死に戻った私の幸せな人生


東雲家に戻った柚月には栞の他に2人の使用人が付いた。そのうちと1人は所謂監視役なので常時付いている訳ではないらしい。栞より少し年上の2人は柚月を仕えるべき主人として敬意を払ってくれている。それが初めての経験に近かったので戸惑いの方が大きいが、本来がこうなのであり慣れるべきだと言われれば頷くしかない。

影山家から派遣された2人、そして祖父の脅しの成果が出て柚月を軽んじる使用人は居なくなり、逆に恐れられるようになった。こんなあっさりと立場が逆転するとは。益々殻に閉じこもっていた前の人生が悔やまれる。自分を顧みない存在なんてさっさと見切りを付ければ良かった。

部屋から出て唯一良く出入りしている書斎に向かう途中、美月を見かけた。自分の物を欲しがる時しか話しかけてこない美月は両親から何か言われているのか、物言いたげな顔をしてこちらを見ている。足元にいる黒猫…ノアが全身の毛を逆立たせて警戒していた。

(前のあの子と今のあの子は違うと理解してるけど。全てを水に流して仲良く姉妹をやろうという気にはならない)

元々姉妹としての関係を築けていなかった。ただ我儘を叶え尻拭いをするためだけの姉だった。美月から悪口を言われた記憶はないが、両親が腫れ物に触るような扱いをしている柚月のことを内心見下していたのかもしれない。それも自覚していたのではなく、無意識に。悪意がなかったのだ。だからタチが悪い。雄一のことも「柚月」のものだから欲しくなったのか、それとも「人」のものだから欲しがるのか。

(今のあなたは少し我儘なだけの妹だけど。私からしたら絶望に叩き落とした妹なのよ)

だから仲良くなれそうにはない、と柚月は美月から視線を逸らした。