メジャーシーンに解き放たれた水野の音楽は、聞こうとしなくても自然と耳に入ってきた。
デビュー曲は大企業のCMに使われていたし、それ以降も出す曲全てがよく街中で流れていた。

大学やあの部屋では決して書かなかったようなラブソングも作っていた。

明るく見せる内側では自分に厳しく真面目な水野から届く愛の歌がそんな可愛いものになることが、
俺には到底信じられなかった。


俺は大学を卒業し、サラリーマンになった。