―――凜ははっきり、そう言ったからね。僕に、強いまなざしで。

 だから、反対なんてできなかった……

 そうゆう芯の強い所も好きだし、僕以外の男の世話をされるのは嫌だ!

 そう、本心で思っても……それをすがるなんて、できっこない。

「止めてください。俺は望んでない」

 彼は低い声で言い、顔つきが怪訝そうに険しくなる。


 確信できたよ―――。

 梶くんも、凜を大事に想ってる。
 彼の手元を見た。何よりの証明だ。

 それ、ほら、凜が作ったミサンガ……

 しっかり握りしめてる。
 凜を想って、願っているんだろ?

「僕は凜の望みを聞くまでだ。婚約者だからね」

 凜は僕に言ってくれたから……伴侶として、痛みもわかち合えばいいんだ。

 彼によって凜が傷付いたとしても、僕が守ってあげればいい。

 車椅子の彼に、おれは牽制気味な視線を落とす。けれど……

「……知ってます?  死人、見送るのに、楽しい事なんてひとつもないっすよ。虚しさと無気力との戦いです。亡骸なんてクソ冷てえし、カラッカラの骨拾うなんて……めちゃくちゃ怖いんすよ! 人間らしさが、まるっきり、なくて。そんな想い、わざわざさせたく……。
 俺が、凜を壊しますよ?」

 この子……急に男の顔つきになった。

 わかってるんだよ、凜は。
 全部承知の上で、決心したんだ。

 そして、ふたりよりも、おれのほうが断言できてしまうんだ。


 凜と梶くんは運命で結ばれている、って ―――。


 10年のときなんて、あっという間に飛び越えるほど……

 ふたりの魂が、惹かれ合ってるんじゃないかって―――。

 君にはかなわない、と不安なんだ。

 それでも、凜だけは手離したくない!

 だから、おれ、自信をつけたかったんだ。
 ふたりの関係を超えたい!

 おれのほうが凜を愛してること、証明する為に、梶くんに会いに来たんだ。

「大丈夫。僕が守るよ。君に壊されないように。凜の全部を受けとめて、守ってあげたい」