……どれだけ時間がたったのだろうか。

 暗闇に走る光に刺激され、小姫は目を開けた。

「――お嬢さん!?」

 光源に目が慣れるよりも早く、駆け付けた青峰に抱き起こされる。

「……青峰さん? どうしてここに……」
「昨日から様子が変だったから、山に入るのを見かけて、探していたんですよ」

 青峰は心底ほっとしたようにため息をつくと、まだぼうっとしている小姫を立たせて洞窟を出ようとした。

「さあ、雨が降る前に帰りましょう!」
「――っ、待って! まだ、乙彦が――」

 数歩行きかけてから、小姫ははっとした。

「乙彦? ってあの、河童の? ……いえ、ここにはお嬢さん以外誰もいませんでしたよ」
「そんなはず……」

 そんなはず、ない。だって、さっきまで、一緒に――。

 小姫はそう言いかけたが、最後まで言えずに口をつぐんだ。乙彦のいたはずの場所を振りかえってみると。


 ――青峰の言う通り、洞窟にはもう、誰の姿も無かった。