今、初夏なのね……。
なに間抜けなこと言ってるの? と、言われそうだけど、いろいろありすぎて季節を忘れていたのだからしょうがないじゃない。
初夏の山菜がいっぱい。天ぷらにしたら美味しいかも。
異次元屋がある世界はたくさんの調理法があり、小麦粉を水で溶き、野菜をつけて油で揚げる。初めて食べたときは口が落ちるかと思うくらい衝撃的だったわ。
市を回り、山菜を大量に買い占めていると、蜂蜜を売っている屋台があった。
「おじさん。この蜜は養蜂ですか?」
瓶に入った蜜は綺麗で黄色味を帯び、不純物がない。これは布で何度か濾している証拠だ。
「ああ。ボルム村の特産だよ」
「じゃあ、蜂蜜酒も作ってるんですか?」
「ああ、作っておるよ。まあ、酒はミズニー商会に卸してるがな」
ミズニー商会ね。よし。
蜂蜜をいくつか買い、ミズニー商会の場所をおじさんに聞いて向かった。
「シャーリー嬢。一度、館には戻ってはいかがですか? 昼を過ぎてますし」
え? お昼? あ! 買い物に夢中になって忘れてたわ!
「す、すみません! わたしったら考えなしで。皆さん、お腹空いてますよね」
と言うか、思い出したらわたしもお腹空いてきた。お腹の虫が鳴く前に黙らせないと大恥かいちゃうわ。
「いえ、大丈夫ですよ。では、戻りましょう」
ナタリーさんに目配せして、男爵様の館へと戻った。
館につくと、先に走らせた兵士さんによりガルズ様たちが迎えてくれた。
「騎士様や兵士さんたちを長く付き合わせて申し訳ありませんでした」
準備に忙しいときに長く付き合わせたことに謝罪した。
「いえいえ、何事もなくなによりです。買い物はできましたか?」
「まだ欲しいものはありますが、わたしの我が儘に皆様のお昼を我慢させるのは申し訳ないので一旦戻って来ました」
「お気遣いありがとうございます。では、すぐに用意致しましょう」
「あ、失礼を承知でお願いしたいのですが、厨房をお借りできますでしょうか? 付き合わせたお詫びに皆様にお昼をご馳走したいので」
せっかくだから皆さんに天ぷらをご馳走しましょうか。一人で食べるのは気が引けますしね。
「旦那様。シャーリー嬢は料理もできるそうですよ」
戸惑いの顔をしているガルズ様にナタリーさんが助け船を出した。援護、ありがとうございます。
「あ、ああ。そうか。では、ダイグン殿にお願いしよう」
ありがとうございますとお礼を述べて厨房へと案内してもらった。
男爵家の厨房は……まあ、こんなものでしょう。城と比べるのは失礼だわ。
「料理長のダボアです。お好きに使ってください」
小太りの中年男性は、自分の城を嫌な顔を見せず、それどころか乗り気な感じで厨房を貸してくれた。ガルズ様、なにか言ったのかしら?
まあ、嫌われてないのなら遠慮なくお貸しいただきますと、まずは清浄と浄化で厨房を綺麗にする。美味しいはまず綺麗からよ。
「……す、凄い……」
なかなか頑固な汚れだったけど、わたしの清浄と浄化の前にはどんな汚れも敵わない。わたしを屈服させたいのなら百年物を持って来るのね!
なんて冗談はともかく、魔法で水を出して空中に浮かべ、市で買った山菜を水へと入れていく。
「ダボアさん。油はありますか?」
「あ、はい。これです」
瓶に入った油はニナ豆から絞ったもので、あまり質はよくない。二等級かしら? まあ、ろ過すれば問題ないわね。
魔力で油を包み込み、不純物を排除して鉄鍋に入れる。
竃に火を放ち、油を加熱する。その間に小麦粉を水で溶かし、水に入れた山菜を洗って水切り。まだ油の温度が上がらないので、トマトを出して皮を剥き、四等分にしてお皿に盛る。
一つ味見してみる。
「苦味があるわね」
トマトは異次元屋がある世界から流れて来たものだけど、この世界に適応したことにより苦味が強くなり、城の庭園であちらの方法で育ててるものを食べてる身としてはちょっと抵抗があるわね。
そう言えば、リュージさんが昔はトマトに砂糖や塩をかけて食べてたって言ってたわね。
異次元屋で砂糖を買っててよかったわ。
トマトに砂糖をかけ試食。う~ん。不味くはないけど、なにか微妙ね。
「ダボアさん。ちょっと試食をお願いできますか?」
わたしの舌では判断できないわ。
フォークで砂糖がかなったトマトを刺し、恐る恐る口にした。
「こ、これは砂糖ですか!?」
あれ? もしかして、砂糖が貴重なところだったかしら?
砂糖が当たり前な環境にいたから忘れていたけど、砂糖は高級品だ。貴族ならまだしも一般庶民にはなかなか手に入らないと聞いたことがあるわ。
「はい。質のいいものですよ」
今さら誤魔化しても無駄なら隠すことなく当たり前のものとして押し進めましょう、だ。
「そ、そのようですね。ざらつきがまったくありませんし、こんな白い砂糖など初めて見ました」
まあ、異次元屋から買ったものですからね。質はこの世界の比ではありませんです。
「それより味はどうでしょうか? 感想をお聞かせください。美味しいでしょうか?」
「美味しいです! トマトに砂糖が合うなど初めて知りましたよ!」
あ、美味しいんだ。なんだか自分の舌に自信がなくなるわね……。
「わたしもいただいてよいかな?」
と、ガルズ様だちが欲しそうな顔をしていたのでトマトを出すと、ダボアさんと同様、美味しそうに食べていた。
これは、自分と他人の味覚を調べなくちゃ変なもの出しちゃいそうね。
あ、その前に山菜を揚げなくちゃ。他人の味覚より自分のお腹を鎮めるのが先だわ。
なに間抜けなこと言ってるの? と、言われそうだけど、いろいろありすぎて季節を忘れていたのだからしょうがないじゃない。
初夏の山菜がいっぱい。天ぷらにしたら美味しいかも。
異次元屋がある世界はたくさんの調理法があり、小麦粉を水で溶き、野菜をつけて油で揚げる。初めて食べたときは口が落ちるかと思うくらい衝撃的だったわ。
市を回り、山菜を大量に買い占めていると、蜂蜜を売っている屋台があった。
「おじさん。この蜜は養蜂ですか?」
瓶に入った蜜は綺麗で黄色味を帯び、不純物がない。これは布で何度か濾している証拠だ。
「ああ。ボルム村の特産だよ」
「じゃあ、蜂蜜酒も作ってるんですか?」
「ああ、作っておるよ。まあ、酒はミズニー商会に卸してるがな」
ミズニー商会ね。よし。
蜂蜜をいくつか買い、ミズニー商会の場所をおじさんに聞いて向かった。
「シャーリー嬢。一度、館には戻ってはいかがですか? 昼を過ぎてますし」
え? お昼? あ! 買い物に夢中になって忘れてたわ!
「す、すみません! わたしったら考えなしで。皆さん、お腹空いてますよね」
と言うか、思い出したらわたしもお腹空いてきた。お腹の虫が鳴く前に黙らせないと大恥かいちゃうわ。
「いえ、大丈夫ですよ。では、戻りましょう」
ナタリーさんに目配せして、男爵様の館へと戻った。
館につくと、先に走らせた兵士さんによりガルズ様たちが迎えてくれた。
「騎士様や兵士さんたちを長く付き合わせて申し訳ありませんでした」
準備に忙しいときに長く付き合わせたことに謝罪した。
「いえいえ、何事もなくなによりです。買い物はできましたか?」
「まだ欲しいものはありますが、わたしの我が儘に皆様のお昼を我慢させるのは申し訳ないので一旦戻って来ました」
「お気遣いありがとうございます。では、すぐに用意致しましょう」
「あ、失礼を承知でお願いしたいのですが、厨房をお借りできますでしょうか? 付き合わせたお詫びに皆様にお昼をご馳走したいので」
せっかくだから皆さんに天ぷらをご馳走しましょうか。一人で食べるのは気が引けますしね。
「旦那様。シャーリー嬢は料理もできるそうですよ」
戸惑いの顔をしているガルズ様にナタリーさんが助け船を出した。援護、ありがとうございます。
「あ、ああ。そうか。では、ダイグン殿にお願いしよう」
ありがとうございますとお礼を述べて厨房へと案内してもらった。
男爵家の厨房は……まあ、こんなものでしょう。城と比べるのは失礼だわ。
「料理長のダボアです。お好きに使ってください」
小太りの中年男性は、自分の城を嫌な顔を見せず、それどころか乗り気な感じで厨房を貸してくれた。ガルズ様、なにか言ったのかしら?
まあ、嫌われてないのなら遠慮なくお貸しいただきますと、まずは清浄と浄化で厨房を綺麗にする。美味しいはまず綺麗からよ。
「……す、凄い……」
なかなか頑固な汚れだったけど、わたしの清浄と浄化の前にはどんな汚れも敵わない。わたしを屈服させたいのなら百年物を持って来るのね!
なんて冗談はともかく、魔法で水を出して空中に浮かべ、市で買った山菜を水へと入れていく。
「ダボアさん。油はありますか?」
「あ、はい。これです」
瓶に入った油はニナ豆から絞ったもので、あまり質はよくない。二等級かしら? まあ、ろ過すれば問題ないわね。
魔力で油を包み込み、不純物を排除して鉄鍋に入れる。
竃に火を放ち、油を加熱する。その間に小麦粉を水で溶かし、水に入れた山菜を洗って水切り。まだ油の温度が上がらないので、トマトを出して皮を剥き、四等分にしてお皿に盛る。
一つ味見してみる。
「苦味があるわね」
トマトは異次元屋がある世界から流れて来たものだけど、この世界に適応したことにより苦味が強くなり、城の庭園であちらの方法で育ててるものを食べてる身としてはちょっと抵抗があるわね。
そう言えば、リュージさんが昔はトマトに砂糖や塩をかけて食べてたって言ってたわね。
異次元屋で砂糖を買っててよかったわ。
トマトに砂糖をかけ試食。う~ん。不味くはないけど、なにか微妙ね。
「ダボアさん。ちょっと試食をお願いできますか?」
わたしの舌では判断できないわ。
フォークで砂糖がかなったトマトを刺し、恐る恐る口にした。
「こ、これは砂糖ですか!?」
あれ? もしかして、砂糖が貴重なところだったかしら?
砂糖が当たり前な環境にいたから忘れていたけど、砂糖は高級品だ。貴族ならまだしも一般庶民にはなかなか手に入らないと聞いたことがあるわ。
「はい。質のいいものですよ」
今さら誤魔化しても無駄なら隠すことなく当たり前のものとして押し進めましょう、だ。
「そ、そのようですね。ざらつきがまったくありませんし、こんな白い砂糖など初めて見ました」
まあ、異次元屋から買ったものですからね。質はこの世界の比ではありませんです。
「それより味はどうでしょうか? 感想をお聞かせください。美味しいでしょうか?」
「美味しいです! トマトに砂糖が合うなど初めて知りましたよ!」
あ、美味しいんだ。なんだか自分の舌に自信がなくなるわね……。
「わたしもいただいてよいかな?」
と、ガルズ様だちが欲しそうな顔をしていたのでトマトを出すと、ダボアさんと同様、美味しそうに食べていた。
これは、自分と他人の味覚を調べなくちゃ変なもの出しちゃいそうね。
あ、その前に山菜を揚げなくちゃ。他人の味覚より自分のお腹を鎮めるのが先だわ。