僕とひまりちゃんはかなり早めに登校すると、まっすぐに1年1組の教室へと向かう。
 するとそこには既に、雪希の姿があった。

「ラインでは聞いていましたけど、暁斗くん、すっかり元気そうですね。無事に治ったみたいで良かったです」

「それもこれも、雪希とひまりちゃんのおかげだよ。2人になら遠足のしおり作りを任せても大丈夫って思えたら、そこからはすごくよく眠れたんだ」

「信頼してもらえるのは嬉しいです」

「もうほんと、すごく信頼してる。ありがとね、雪希」
 しんどい時に助けてくれた雪希に、僕が心からのお礼を述べると。

「困った時はお互い様ですから。入学式の日にナンパに困っていた私を、暁斗くんが助けてくれたみたいに」
 雪希は天使のような微笑みを返してくれた。

「ちなみに原本はこれだよ、雪希ちゃん。昨日、雪希ちゃんが帰ってから最後のチェックをしてから印刷したんだ」

 家のプリンターで出力した遠足のしおりの原本を、ひまりちゃんが通学カバンから取り出して雪希に見せる。

「改めて見ても、すごくいい感じですね。少し見ただけでどこに何があって、どう行けばいいのかが分かります」

「僕も朝、家で見せてもらったんだけど、僕がこうしたいっていうのが完全に再現されててさ。たった1日でこんなにも完璧に仕上げるなんて、ひまりちゃんと雪希には本当に感謝しかないよ」

 これならクラスの皆も見てくれる――実際に参考にするかどうかは別にして――という確信が、既に僕の中にはあった。

「別にー、アキトくんの作ったテンプレートがあったから、わたしたちはそれに合わせただけだしー」

「ですよね、ひまりさん。私たちはそれに落とし込んだだけですから」

「いやいや、これは間違いなく2人のおかげだよ。こんなにも僕の考えを再現してくれてさ。そもそも僕一人じゃここまでの物はできなかっただろうし」

「そんなことないってー。テンプレートとまとめられた情報があれば、これくらいは余裕だしー」
「逆にそれがなければ、1日でこんな風に綺麗にはまとめられなかったと思います」

「いやいや、2人のおかげだって。アウトプットの段階は、僕はずっと寝込んでいたわけだし」

「ううん、アキト君のテンプレと集めてくれた情報のおかげだって」
「そうですよ」

「いやいや2人の仕事が良かったんだよ」
「だからアキトくんの事前準備のおかげだってばー」
「そうです、暁斗くんのおかげです」

 僕たちはまだ朝早くて、僕たち3人以外には誰もいない教室で、どうぞどうぞの遠慮合戦を繰り広げた。

 最終的に、

「じゃあ3人の力が合わさって、上手くできたってことで」
「異議なーし!」
「毛利元就の三本の矢の教えのごとし、ですね。3人の力が結集して完成させられたんです」

 という結論に落ち着いた。

 話がまとまったところで、3人で一緒に、職員室にいた担任の鈴木先生のところに原本を持っていく。

 鈴木先生は真剣な顔で、最初から最後までじっくりと目を通すと、

「これはまた、すごいものを作ったわね。下手な情報サイトよりも分かりやすいわよ? 特に観光名所の解説よりも、効率的な移動に重点を置いているのが素晴らしいわ」

 これでもかとべた褒めしてくれた。