生クリームみたいに真っ白な外壁のヘルシンキ大聖堂は、左右対称のほとんどお城みたいな作りの建物だ。六本の円柱がどっしりと屋根を支え、瑞々しいグリーンの屋根がお椀のようにかぶさっている。
北欧のクリスマスの風物詩、クリスマスマーケットが行われるこの街はヘルシンキ大聖堂を中心にライトアップされ、宙に連なるオレンジの明かりが星のように輝き、五メートルはありそうな壮大なクリスマスツリーが目を引く。
私でも知ってるクリスマスソングが流れ、行きかう人たちはみんな幸せそうだ。数々の屋台にはまばゆいクリスマスオーナメントや凝った作りのクリスマスギフト、ローストチキンやプディングなど、クリスマスならではのご馳走が並んでいる。
「来れてよかった」
隣を歩く楓馬に言うと、穏やかな笑顔が返ってくる。サンタの髭みたいに真っ白な髪にやっぱり白い肌は不健康に見えるほど。でも顔立ちは芸能人並みに整っている。
「さすが陽彩ちゃん。よくこういうところ知ってたね。僕はクリスマスのお祝いって言ったら、高級ディナーとか、そういうのしか思い浮かばなくて」
「北欧はクリスマスの本場だから。ここヘルシンキだけじゃなくて、いろんな街でこの時期クリスマスマーケットやってるの。あのヘルシンキ大聖堂ね、上れるんだよ。行ってみる?」
フィンランドのクリスマスはありえないぐらい寒いから、私も楓馬もロングのダウンコートを着ている。楓馬が持ってきた未来の道具はこういう時便利だ、ひとつの服を好きな形状に変えることができるし、素材も自由自在。
そう、楓馬は未来人だ。百年後の未来から、余命宣告された私の元にやってきた。
「わー、すごい景色!」
ヘルシンキ大聖堂から見下ろすクリスマスマーケットの風景はまさに圧巻。クリスマスツリーも全体が見渡せるし、広場の中央に鎮座するメリーゴーランドに子どもたちが群がっているのも見える。ずらりと連なった屋台の屋根にうっすら積もった雪もきれい。北欧の雪は日本の雪より水分が少なく、さらさらしたパウダースノーだ。
「ねえ楓馬、今度はあのメリーゴーランド乗ってみようよ!」
「え、メリーゴーランド? ちょっと子どもっぽくない?」
「いいじゃない、せっかくのクリスマスなんだから! 恋人たちのクリスマスが今日のテーマなんでしょう」
「まったくニンゲンは本当に馬鹿だな」
楓馬のコートの裾からパオがぴょこんと飛び出してくる。パオは未来の秘書ロボットで、いつも楓馬にくっついている。紫の丸っこいボディにくるくる表情が変わる、ちょっと毒舌でかわいいロボットだ。
「何が恋人たちのクリスマス、だ。クリスマスなんてただの行事じゃないか。そんなことのために時間を遡った上こんなところまで来るなんて、デロリアンの無駄遣いだ」
「うるさいよ、パオ」
楓馬がたしなめるけど、パオはぷくんとむくれて、またコートの中に引っ込んでいった。
北欧のクリスマスの風物詩、クリスマスマーケットが行われるこの街はヘルシンキ大聖堂を中心にライトアップされ、宙に連なるオレンジの明かりが星のように輝き、五メートルはありそうな壮大なクリスマスツリーが目を引く。
私でも知ってるクリスマスソングが流れ、行きかう人たちはみんな幸せそうだ。数々の屋台にはまばゆいクリスマスオーナメントや凝った作りのクリスマスギフト、ローストチキンやプディングなど、クリスマスならではのご馳走が並んでいる。
「来れてよかった」
隣を歩く楓馬に言うと、穏やかな笑顔が返ってくる。サンタの髭みたいに真っ白な髪にやっぱり白い肌は不健康に見えるほど。でも顔立ちは芸能人並みに整っている。
「さすが陽彩ちゃん。よくこういうところ知ってたね。僕はクリスマスのお祝いって言ったら、高級ディナーとか、そういうのしか思い浮かばなくて」
「北欧はクリスマスの本場だから。ここヘルシンキだけじゃなくて、いろんな街でこの時期クリスマスマーケットやってるの。あのヘルシンキ大聖堂ね、上れるんだよ。行ってみる?」
フィンランドのクリスマスはありえないぐらい寒いから、私も楓馬もロングのダウンコートを着ている。楓馬が持ってきた未来の道具はこういう時便利だ、ひとつの服を好きな形状に変えることができるし、素材も自由自在。
そう、楓馬は未来人だ。百年後の未来から、余命宣告された私の元にやってきた。
「わー、すごい景色!」
ヘルシンキ大聖堂から見下ろすクリスマスマーケットの風景はまさに圧巻。クリスマスツリーも全体が見渡せるし、広場の中央に鎮座するメリーゴーランドに子どもたちが群がっているのも見える。ずらりと連なった屋台の屋根にうっすら積もった雪もきれい。北欧の雪は日本の雪より水分が少なく、さらさらしたパウダースノーだ。
「ねえ楓馬、今度はあのメリーゴーランド乗ってみようよ!」
「え、メリーゴーランド? ちょっと子どもっぽくない?」
「いいじゃない、せっかくのクリスマスなんだから! 恋人たちのクリスマスが今日のテーマなんでしょう」
「まったくニンゲンは本当に馬鹿だな」
楓馬のコートの裾からパオがぴょこんと飛び出してくる。パオは未来の秘書ロボットで、いつも楓馬にくっついている。紫の丸っこいボディにくるくる表情が変わる、ちょっと毒舌でかわいいロボットだ。
「何が恋人たちのクリスマス、だ。クリスマスなんてただの行事じゃないか。そんなことのために時間を遡った上こんなところまで来るなんて、デロリアンの無駄遣いだ」
「うるさいよ、パオ」
楓馬がたしなめるけど、パオはぷくんとむくれて、またコートの中に引っ込んでいった。



