ーーー
　
　俺っすか？　三船健司。　この部屋あったかいんでコート脱ぎますね。え、ああ、そうっす、俺が今着てるこれは如月山高校の制服ですよ？　名門校だから俺が制服持ってるのうらやましいっすか？
　週刊スクープのホームページを見てきたんすよ。
　今のところ火事の目撃者がいないらしいじゃないっすか。
　正直……ラッキーって思いましたね。
　この写真売ったらきっと高値っすよね？　車ほしいんすけどいけます？
　え、家族が写ってるかって？　一人写ってますよ。
　山梨家の長女、山梨月衣です。え、何で名前知ってるのかって？　俺の学校に通ってたんすよー。クラスは俺の隣で、彼女は今高二っす。学校一の美人と言われていて、向こうが知らなくてもこっちにしたら有名人なんっすよ。まさか彼女の家がこことは思わなくてちょっと興奮したっすよね。
　え、いいから写真を見せろって？　だめっすよ、いくらくれるか言ってもらわないと。
　へ？　いたずらかもしれないって？　冗談じゃないっすよ！　これは紛れもなく本物です。
　ちゃんと橋の上から撮影しました。そう、あの古風で可愛らしいちょっとしたデートスポットになるあの橋のことっすよ。
おかげでコンビニで入れたカップ麺は地面に落下、弾けて、悲惨なことになりましたが。
　分かりましたよ、そんなにうるさく言うなら先に見せるっす。けど、ちゃんと報酬は払ってくださいよ？
　ほら。
　あ、写真を見てさっそく気づきました？　そうっす。炎の中二階のベランダから叫んでいるのが彼女っすよ。
　他の家族？　いたんだろうけど、俺には見えなかったっす。
　かわいそうに。彼女はベランダからずっと泣き叫んでました。助けて、助けてと。
　そりゃあ火はぼうぼう燃えてたっすよ。
　え、何で助けなかったのかって？　何でそんな不思議そうな顔するんすか？
　そんなの決まってるじゃないですか。
　あんな炎の中助けに行ったりしたら、自分が死んじゃうっす。
　よくこういうじゃないですか。世のため人のため。
　あれは間違っていると思うっす。
　人間いざという時、いちばん大事なのは自分っすよ。
　でも人が焼き殺されそうなのを目の当たりにして良心が痛まないといったら噓になるっす。
　だから俺は携帯を手に取ったわけです。少しは世間のお役に立ちたいっすからね。
　で、いくらくれるんっすか？　車買いたいっす。そしたら色んな女性とデートし放題じゃないっすか。
　……え、出さないって？　そりゃねーっすよ。
　せめて車の頭金ぐらいは、はあ？　タイヤ一個の値段もつけられない？
　これだから記者は嫌いなんっすよ。
　はああ、じゃあ分かりました。こっちも高校二年で中退して無職でろくでもないといつまでも親から馬鹿にされるのは嫌なんっすよ。
　交渉しましょう？
　謎を教えるっす。
　彼女の足元、見ました？
　何かがおかしいと思いません？
　……ああ、あなたは気づけないようですね。
　報酬を出す気になったら、メモを渡すのでここに連絡ください。
　無配当なら、俺はもう帰るっす。

ーquestionー
　三船健司は高校を中退しているのにも関わらず、何故山梨月衣に詳しいのか。