そして翌日の月曜日。

「う~~~~ん、よく寝た~~~~!」

 朝6時に目を覚ました僕は、ベッドを降りると、両手を上に伸ばして大きく伸びをした。

 パキポキと身体が小気味よく鳴る。

 さらに両手を上に上げたまま上体を左右にそらしたり、マエケン体操のように肩をグルグル回してみたりと、身体を動かしてみる。

「うん、昨日は立っただけでしんどかったのに、今はまったく疲れも感じないし、ダルさもない。頭痛も消えて頭もスッキリしてるし、完全に回復したみたいだ」

 僕がストレッチをしつつ体調の回復を実感していると、コンコン、と軽快なノックの音がして、

「アキトくん、おはよー。起きたー?」

 ガチャリ。
 ドアが開いて、お気に入りのもふもふジェラピケパジャマを着たひまりちゃんがやってきた。

「おはようひまりちゃん。昨日はよく寝れた?」

「それはこっちのセリフだしー。よく寝れた、アキトくん? 体調はどう? しんどくない? 食欲はある? 学校って行けそう?」

 よほど心配なのだろう。
 ひまりちゃんは矢継ぎ早に質問をしてくると、トテトテと僕のところまでやってきて、おでこに手を当てて「熱はなさそうかな」と安心したように呟いた。

「ぐっすり寝て、体調もバッチリ。もう完全復活だね。学校も余裕で行けるよ」

 僕は元気になったことを分かりやすく示すために、右腕でグッと力こぶを作ってみせる。
 筋肉質じゃないので、そんなに盛り上がることはなかったけど、意図は伝わったはずだ。

「ほんと? よかった~! これなら明日の校外学習も大丈夫そうだね」

「うん、ひまりちゃんが色々と助けてくれたおかげ。ありがとうひまりちゃん」

「えへへ、どういたしまして。あ、雪希ちゃんにもラインしないと。すごく心配してたから」

「学校に行ったら、雪希にもちゃんとありがとうって言わないとだね」

「だねー」

 ひまりちゃんはにへらーと嬉しそうに笑ってから、だけど少し真面目な顔をして言った。

「でもでも、今日は安全運転だからね? 無理してぶり返したら元も子もないんだから」

「了解」

「何かあったらすぐ言ってね。すぐにヘルプするから」

「何もないとは思うけど、それも了解」

「ならばよし! というわけで……ぎゅー!」
 ひまりちゃんがギュッと抱き着いてきた。

「どうしたのさ、急に?」
「だってアキトくんが心配だったんだもん。治って良かった~」

「あはは、ひまりちゃんは心配性だなぁ。ただの過労だから、お医者さんもすぐに治るって言ってたでしょ?」

「それでも心配だったんだもん。アキトくんって滅多に風邪とかひかないし」

 ひまりちゃんが甘えるように、おでこをぐりぐりと擦るように押し付けてくる。

「心配してくれてありがとう。でも本当にもうすっかり元気だから」
「うん! よかった! えへへー」

 なんて言いながら、いつまで経っても離れてくれない甘えんぼなひまりちゃん。
 ま、幸いなことに、学校に行くまでにはまだ十分な時間はある。

 甘えんぼなひまりちゃんの頭を、僕はしばらくの間、優しく撫で続けてあげたのだった。