世界に変化が起きたのは、現在から100年ほど前のこと。ある1人の少女が、奇跡の力を持って生まれたのが始まりとされている。

 その少女は人の傷や病気を触れただけで、たちどころに治してしまうというのだ。
 その話を聞きつけた者は皆こぞって少女の元へ訪れ、自分や家族、恋人を治してほしいと懇願した。

 それに対して特に対価を求めなかった少女が『聖女』と崇められるようになるまで、それほど時間はかからなかった。彼女に治療された人間は健康そのものだったが、徐々に変化が見られるようになった。

 ある者は腕力が超人的に向上し、またある者は空を飛べるようになるなど、常軌を逸した能力が開花するようになる。
 人々はこの異能力を総称して『ラグラス』と呼んだ。
 ラグラスを手に入れた者の中には、犯罪に手を染める者が増加し、能力者が子を作ると、その子供にも生まれつき何かしらの能力が発現するケースも見られた。

 世界は混乱の渦に巻かれ白羽の矢がたったのが、元凶である始まりの少女である。今まで彼女を『聖女』と呼んでいた者たちは、今度は『悪魔』と呼び罵ったのだ。

 手のひらを返した一部の人民は、この悪魔を滅ぼさんとする組織を結成し、始まりの少女を手にかけてしまう。

 大きな時代のうねりを受けて、これに対抗するため、政府はとある組織を設立した。
 それは『ラグラス』を持つ人間が犯罪行為に手を染めた際に取り締まる警察機関『異能特殊警察』であった。