ。まるで仮面のような厚化粧に輝く宝石が散りばめられたような服。僕の母親とは全く似つかなかった。僕は腑に落ちたような気がした。こんなに自信に満ちた母親に育てられたなら、僕の母さんが情けなく見えても仕方ないのだろうと。
母さんが息を切らしながら公園に駆け込んできた。クラスメイトたちの親の前についた瞬間、母さんは大きく頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした。ほら、恭介もちゃんと謝りなさい。」
僕にそう言う母さんを見て僕は呆然とした。どうして母さんのことを悪く言った奴らに謝らないといけないんだ。
結局、僕は謝るということをしなかった。ちゃんと教育されてないだの、おかしいだの周りの大人にいろいろなことを言われたが僕はその場にいる一人一人に頭を下げる母さんから目が離せなかった。
