クラス会議を終えてから初となる体育の時間。
 場所は体育館で、種目はもちろん新入生球技大会で行われるバスケットボールだ。

 体育館を半分にして小さめのコートを2面作り、男女別れてそれぞれ練習をする。

 幸か不幸か、このクラスには4人のバスケ部員と3人の経験者がいる。
 彼らは僕たちズブの素人軍団に、初心者向けのコツやテクニックを惜しげもなく教えてくれた。

 それもあってか、体育の先生はこれ幸いと早々に椅子に座って何らかの事務仕事を始めている。
 時々、顔を上げて視線を向けてきているので、まったく見ていないってことはないんだろうけど、一応授業なのにいいのだろうか?

 そんな懸念を感じなくもない中で行われるバスケットボールの練習、その主役は運動部の生徒たち──ではなく。
 もちろん僕なわけでもなく──可愛い可愛い義妹たるひまりちゃんだった。

 休憩がてら、女子のバスケ練習を眺めていると、ちょうどひまりちゃんがオフェンスに入るところだった。

「雪希ちゃん、こっちパス!」
「ひまりさん、お願いします!」

 白地に袖・首元にだけ赤ラインが入った学校指定のシンプルな半そで体操服&ハーフパンツ姿のひまりちゃんが、同じく体操服&ハーフパンツの雪希から、中央のスリーポイントラインあたりでパスを受けた。

 ボールをキャッチしたひまりちゃんは、軽くシュートフェイントをしてディフェンスを牽制してから、ドリブルで鋭くゴール下へと切り込むと、急停止。

 マーカーのデイフェンスが止まりきれずに離れたところを見逃さず、跳びあがる。
 そのまま左手を添えただけの美しいフォームで、あっさりとシュートを決めてみせた。

 体操服の裾がはだけて色白でスレンダーなお腹と、可愛らしいおへそがチラリとするのが目に眩しい。

「やりっ!」
「ひまりさん、ナイシューです!」

 ひまりちゃんが躍動するたびに、スポーツ用に高めのセンターでまとめたポニーテールが、ポンポンと軽やかに跳ねて揺れた。

 と、同時に、体操服の中に収められた胸も盛大に揺れていた。
 ひまりちゃんがジャンプをするたびに、ひまりちゃんの胸が、それはもう盛大にたゆんたゆんと波打ってしまう。

 休憩中に雑談しながら試合を眺めていた男子たちが、ひまりちゃんがジャンプするたびに、一斉に静かになった。

 若干、イラっとする僕。
 まったく、これだから男子は。

 ひまりちゃんは最近、成長著しい。
 特に胸のあたりが。

 ついこの間も、

『ねぇねぇアキトくん。またブラのカップが大きくなっちゃった♪ だから買い替えないといけないの♪ 今度はGカップだよ? お気に入りのブラも入らなくなっちゃうし、もうやんなっちゃうよねー♪』
『ひまりちゃん、そういうことはイチイチ僕に言わなくていいからね』

『ちゃんと報告しておかないと、何かあった時に大変だしー♪』
『僕がひまりちゃんのブラサイズが変わったことを知らなかったからって、何があるって言うのさ……』

 妙に嬉しそうに報告をされたばかりだ。

 でもこれはあれだな。
 運動をする時は、胸が揺れにくいスポーツブラをするように、後でひまりちゃんに言っておかないと。

 これは兄である僕の責務なのであって、ひまりちゃんへの独占欲とかじゃないからね。
 って、なんで自分の心に言い訳しているんだ、僕は。

 そんな風に、ひまりちゃんのプレーに女子が沸き、男子が静かになり、僕が誇らしい気持ちの中にわずかなイラツキを覚える中。
 味方にピースをしてすぐに守備につくひまりちゃんは、女子チームのエースになるであろうことを既に予感させてくれた。

 その後もひまりちゃんは元気いっぱいのプレーで次々と得点を重ねていく。

 と、
「妹さん、センスいいね。なにより相手の動きをよく見てるよ。観察眼って言うのかな。すごいもんだ」

 バスケ部員の1人が話しかけてきた。