しばらくして店員さんが商品を運んで来てくれた。
テーブルに並べられたものは、魔物の革の見本と水地《みずち》蜘蛛の毛糸。骨、革製品、魔道具などだ。
「我が商会は、貿易を主にしております。王都や各都市にも支店があり、大抵のものは取り寄せることができます」
へ~。大きな商会なのね。カルビラス王国で言うルルオルン商会みたいなものかしらね?
「まあ、女性に興味があるものは少ないでしょうが、興味を引くものはありますか?」
興味、ね~。あるとすれば魔石かしらね。
「魔石はこれだけですか?」
爪先くらいの魔石を指差した。緑色からして巨人鬼かな?
「ものは小さくなりますが、たくさんありますよ。ここは、冒険者の町ですので」
魔物から取れる魔石は魔道具を動かす元となり、取引されてるとは聞いたことがあるけど、こんなちっぽけな魔力でなにを動かすのかしらね?
わたしの魔力はこれのうん千倍。魔道具なんていらないから想像もできないわ。
「あの、この魔石とこれで買える魔石をいただけませんか?」
お金が入った小袋をテーブルに置いた。
「……差し支えがなければ、なにに使うか教えいただけますか?」
「知人が欲しがってたので、お土産にしようかと思いまして」
と言うのはウソで、異次元屋に売ろうと思っている。
魔石は長い年月をかけて固形化したもの。保存しておくにはちょうどよい状態とか。魔素のままだと保存しておくにも魔力を必要とするのだ。特に異次元屋の世界では魔力拡散現象と言うものがあり、溜めておくにも一苦労らしいわ。
魔力は微々たるものでも魔石としての維持できるのなら欲しがるはず。まあ、ポイントも微々たるものでしょうけど、これから十年城の外で生きなくちゃならないのなら一ポイントでも貯めておくに越したことはないわ。
……お菓子のない人生なんて堪えられないわ……。
「そうですか。失礼なことを訊いてしまいました。すぐにご用意しますね」
と、一抱えある箱で持って来た。え? 魔石って安いものなの?
「言い方は変ですが、ここは魔物の産地。他の都市に運ばれる前はとても安いのですよ」
まあ、運ぶのも手間がかかるしね、あまりに高いと誰も買わなくなるか。
「そうなんですか。いい買い物ができてよかったです」
「もし、さらに必要な場合はガルズ様にお伝えください。カルビラス王国にも我が商会と親しくしている商会があります。魔石も卸しているのですぐに用意できますので」
「はい。そのときはお願いします」
まだ異次元屋で買い取ってくれるかわからないし、おば様のところにいってから考えればいいか。
「失礼します。マンドル商会の方がお越しになりました」
「わかった。シャーリー嬢。他に興味のものはありますか?」
「いえ、ありません」
旅に必要なのはなさそうだし。
テーブルに並べられたものを素早く片付けられ、新たな人が荷物を抱えて部屋へと入って来た。
「急にすまないな。こちらはシャルロット・マルディック男爵令嬢だ。ご挨拶を」
ん? 男爵令嬢としての紹介なの? なぜに? まあ、よくわからないときは流れに身を任せるのが一番ね。
「は、初めまして。マンドル商会が主、ノードと申します」
なにやらお堅いご様子。もしかして、緊張してる?
「庶民を相手にしている商会なので、多少のご無礼はお許しくださいませ」
「今は侍女としての身。過度な敬いは必要ありませんよ」
男爵令嬢扱いされても困る。なんちゃって男爵令嬢ですし。
「ありがとうございます。ノードさん。商品をお願いします」
と、ノードさんがテーブルに出したのは布と裁縫道具だった。
「一流品とはいきませんが、良いものを持参しました」
確かに質はよくないわね。けど、旅の間に使うには充分か。
「では、これとこれ、あと、この裁縫道具をお願いします」
必要なものを選び出す。
「ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございます。いい買い物ができました」
床につきそうな勢いで頭を下げてノードさんが部屋を出ていった。
「結構な量になってしまったわね」
必要最低限に選んだとは言え、棚一つ分になってしまった。他にもあるのに凄い量になりそうだわ。持って帰れるかしら?
「すみません。量が凄いことになりそうなので一度戻って入れ物を持って来ます」
こんなことなら鞄を持って来るんだった。わたし、考えなさすぎたわ。
「大丈夫ですよ。帰りは商会の者が運びますから」
「結構な量になりますけど……」
「先ほど言ったように男爵家御用達の商会。持たせて帰したら商会の恥ですよ」
そう言うものなの? まあ、異空間に放り込むこともできるけど、それはおばあ様から人前ではするなと止められている。ここは、サナリオさんの言葉に甘えておきましょう。
「ありがとうございます。良い商会ですね」
ルルオルン商会しか知らないけど、それと同じくらい優遇してくれてる。大きな商会はお客様を大事にするものなのね。
「そう言っていただけるなら誇らしいことです」
運んでくれるのなら必要最低限と心配することはないわね。欲しいものがあったら遠慮なく買わせていただきましょうっと。
テーブルに並べられたものは、魔物の革の見本と水地《みずち》蜘蛛の毛糸。骨、革製品、魔道具などだ。
「我が商会は、貿易を主にしております。王都や各都市にも支店があり、大抵のものは取り寄せることができます」
へ~。大きな商会なのね。カルビラス王国で言うルルオルン商会みたいなものかしらね?
「まあ、女性に興味があるものは少ないでしょうが、興味を引くものはありますか?」
興味、ね~。あるとすれば魔石かしらね。
「魔石はこれだけですか?」
爪先くらいの魔石を指差した。緑色からして巨人鬼かな?
「ものは小さくなりますが、たくさんありますよ。ここは、冒険者の町ですので」
魔物から取れる魔石は魔道具を動かす元となり、取引されてるとは聞いたことがあるけど、こんなちっぽけな魔力でなにを動かすのかしらね?
わたしの魔力はこれのうん千倍。魔道具なんていらないから想像もできないわ。
「あの、この魔石とこれで買える魔石をいただけませんか?」
お金が入った小袋をテーブルに置いた。
「……差し支えがなければ、なにに使うか教えいただけますか?」
「知人が欲しがってたので、お土産にしようかと思いまして」
と言うのはウソで、異次元屋に売ろうと思っている。
魔石は長い年月をかけて固形化したもの。保存しておくにはちょうどよい状態とか。魔素のままだと保存しておくにも魔力を必要とするのだ。特に異次元屋の世界では魔力拡散現象と言うものがあり、溜めておくにも一苦労らしいわ。
魔力は微々たるものでも魔石としての維持できるのなら欲しがるはず。まあ、ポイントも微々たるものでしょうけど、これから十年城の外で生きなくちゃならないのなら一ポイントでも貯めておくに越したことはないわ。
……お菓子のない人生なんて堪えられないわ……。
「そうですか。失礼なことを訊いてしまいました。すぐにご用意しますね」
と、一抱えある箱で持って来た。え? 魔石って安いものなの?
「言い方は変ですが、ここは魔物の産地。他の都市に運ばれる前はとても安いのですよ」
まあ、運ぶのも手間がかかるしね、あまりに高いと誰も買わなくなるか。
「そうなんですか。いい買い物ができてよかったです」
「もし、さらに必要な場合はガルズ様にお伝えください。カルビラス王国にも我が商会と親しくしている商会があります。魔石も卸しているのですぐに用意できますので」
「はい。そのときはお願いします」
まだ異次元屋で買い取ってくれるかわからないし、おば様のところにいってから考えればいいか。
「失礼します。マンドル商会の方がお越しになりました」
「わかった。シャーリー嬢。他に興味のものはありますか?」
「いえ、ありません」
旅に必要なのはなさそうだし。
テーブルに並べられたものを素早く片付けられ、新たな人が荷物を抱えて部屋へと入って来た。
「急にすまないな。こちらはシャルロット・マルディック男爵令嬢だ。ご挨拶を」
ん? 男爵令嬢としての紹介なの? なぜに? まあ、よくわからないときは流れに身を任せるのが一番ね。
「は、初めまして。マンドル商会が主、ノードと申します」
なにやらお堅いご様子。もしかして、緊張してる?
「庶民を相手にしている商会なので、多少のご無礼はお許しくださいませ」
「今は侍女としての身。過度な敬いは必要ありませんよ」
男爵令嬢扱いされても困る。なんちゃって男爵令嬢ですし。
「ありがとうございます。ノードさん。商品をお願いします」
と、ノードさんがテーブルに出したのは布と裁縫道具だった。
「一流品とはいきませんが、良いものを持参しました」
確かに質はよくないわね。けど、旅の間に使うには充分か。
「では、これとこれ、あと、この裁縫道具をお願いします」
必要なものを選び出す。
「ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございます。いい買い物ができました」
床につきそうな勢いで頭を下げてノードさんが部屋を出ていった。
「結構な量になってしまったわね」
必要最低限に選んだとは言え、棚一つ分になってしまった。他にもあるのに凄い量になりそうだわ。持って帰れるかしら?
「すみません。量が凄いことになりそうなので一度戻って入れ物を持って来ます」
こんなことなら鞄を持って来るんだった。わたし、考えなさすぎたわ。
「大丈夫ですよ。帰りは商会の者が運びますから」
「結構な量になりますけど……」
「先ほど言ったように男爵家御用達の商会。持たせて帰したら商会の恥ですよ」
そう言うものなの? まあ、異空間に放り込むこともできるけど、それはおばあ様から人前ではするなと止められている。ここは、サナリオさんの言葉に甘えておきましょう。
「ありがとうございます。良い商会ですね」
ルルオルン商会しか知らないけど、それと同じくらい優遇してくれてる。大きな商会はお客様を大事にするものなのね。
「そう言っていただけるなら誇らしいことです」
運んでくれるのなら必要最低限と心配することはないわね。欲しいものがあったら遠慮なく買わせていただきましょうっと。