死に戻った私の幸せな人生



翌日、神宮寺家当主である神宮寺孝也(じんぐうじたかや)と孝臣が影山家にやって来た。黒髪に琥珀色の瞳を持つ2人は良く似ており、親子だと一目で分かる程だ。あやかしの血を引くものは総じて容姿端麗だが、孝也と孝臣は抜きん出ていた。彼らの周りだけ光っている。2人を応接室に通した祖父も家令も緊張が顔に出ていた。そして柚月もだった。

柚月は遠目で孝臣を見かけることはあってもこんな至近距離で話すのはパーティー以来。漆黒の髪に鋭さを帯びた琥珀の瞳、鼻筋の通った端正な顔立ちはとても14歳には見えないほど大人びていた。ツンと澄ました表情の孝臣は柚月に視線を向けている。何故だかガン見されており、柚月は落ち着かない。

「いやいや、この度は急に押しかけて申し訳ありません」

ニコニコと朗らかに笑う孝也。祖父は明らかに緊張していたものの孝也の友好的に見える態度に緊張を緩めた。

「まさか、神宮寺様直々にお声がけいただけるなど光栄でございます…今回、孫娘の柚月と御子息の孝臣様を婚約させたいとのことですが」

「そうそう、うちの息子6年前のパーティーで柚月さんに会って以来、ずっと忘れられなかったようで」

「おいクソ親父!」

信じられない言葉が孝也の口から放たれた瞬間、孝臣の綺麗な眉が吊り上がり暴言を放つ。怒り立つ息子に孝臣は涼しい顔だ。

「何だ?意気地無しの息子に代わり父さんが一肌脱いでやったのに何故怒るんだ」

「…そういうのはいつか自分の口で」

「何年後になるんだろうねぇ。それにお前元々口数多い方じゃないだろ。父さんには見える、大事なことを何も言わない孝臣と柚月さんが拗れに拗れる未来が。父さんがそうだったからな。血は争えないんだよ」

「…」

孝臣は孝也の言い分に思うところがあったのか黙ってしまった。祖父と柚月はポカンと2人を見ている。孝也は構わず話を続けた。

「…まあ、私はこう見えて親バカでしてね。息子の願いを叶えてやろうと思った次第でして」

「…つまり御子息はその、柚月のことを」

「それ以上は勘弁してやってください。息子のメンタルが持ちませんので」

「失礼いたしました。しかし、何故私に話を持って来たのですか?柚月は私の孫ですがつい最近まで疎遠だったのですよ」

「柚月さんのことを調べさせてもらいましてね。東雲殿は親としても人としても信用出来ない。それなら交流がなくとも柚月さんを気にかけていた影山殿の方が、まだ信用出来ますから」

褒めてるのか微妙な言い回しに祖父は額に汗を掻く。父の言葉を鵜呑みにして柚月を放置していたことを遠回しに責められている気持ちになっているようだ。孝臣が祖父を本当に責めているのかどうかは分からなかった。

「柚月さんからしたら迷惑でしょう。こちらは権力にものを言わせて無理矢理承諾させたようなものですから」

「いいえ、滅相もございません。神宮寺孝臣様は同年代は勿論、学園中の女子の憧れの的。そのような方から望まれるのは誉れです」

「あはは、柚月さんは12歳と聞いてましたが、言葉使いが子供とは思えませんね」