太古の日本では、あやかしは怪異な事を起こし人間に害をなす存在として忌み嫌われていた。その存在は不明瞭であるにも関わらず、この世で起こったあらゆる災いは彼らのせいなのだと信じて疑わなかった。

 あやかしの住む世界である隠り世(かくりよ)、人間の住む世界である現し世(うつしよ)――
 この二つの世界を行き来することができるのは圧倒的な力を持つ上位のあやかしのみだという。その上位のあやかしでさえ現し世に来ることは滅多になく、あやかしが人間に害を与えることなど限りなくゼロに近かった。


 ある年、日本は千年に一度の天災に見舞われた。何か月も止むことのない雨に町は浸水していき、尋常ではない雷が鳴り響く。このままでは日本が消滅するのも時間の問題だと人々は絶望した。

 ――この状況から日本を救った者がいた。
 あやかしの中で最も力を持っている種族である鬼。その鬼のトップに君臨する存在がこの天災を終わらせたのだ。力を持つあやかしたちを説得し、皆で力を合わせて天災を終わらせた。

 本来、隠り世は現し世に影響を受けない。彼らにとって日本がなくなったとて関係のないことである。しかし、何の気まぐれか現し世を、日本を救った。

 人間はその気まぐれに驚きこそはしたものの感謝した。今までの嫌悪がなかったかのように、あやかしは人間と共存できるのだと歓迎した。そして人間とあやかしは手を取り合い日本は復興し、これまで以上の技術力を得たのだ。

 その後、隠り世と現し世の境界は曖昧になっていき、人間とあやかしは同じ世界で暮らしていくようになった。