「お前は、出来損ないだ!」
その言葉は聞き飽きたなと頭の中で考える。
「そんなお前は、水神の生贄花婿(・・・・)になるんだ」
「水神さま・・・」
水神様とは、水の神であり雨を降らしたりできる神のことだ。
けれど、今年は梅雨の季節に入ったというのに一向に雨が降らない。
「明日には、儀式を行うからな」
そう言って、父さんは出ていった。
父さんが出ていったドアを数秒見つめ、口からため息がこぼれる。
「花婿ってなんだよ」
この家の次男であり、『宮代家』の出来損ないである俺はまたもやため息がもれる。
これは、村のためでもあるがこの村をおさめる『宮代家』としては見逃せない。
そして、生贄にするならば『宮代家』の出来損ないを排除しようとしてるんだろう。
「そんなことして何になるんだか」
兄さんが優秀で、それに比べて俺は普通すぎた。
そのせいで、父さんたちからずっと『出来損ない』と言われ続けていた。