りんの言葉に、千秋も、そして静観していた九重までが驚きの声をあげた。
「何言うてるんや? 勝つて言うてたやないか」
「そやかて、この人……帰ろうと思てるんでしょう? うちを喰おうとしてるんやのうて」「そんな、まさか……」
「だって、どう考えてもおかしいやないですか。うちに取り憑いても、若様の霊力は戻ってない……若様が料理を作るのなんか待たんと、二人とも喰うてしもたらええ話やないですか」
「それは、まぁ……そうやけど」
「それをせえへんということは、うちも若様も焚きつけて、うまいこと門を開けるように仕向けようとしてた……いうことやないですか」
りんは、切っ先を向けるように、言葉を投げつけた。突きつけられた九重は、苦々しい面持ちを浮かべて、大きなため息をついた。
「はぁ……あとちょっとやったのになぁ」
「図星か……えらい回りくどいことをするもんやな」
千秋の刺々しい声を、九重は鼻で笑い飛ばした。
「他に方法があれへんのやから、しゃあないわな。開いとる門がないか、自分で門が開けられへんか、色々探し回ったけんど、どれもうまくいかんかった。門守に開けてもらうほかには、道がなかった」
「……門守?」
「門を開く者……お前のことや」
苦笑いとため息、両方同時に零れさせて、九重は言う。
「自分のこともようわかっとらん者に頼らなあかんねんから、そら手段なんか選んでられへんわ」
「手段を選んでられへん……村の人を全員……殺したんも、そういうことなん?」
りんの瞳は、じわりと滲んでいた。それを見た九重から、薄ら笑いが消えた。そして、目を逸らして、答えた。
「……さぁな、言うたやろ。忘れた、て」
そんな投げやりな物言いに、りんはまた拳を握りしめた。
「そんなん……ずるいわ。自分一人、望みを叶えようとして……そのために、何も悪いことしてへん人をたくさん死なせて、最後は逃げ帰ろうやなんて、許されへん!」
身を乗り出して叫ぶりんを、千秋が宥める。だが、りんの言葉を否定はしなかった。
「ずるい……か。ほな、どないする? 帰さんのやったら、どうやって始末をつけるんや?」
問われたりんは、迷わず答えた。
「ここに……現世に残って、若様を手伝っとくれやす」
「何言うてるんや? 勝つて言うてたやないか」
「そやかて、この人……帰ろうと思てるんでしょう? うちを喰おうとしてるんやのうて」「そんな、まさか……」
「だって、どう考えてもおかしいやないですか。うちに取り憑いても、若様の霊力は戻ってない……若様が料理を作るのなんか待たんと、二人とも喰うてしもたらええ話やないですか」
「それは、まぁ……そうやけど」
「それをせえへんということは、うちも若様も焚きつけて、うまいこと門を開けるように仕向けようとしてた……いうことやないですか」
りんは、切っ先を向けるように、言葉を投げつけた。突きつけられた九重は、苦々しい面持ちを浮かべて、大きなため息をついた。
「はぁ……あとちょっとやったのになぁ」
「図星か……えらい回りくどいことをするもんやな」
千秋の刺々しい声を、九重は鼻で笑い飛ばした。
「他に方法があれへんのやから、しゃあないわな。開いとる門がないか、自分で門が開けられへんか、色々探し回ったけんど、どれもうまくいかんかった。門守に開けてもらうほかには、道がなかった」
「……門守?」
「門を開く者……お前のことや」
苦笑いとため息、両方同時に零れさせて、九重は言う。
「自分のこともようわかっとらん者に頼らなあかんねんから、そら手段なんか選んでられへんわ」
「手段を選んでられへん……村の人を全員……殺したんも、そういうことなん?」
りんの瞳は、じわりと滲んでいた。それを見た九重から、薄ら笑いが消えた。そして、目を逸らして、答えた。
「……さぁな、言うたやろ。忘れた、て」
そんな投げやりな物言いに、りんはまた拳を握りしめた。
「そんなん……ずるいわ。自分一人、望みを叶えようとして……そのために、何も悪いことしてへん人をたくさん死なせて、最後は逃げ帰ろうやなんて、許されへん!」
身を乗り出して叫ぶりんを、千秋が宥める。だが、りんの言葉を否定はしなかった。
「ずるい……か。ほな、どないする? 帰さんのやったら、どうやって始末をつけるんや?」
問われたりんは、迷わず答えた。
「ここに……現世に残って、若様を手伝っとくれやす」