短編集

 つらい。
 いくら書いても、認識すらされない。
「きっと、いつかよくなるよ。」
いつかじゃなく今がつらいんだ。
 助けて。
 暗闇の中、必死に叫んだ。
 書いて、書きなぐって、鉛筆が折れて。
 それでも、書き続けた。
 いくら折れても、ただ、前を見て、見続けて...
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新人賞 受賞作品
「スターチス」(鬼灯 著)

 自分の名前はそこにはなかった。
 きっと最初から決まっていたんだ。
 自分には才能はなく、努力をしても無駄だった。
 暗い、暗い絶望の中、自分の希望や未来がどんどんと消えていくのを感じた。
 重い。とても大きな岩がのし掛かったように体も心も重くなる。
 なんで、なんで、なんで......
 もう、もう嫌だ。
 気が付いたら橋にいた。
 冬の寒い風が背中を押す。
 気が付いたら、さっきまでいた黒い橋の裏側が見えた。
 パァッと川の向こうが明るくなる。
 朝焼けだ。
 暗い、暗い夜に、一筋の琥珀色が朝を告げる。
 きっと明日も、その次にも明日が来る。
 一筋の希望が見えた。
 そして、一瞬にして光は消えて、何処までも暗く寒い絶望に、押し込まれた。
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₭₣₳₡新聞
 今朝未明、₢❱╬川付近で身元不明の水死体が発見された。
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