帝都に稲妻が落ちる時、半妖の鬼の軍人が妖魔をなぎ倒す。

妖魔討伐連隊の隊長、皇 夜影(すめらぎ よかげ)

鬼と人間の両方の血を持つ彼は、果たして本当に人の味方なのか。

「あやつは強い、強すぎる。人では無く鬼だからだ。うかつに信じて権限を与えれば災いのもとだ」

「だが、彼には人の血も流れている。私たちの味方だ」

「いやしかし鬼だぞ、あの恐ろしい目を見たか?いつか私達を食い殺そうと隙を伺っておるのだ」

政府の高官達がそう懸念するのは無理からぬことかもしれない。

今や帝都の軍事面での防御力は彼1人の肩にかかっていた。

帝都の人々は常に妖魔の恐怖にさらされている。

力の強い妖魔を倒せるのは人ならざる半妖の鬼だけだった。

もしも、彼があちら側に寝返るようなことがあれば、人の世は遠からず終わるだろう。

そんなことは、なんとしても食い止めなくてはならないと考えた政府のお偉方達は考えた。

これから先も彼を人の世界にとどめるためには、人間の娘と結婚させなくてはいけない。

子が生まれれば、尚良い。

きっとその子も強いはずだろうから。

半妖の軍人に、若く美しい娘を嫁がせよう。

そんな安直な打算から、帝都の名だたる名家の令嬢達を集めたお見合いパーティーが今宵もおごそかに催されるのだった。