柚月は早速行動に移した。今日は母方の祖父母に会いに行くつもりだ。祖父母は母の葬式で会ったきりで、前の人生では交流がほぼなかった。今にして思えば実家に居づらいのなら真っ先に頼るべき人達だったのに没交渉だった。

(使用人が、祖父母は嫁いだ母にもその娘にも関心が全く無いと私に散々吹き込んだのよね。両親に構ってもらえないからと向こうに行ったって迷惑なだけだから辞めろと)

母は物心つく前に亡くなったので、祖父母のことや生家でどう過ごしていたか知らない。前の人生で柚月は両親や使用人にすら軽んじられていたせいか、誰からも必要とされないと思い込んでいた。だから使用人の話を聞いて、祖父母も味方にはなってくれないと頼ることを諦めた。

当然柚月は祖父母に真偽を確かめたことはない。顔を合わせても事務的な会話をして終わっていた。今にして思えば、使用人の話を鵜呑みして殻に閉じこもるなんて愚かであったと自嘲する。

(お祖父様たちが私に無関心かどうかなんて、聞かなければ分からないのに)

今回はそれを確かめるべく母の生家である影山(かげやま)家を訪ねる。栞の協力を得て影山家に大事な話があるので会いたい、と手紙を書いて送り一昨日その返事が来た。そして今日会う約束を取り付けたのだ。電車を乗り継ぎ、バスに乗って少し歩くと影山邸が見えてくる。東雲邸と同じくらい立派な日本家屋だ。門の前に立っている警備員に話しかけて名前を告げると「お待ちしておりました」と門を開けて柚月を中に入れてくれた。

玄関には家令らしき年配の男性が待っていた。